第9話 宿屋にて

 案内された部屋はベッドが2つのゴージャスなお部屋だった。俗に言うスイートルームってやつです。部屋にはシャワーがあり、お湯が出た。リリィに聞くと魔石を使用しているそうだが一般家庭にはない高級品だそうだ。電灯らしき物もあるが光系の魔石を利用していてこれはリリィも知らなかった。


「光の魔石って本当にあるんだ。世の中は広い!」


 リリィは一人で感心していた。通常灯りは電気系の魔石を使って魔道具を作るのだそうだが壊れやすい。たぶん、電線が切れるんだろうな、戦国時代に作った電球もそうだったし。壊れやすい分安価で出回っているそうだ。やっぱ電球は消耗品ってことね。だけどこの光系の魔石を使用した灯りは魔力を注ぐだけで永久に使えるらしい。ラキーヌ村にはこういった魔道具は安い一般的なものしかないそうだ。しかもここにある光の魔石はおとぎ話に出てくるレベルの珍しさだそうだ。だが、カツヨリには全てが珍しい。


「魔石って売れるって言ってたよな?ダンジョンとかってあるの?」


 リリィは考えながら、


「ダンジョンは最近村の近くにできてその影響でシルバーウルフが近くまで来るようになったんじゃないかって村長が言ってた。ただ、ダンジョンの魔物は魔石を残さないらしいよ。死んだら魔力がダンジョンに戻るんだって」


「それじゃあダンジョンに行っても得るものはないじゃん。村の危機は放置されてるってこと?」


「ダンジョンの魔物は魔石の代わりにドロップアイテムを落とすんだって。たまに当たりが出て高く売れるらしいよ。なので冒険者がダンジョンには結構いるって言ってた。明日ギルドで聞けば色々わかると思う」


「じゃあ、魔石が欲しい場合はどうすればいい?」


「ダンジョン以外の場所にいる魔物を倒せば手に入るよ。死んだ兄貴もそれで結構稼いでいたし。ただ、魔石を取り出すのは魔物を解体しないとだから結構大変だよ。私は兄貴が狩ってきた魔物の解体をやってたからまあまあ出来るけど。お肉も取れるしね」


 なるほどね。よくある異世界物だ、解体って面倒くさそうだけどリリィに教わった方がいいかな。先々何があるかわからないし。カツヨリにはこの世界の知識はない。あるのは、述べ100年以上生きてきて身につけた人生経験と剣術スキルだけだ。その人生経験が学ぶべきものとそうでないものを自然に識別している。


「リリィ、今度解体を教えてくれ」


「いいよ。そのかわり、今日は一緒に寝てね!」


 キタキタキタキターーー。ベッドは2つしかない。ここに居るのは男1人に女2人。


「お、に、い、ちゃ、ん」


 リコが睨んでる。いやいや、リコにはそういうのはまだ早いから。と思ったら、


「お兄ちゃん解体得意だったじゃない。それも忘れてるの?」


そうなのか。俺が転生する前のカツヨリの記憶ってどこへいったんだろう。俺がカツヨリを殺して成り変わったのだとするとちょっと申し訳ない。その後、色々な会話が飛び交い結局1つのベッドに3人で寝ることになりました。


 なんだ、このシチュエーション。リコが右腕に抱きついて寝ている。反対側でリリィが熱い視線でこっちを見ている。これは触ってもいいよね、うんいいよ、と、言っているはず。まずは左で先制の軽いジャブ、そしてジャブを連発して左、右のコンビネーションお触り。しばらく巨乳を堪能するもなぜかマイサン、別名我が愛しのグレートマグナムは未反応。リリィは私に魅力がないのかと涙目だ。


「いや、違うんだ。きっと疲れてるんだ」


 必死に小声で弁解したら、リリィは気をとりなおして色々あちこちさわさわしてきて……………。はい、元気にならずじまいで朝を迎えました。




 何故だ?この身体はピッチピチのビンビン16歳。普通16歳っていったら出しても出しても漲る力でいきり勃つ年齢だろ?もしかして述べ年齢の影響?前々世は童貞だった。前世は嫁多数の子供多数、そうおいらはね、すんげー頑張ったのよ。前作にはそういうシーンの描写はなかったけど。しかし通算100歳越え。まさか、すでに枯れてるとか?


 いや、違う。そんなはずはない。こんな世間知らずの小娘など100歳越えの知識とテクニックで1回寝たらメロメロにしてやるぜ!


 のはずが、完全に気合が空回り。あれ、なんか俺キャラ変わってない?こんなに下衆だったっけ?






「お兄ちゃん、おはよう」


 リコが穢れを知らない少女の目で元気に朝の挨拶をしてきた。カツヨリは、赤い目をしながら


「おはようリコ。よく寝てたね」


 と、返事をしてベッドからでた。リリィはまだ寝ているようだ。寝不足だが朝シャワーを浴びて無理矢理身体に喝を入れる。今日はギルドへ行って次の行動を決めないと。シャワーから出るとリリィも起きていた。なんか気まずい。


「おはようリリィ。今日も楽しくいきましょう」


「おはようカツヨリ。今日はなんか性のじゃない、精の付く物を食べましょう」


 地味にジャブ打ってきやがった。でも、そうかも。食事大事。で、みんなで朝食を食べに食堂へ向かった。


朝食はパン、スープにサラダ。羊のミルクにベーコンエッグだった。さて、何のベーコンと卵なのか?


「オークのベーコンと日光鳥の卵だね。高級品だ」


リリィが嬉しそうに食べている。オークは多分豚の魔物だよな。ようは豚肉ってことね、日光鳥って?リリィに聞くと教えてくれた。普通の卵はもっとべちゃっとしててそれは普通の鶏だそうだ。日光鳥というのは、日光浴を充分にさせるために日の当たる牧場で走り運動させて、良質な餌を与えている特別な鳥で貴族や金持ちが食べる卵だそうだ。


「オークは精力の塊みたいな魔物だよ。人種構わず犯す性別が女なら誰でもOKだから。精がつきそうね」


リリィが流し目で見てきた。そうだ、今晩こそ頑張らねば。まずその前にギルドだ。カツヨリ達はイライザさんにお礼を言ってギルドへ向かった。

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