鼠害
「それじゃあまた明日」
夕餉を楽しみ女子寮に戻ってきた私達は、互いに言葉を交わす。
メノウ達五人は早々に部屋へ戻り、私達三人は談話室で少し話をしてから部屋に戻ることにした。
「んーっ! 今日は驚くことがいっぱいだったね」
椅子に座り、アンバーが伸びをしつつ話す。
「アンバー、ごめんなさい。私のせいで不快な思いをさせてしまって……」
決闘騒ぎの事を謝る。
「もう、謝らないでよ。ヘリオは悪くないんだから。そもそも最初に手を出そうとしたのはあの女の方じゃない。それに、ヘリオが私のためにしてくれたことだってちゃんとわかってるから」
「私もその場にちゃんと居合わせたかったよ。私がいた所で何か変わるとは思わないけれど、友達の危機に駆け付けられなかったことが、ただただ不甲斐ないよ」
「もう、チルもそうやってしょんぼりするー。でもさ、あの騒ぎがあったおかげで、リステル達の本当の実力を知るきっかけが出来たんだから、やっぱり決闘騒ぎはあって良かったんだと思う」
アンバーのこのとても前向きな性格を、私は眩しく思ってしまう。
「そうだね。ハルルのお陰でまだまだ私達は強くなれるんだって、確信できたよ」
「あの子と一対一で戦ってわかったけれど、私の比じゃない程戦い慣れている感じだったわ。きっとお師匠さんと沢山実戦を経験しているんでしょうね」
「そういえば、どういう経緯で学園に来たのかは話してはくれなかったね。……もしかすると、リステル達も似たり寄ったりの出生なんだろうか?」
「あー、そうかも。明らかにお互いの事を良くわかっている感じだったし。最初学園で初めて出会ったのかと思ってたけど、前からの知己だったのかもね」
「私達はきっと恵まれているのでしょうね」
貴族と言っても色々いるけれど、私とチルは裕福な生活をしているだろうし、アンバーも商家の娘だという。
ここに通えている時点で、裕福な家庭なのは言うまでもない。
ふと窓の外に目を向ける。
そう言えば昨日、この時間位にあの五人が外へ出て行っていたのを思い出した。
「……あ」
「どうしたの?」
「……おやおや?」
今日もまた、五人は女子寮から抜け出しているようだった。
「あれって、リステル達?」
「どうしてこんな時間に? いや、それよりも今は夜間の外出は禁止されているはずじゃ……?」
私が窓の外を見て声をあげたことで、二人も五人が出て行くところを目撃する。
「昨日もこのぐらいの時間に寮から抜け出していたの」
「ヘリオ、君は昨日も見たのかい?」
「ええ、アンバーを待っている時にここにいたからね」
「五人って事は、誰か先生が一緒にいるって訳でもないっぽいよね?」
「そうね。一体何をしているのかしら……」
昨日もそうだったけれど、こそこそと隠れてどこかへ行くという感じではなく、少し急いでいるような印象を受ける。
「聞いて良い事なのか、ダメなことなのか。気になるね」
「うん」
二人も同じことを思ったようだ。
「まあ考えてもわからないんだから、この話は終わっておこう」
私達は頷き、話題を変える。
「そうそう、アンバーから貰った石鹸、凄く良いわね――」
しばらく三人で他愛もない事を話し、ゆっくりと寛ぐ。
結局五人は、私達が部屋に戻る頃になっても、帰ってくることは無かった……。
翌朝。
まだ陽が昇る前から学園を出る。
未だ陽が昇らない暗い空を見上げると、沈みかけた月と星々の数々。
夜空でもわかるほど、空に雲は一つもなかった。
「今日はいい天気になりそうね」
夜の静謐な空気を胸いっぱいに吸いこむ。
ひゃほー!
俺の必殺技―!
隙だらけじゃねーかよ!
わはははははっ!
……。
異様にテンションが高い男子生徒たちが、大はしゃぎしている。
夜の静かな雰囲気をぶち壊す男子たちに、私は少しげんなりする。
「子供ね……」
「全くじゃ」
私の独り言に相槌を打ってくれる幼い少女。
「サフィーアに言われたら、サフィーア以下って事じゃない」
やれやれとため息をついているサフィーアに、私は苦笑して言う。
「ん? ああ、そうか。お前さんらは知らなんだな」
「何をかしら?」
「妾はお前さんより年上じゃぞ」
それまで呆れたような顔をしていたサフィーアが、ふっと笑う。
「……え? 本気で言ってる?」
「うむ。まあこの容姿じゃからのう。わからんでも仕方ないわい」
「サ、サフィーア、あなた一体何歳なの?!」
話しを聞いていたらしいアンバーが、目をまん丸に開いて聞いている。
「乙女に年齢を聞くのは、失礼ではないのかのう?」
「あー! 絶対揶揄ってる!」
ぶすーっとアンバーが膨れる。
「はっはっは! 年上だという事は本当じゃぞ? 気になるならば、当ててみるがよい」
「十八ぐらいかしら?」
気になったので、思わず私も年齢当てに参加してしまう。
「違うのう」
「んー、三十!」
「……アンバー。お前さん、この容姿の妾がそれだけ年齢を重ねているように見えるのかのう?」
「うえ?! ごっごめん!」
「メノウ達はサフィーアの年齢は知っているのかい?」
私達のやり取りをクスクスと笑って見ているメノウ達に、チルが質問をする。
「もちろん知ってるよ」
「じゃあヒントをくれないかい?」
「チル、私達に聞くのはズルだから教えなーい。頑張って当ててみてね」
「あらら、当てが外れてしまったよ」
「ズルは良くない」
ハルルがうんうんと頷きながら言う。
「静かにしろっ! 馬鹿者がっ!」
一番大はしゃぎしていた男子が、引率の先生に拳骨を頂戴していた。
「はしゃぐのは良いが、程々にしとけよ」
ホリングワース先生も、呆れてため息をついてる。
騎士科の一科生四十名、ホリングワース先生含めた引率の先生六人、二科生の先輩三人の大所帯で暗い街を歩く。
南門から外壁を出たところで、東の空が明るくなり始めた。
開けた場所へ行き、簡単な説明を受ける。
「まずは男子、お前ら三つに分かれろ」
「パーティーから離れていいんですか?」
「いや、パーティーはパーティーで一塊になっておけ」
「あの、先生。私達は?」
「女子はそのままで。四十人全員引き連れて行動するわけにもいかねーからな。四つにグループを別けて行動するんだよ。ある程度したら、パーティーごとに動いてもらうからな。お前ら覚悟しろよ」
『はいっ』
この学外実習の歴史は古く、フォルティシモ学園騎士科の伝統行事となっている。
事の発端は、フォニアムの街周辺にある農地が、
当時からフォニアムの街は冒険者の逗留が少ない街だった。
周辺は穏やかな農地が多く、森も少ない。
魔物も出るには出るが、
駆け出しの冒険者が数組いれば多いほうと、そう言われてしまうぐらいに冒険者からの人気がない街だった。
そんなある日、いつものように畑仕事をしにやって来た人が、驚くべき光景を目の当たりにする。
慌てて街まで戻り、冒険者ギルドに事情を話す。
この時、冒険者ギルドにはベテランの冒険者がいたが、たかが
……そして悲劇が起こる。
六人パーティーだった彼らが、戻ってきた時はたった二人になっていた。
戻って来た二人のうち一人は、左手首から先が食われてなくなっていた。
もう一人も欠損こそなかったが、深い傷を負っていた。
何があったのかを聞くと、確かに聞いていた通り、夥しい数の
仲間の一人が、より詳しい情報を得ようと至近距離まで近づくが、
それをチャンスと勘違いした仲間が、一匹に向かって剣を振り下ろした。
一匹の
あっという間に、一番近くにいた仲間は巨大な群れに飲み込まれ叫び声をあげるが、こちらにも迫って来ていたので、助けることが出来ず、慌てて逃げた。
一人、また一人と脱落していく中、辛うじて二人だけ、ギリギリで何とか振り切って逃げることが出来たのだそうだ。
すぐさまベテランの冒険者パーティーにも依頼を出し、
他の冒険者ギルドへ至急応援を請うが、連絡がいきわたるまでには時間がかかるし、フォニアムの街まで来るのにも多少時間がかかる。
このままでは農作物が全滅し、農作物がなくなった後は人を襲いだす可能性が考えられた。
事態を重く見たフォルティシモ学園騎士科の生徒の一部が、自分達も協力すると、
その話が騎士科の他の生徒にも伝わり、騎士科の全科生の大半が参加することになった。
騎士科の学生が大量に参加、活躍したことにより、事態は早期に終息することが出来た。
ただ、冒険者二十一名、一般人十名、騎士科生徒八人が、
農作物にも大きな被害が出、フォニアムの街の財政が一時傾きかけるほどの被害だった。
元々フォルティシモ学園は、フォニアムの街との交流はほとんどなく、度々遊びに出かけた生徒が問題を起こすなどして、あまり良い印象を持たれていなかった。
だが、今回の鼠害問題で、騎士科の生徒が身を挺して活躍したことから、見直す者が増えた。
そしてこれ以降、魔物との戦いの基礎訓練として、この時期に農地に出る
これが凡そ百年ほど前の事。
この学外実習はフォニアムの住民たちに、フォルティシモ学園の生徒が住民のために行動できるという事を知ってもらうための一環として、欠かさず行われている。
男子がグループ分けをしている間、私達は大人しく待機。
「
『了解』
チルとアンバーもかなり緊張した面持ちで返事をする。
私達は人を相手に訓練はしたことがあっても、魔物を相手したことがない。
私なんかは、魔物を見るのも初めてだ。
しっかりとできることはやっておこう。
そう思って愛用の剣の確認をしていた時だった。
「崇高で誉れある騎士科に、女なんかが入学してくるとは……。まったく、どんな不正をしたのやら」
一人の引率できた教師が私達を見て、嫌悪感を隠さずそう言った。
「随分と失礼なことをおっしゃりますね?」
「……何?」
「私達は騎士科への入学を、正当な評価の下、お許しいただいているのです」
「君は確か、ヘリオドールだったか? シルフォンのお転婆姫と言われていた粗忽者が、よもやこんな所に現れるとは。忌々しい限りだ」
「――なっ?!」
あんまりな言われように、私は絶句する。
「それはヘリオだけでなく、シルフォン辺境伯への侮辱と見做されますよ」
チルが教師を睨みつけながら言う。
「それがどうした。本当の事ではないか」
「何この人? 本当に教師なの?」
アンバーも不快感を露わにして言う。
「挙句の果てに貴様達だっ! 平民のっ! それも女がっ! 気高くっ! 貴いっ! 騎士科にいるなどっ! 言語道断ではないかっ!!!!」
「何ですって?!」
アンバーが詰め寄ろうとした瞬間、その教師は腰から下げていた剣を抜き、アンバーに突きつける。
「黙れっ! 入学早々決闘騒ぎを起こした馬鹿共が! 貴様等なんぞ生徒とは思っておらん! 文句があるならかかってこい! 叩き斬ってくれるわ!」
「おいワレン。貴様何をやっている」
ホリングワース先生がやってきて、ワレンと呼ばれた教師が突き出した剣の前に立つ。
「ホリングワース先生っ! 貴方も誉れある騎士科に、女なぞがいることは許せないでしょう?!」
「それ以上俺の生徒であるこいつらを侮辱すると、俺が相手をしてやることになるがかまわんか?」
「……失礼しました」
「お前は女生徒をいびるために来たのか? だったら学園に帰れ」
「いえ、生徒の所へ行ってまいります」
ホリングワース先生が来てくれたおかげで、これ以上大事にはならなくて済みはしたが、何とも気分の悪い出来事だった。
「……すまん」
先生が深々と頭を下げて謝る。
「先生が謝る事じゃないよ。あのワレンって男、何なの?」
アンバーが頭を下げる先生をなだめながら、質問をする。
「三科生を受け持っている教師だ。腕は立つんだが、思想にちょっと問題がある奴でな……」
「何でそんな人を連れて来たんですか……」
チルも流石に腹が立ったようで、怒りをわずかに滲ませながら言う。
「俺も連れて来たくはなかったんだよ。こうなるのが目に見えてたからな。でも、あいつ言い出したら聞かなくてよう。なんか俺を随分過大評価してるやつでな。俺が出る時は無理やりにでもついてくるんだよ……」
頭を下げていた先生が、へにょへにょと座り込む。
「私達を担当する人は、先生でいいんですよね?」
「ああ、俺でいい。ワレンも教えること自体は上手いんだよ。けど女が絡むとあれだからな。ちなみに一緒に来た二科生も全員他のグループの所だ」
説明もグループ分けも終わり、私達はホリングワース先生の指示の下、魔物の捜索に入る。
「今年は結構
「そうだったんですか」
「ああ、だから入学三日目にして学外実習をすることになったんだ。まあどの道、魔物とはやり合わなくちゃならんようになるんだから、早い事に越したことは無いんだ。お前らは運がいいよ。……お、いたいた」
私達三人は慌てて武器を構える。
「落ち着けって。まずは魔物と言うものをよく観察してみろ」
先生にそう言われるが、魔物と言われて怖くない訳がない。
私達はソロソロと武器を構えながら、先生に近づく。
「はははっ! へっぴり腰でやんの! ほれ、あそこ」
そういって指を差した先には、灰色の大きな毛むくじゃらの生き物が、キャベツをモリモリと貪っていた。
「あーあー。こりゃかなり食い荒らされてるな。早めに来て良かったぜ」
「呑気に言っている場合ですか?! どっどうするんです?!」
思わず声を荒げてしまった。
「ヘリオドール。お前対人では結構いい動きができるじゃないか。なんで魔物にビビってるんだよ……」
「うっ! それは……」
情けない事に、思っていた以上に怖かった。
何より、目の前にいる
そして、目の前には六匹もいる。
それが一斉に襲い掛かってくるとなると、どうしても腰が引けてしまう。
「まあ魔物と初めて戦う時はそんなもんか……。よし、まずはルーチル。お前が一番槍だ。一番手前にいるヤツを刺し殺せ。外すなよ? そしたら周りにいるヤツが一斉に襲い掛かってくるから、それをヘリオドールとアンバーでカバー。すぐさまルーチルも攻撃に復帰しろ」
「ふむ、少し数が多いようじゃのう。ホリングワースよ、妾がフォローに入ってもかまわんかのう?」
「あー、どうすっかなー? これくらいだったら三人でも倒してもらいたいもんだが……」
「安心せい。あくまでフォローに回るだけじゃ」
「そうだな。それで頼む、サフィーア」
「うむ」
先生に言われた通り、槍を構えたチルがジリジリと
「ヂュヂュッ! ヂュッヂュッヂュヂュッ!!!」
一匹がチルの接近に気づいて食べるのをやめ、鳴き声をあげる。
「ううっ! 威嚇してる……」
「チル、頑張って!」
「ちゃんとカバーに入るからね!」
私とアンバーは小さな声で声援を送る。
「……ふぅ。よし、いくよっ!」
私達もすぐさまカバーに入れるように武器を構える。
「はあっ!!」
「ヂューーーーーー!!!!」
次の瞬間、食べるのを辞めた
すぐさま後ろに下がって私とアンバーと入れ替わる。
走り寄ってくる一匹を、上段から剣を振り下ろし頭を割る。
さらに剣を横に薙ぎ、飛び掛かって来た一匹を斬りつける。
アンバーは飛び掛かって来た一匹を盾を横に振り抜くことで殴り飛ばし、さらに近づこうとした一匹に向かって剣を下段から斬り上げ、怯んだところをさらに上段からの振り下ろしで止めを刺した。
私の横から攻撃を仕掛けようと回り込んできた
正確な槍捌きで、きっちり一撃で仕留めていく。
終わったと思った瞬間だった。
アンバーの死角から、
「アンバーっ!」
「――っ!」
声をかけるも、間に合わないと思った時、
「ふっ!」
短剣を逆手に持ったサフィーアが、
そして、飛び掛かって来た一匹を横へと躱しながら、腹部へと短剣を突き立てた。
「ヂュッヂュー……」
ドサッと倒れ、苦しそうな鳴き声を上げる。
「ヂュッ!!」
サフィーアはぐっと短剣を刺し込み、止めを刺した。
「ありがとうサフィーア」
アンバーがお礼を言う。
「お前さんら、前に気を取られ過ぎじゃな。もうちょっと視野を広く持たんといかんぞ。横から飛び掛かって来た二匹は、元々見える所におったのじゃ」
「サフィーア、ごめんなさい。助かったわ」
「構わんのじゃ。最初にしてはようやった方じゃろうて。お前さん達の実力なら、
サフィーアにそう言われ、私達はほっとしたのだった。
その後は、一番最初のようなミスはせず、私達は次々と
実はここ二日程で、ちょっと自信を無くしていたので、自分の剣術がちゃんと通用することが嬉しかった。
それにしても、フォローに入ってくれるサフィーアの戦闘技術は大したものだった。
リステルのような素早さや、ハルルのような力強さは感じられないが、堅実に攻撃を仕掛けている。
動きを見ていて気づいたが、攻めるよりも守りの方が得意のように感じた。
この堅実さは、そうそう真似できるものではないと思う。
何より、私達の動きに完璧に合わせてくれることを考えると、視野が広いのだろう。
「どんどん体の硬さがなくなってきたな。良い感じだ」
「ありがとうございます!」
先生からそう言われて、チルも嬉しそうだ。
「ホリングワース先生。かなり倒しましたけど、この時期に出る
戦っていて気になっていたことを尋ねる。
「……いや、かなり不味いぞ。思っていた以上に多い……」
そう言う先生の顔に、焦りが滲んでいた。
「一度拠点に戻るぞ!」
『了解!』
私達は道中で見つけた
中ほどまで進んだところだろうか?
かなりの数に疲労が見えてきた時だった。
「うわああああっ!!!」
「ムリだよぉぉぉぉっ!!」
「こらっ! 逃げるなーっ!」
畑を挟んだ向こう側から、悲鳴と怒鳴り声が聞こえて来た。
どうやら男子生徒のグループの一つが、大量の
「マズい! 逃げてる奴らに殺到してるぞっ?!」
ホリングワース先生がそう言うと同時に、私達は無意識に駆けだしていた。
逃げている男子二人を追っている
「はぁっ!」
「せいっ!」
「やあっ!」
出来るだけ大きな声をあげて気を引きつけつつ、一匹ずつ確実に殺していく。
男子生徒二人はパニックを起こしているのか、私達には目もくれず全力で逃げていく。
だが、
逃げている二人に追いつくかと思った瞬間、
リステルが、まるで踊りを踊っているように剣を振っていた。
その荒ぶる嵐のような乱舞に、
私達の援護をするように、ハルルとメノウも戦闘に参加していた。
ハルルは、その類まれなる怪力と素早さを活かして、次々と
両手に持った二振りの剣が振るわれるたびに、
それはまるで、罪人を処刑するギロチンのような容赦のなさだった。
メノウは、
何が起こったのかわからなかったが、いつの間にかメノウは剣を振り抜いていた。
その剣尖を、私は全く見る事すら敵わなかった。
メノウは坦々と
リステルのような荒々しさや、ハルルのような力強さはなく、ただただ静かに、波一つない水面を連想させるほど流麗に、剣を振るっていた。
ホリングワース先生は、囲まれている方を援護するために戦闘に加わっていた。
「ホリングワース先生、助かりました。君たちもありがとうね」
引率の先生と思しき男性からお礼を言われる。
「けが人は?」
「大丈夫のようです。それにしてもこんなに多いなんて……」
「今はここに居るより、拠点へ戻るぞ」
「そうですね」
男性は先生の言葉に頷くと、
「これより一時拠点まで撤退します!」
と、すぐさま撤収の指示を出した。
『はいっ!』
そして、何とか軽症を数名出した程度で、拠点の方まで戻ってくることが出来たのだった。
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