フラストハルン王国編
新緑祭
フラストハルン王国。
大陸の北端に存在する大国の一つ。
国の広さはハルモニカ王国程広くはないが、国の豊かさはハルモニカ王国と比較しても引けを取らない。
海に面した街が多数存在し、さらに河川が多く存在していることから、水産資源が豊富な国。
私達はフラストハルン王国最初の街、レーベックの街に入る。
今までと同じように出入管理所に入り、魔法陣に身分証をかざす。
今回はそれと同時に係の人に、フィッスルンで渡された出国許可証を渡す。
「はい、身分証と出国許可証に齟齬はありませんね。このまま前に進んで通行税をお納めください!」
促された通りに順路を進み、お金を払う。
「ようこそ! フラストハルン王国へ!」
建物を出る。
ここがフラストハルン王国!
と、言っても、街並みが大きく変わることは無かった。
街を行く人々も、建物も、ハルモニカ王国とあまり変わりがない。
「……」
「さて、まずは先に宿をとらないとね。その後冒険者ギルドへ行って情報収集。フラストハルン王国での私達の目的地はミュセットと言う街。目的地の名前がわかっているだけでも凄く楽だわ。ガネットさんに感謝ね」
「……」
「瑪瑙?」
「おーい?」
「ふあ?! ああ、えっと何だっけ?」
いけないいけない、ぼーっとしてしまっていた。
「ふふ。とりあえず宿をとりましょう? そこでちょっとゆっくりしましょうか」
「ごめーん」
「いいのよ。私もちょっとゆっくりしたいわ」
コルトさん達三人との別れが思っていた以上に寂しくて、少し尾を引いていた。
何と言えばいいか、心の中にぽっかりと穴が開いたみたいな、そんな感じがする。
涙は引いたけど、頭がまだぼーっとしている。
レーベックの街は、さほどフィッスルンの街並みと変わらない。
人も多いしバザールは賑やかで、まだ違う国へ来たという実感は少ない。
そのせいか、後ろを振り返れば、いままで通り三人が私達を見守ってくれているような気がして、それが余計に寂しく感じた。
私は、頬を両手で軽く叩く。
しっかりしなくちゃ。
こんな腑抜けた姿を見られたら、シルヴァさんに怒られてしまう。
宿をとり、ついでに宿の人に冒険者ギルドと
「そうだお嬢ちゃんたち、レーベックにはしばらくいるのかい?」
「うーんどうでしょう? 情報収集の結果次第ですね」
宿のオーナーと思しき女性から声をかけられる。
「目的とかあるのかい? 冒険者っていえば、宛ても無く旅をしたりする人もいるからねえ」
「この国の北にあるミュセットと言う街へ向かうつもりです」
「あらまぁ。また遠い所へいくんだねえ」
「ミュセットをご存知なんですか?」
「そりゃーね。ここで宿を経営してるってことは、いろんなところから来た人の話を聞くもんさ」
女性の話を聞き、私達は顔を見合わせる。
カウンターに銀貨一枚を置き、
「良ければ色々とお聞きしたいんですが」
と、聞いてみる。
「おや、気前がいいねえ? 教えられることがあるなら教えたげるさ」
女性は銀貨を受け取り嬉しそうにする。
フラストハルン王国には、東西南北をそれぞれ繋いだ大きな道、スケール街道と呼ばれる主要街道がある。
スケール街道の中心にある街が、首都フラストハルン。
「ミュセットへ行くには、スケール街道を北へまっすぐ進めばいけるよ」
私達が一番欲しかった情報が、思ってた以上にあっさりと手に入り、私達は手を合わせて喜び合った。
一応話してくれた内容に間違いがないか、他の人にも聞いておく必要はあるけれど。
貰った旅行記も確認しておかないと。
「それより、急ぎでないならこの街にもうしばらくいなよ。新緑祭が開かれるからさ」
「しんりょくさい?」
新緑祭とは、静青の頃が終わり、新芽が芽吹く今の時期に開かれるお祭りだそうだ。
穏緑の頃が始まり、これからどんどん暖かくなって緑が増え、人も街も活気が戻っていく。
静青の頃を無事に乗り切ったことへの慰労と、これから齎される恵みが豊かになる事を祈る意味があるそうだ。
「この街はいろんなものが集まるからね。祭りもかなり賑やかに開かれるんだよ」
新緑祭自体は、フラストハルン王国の各街で開かれるそうだけれど、街事の特色が色濃くでるそうだ。
小さな街だとあまり盛大には開かれないらしい。
この街、レーベックはと言うと、街の中央広場に沢山の出店が並び、他国の食べ物や装飾品が、かなり安く手に入るという。
「もう新緑祭は開かれているんですか?」
「まだだねえ。準備はもう終わっていて、あと二日後に開催さ。何なら中央広場に行って見るといいよ。気が早い所だともうやっている出店もあるからねえ」
そう言えば異世界に来て、こういったお祭りごとは、ハルモニカ王国では経験しなかった。
……叙勲式がお祭りごとと言えなくはないけれど、あれはひたすら面倒だっただけで私達は楽しくなかった。
どうしようと聞くまでもなく、みんなの目がキラキラしていた。
「じゃー、せっかくだからお祭り楽しもっか!」
「おー!」
「おまつりおまつりー」
と言うわけで、私達は早速街の中心にある大広場へ繰り出した。
まだ開催はされていないと言っていたけど、既に結構な人が集まっている。
「うわー、すっごい賑やか」
大広場には大小さまざまな屋台があり、中にはステージみたいなものも見受けられる。
開催はまだと言っていた通り無人の屋台は多かったが、それでもそこそこの屋台から湯気が立ち昇っている。
「なんだかすごくスパイシーな香りがする」
「何だかお腹がすく匂い!」
私がそう言うと、ハルルも嬉しそうに鼻をすんすんとさせている。
匂いのする方へ行って見ると、
「らっしゃいらっしゃーい! 食事処キロシスタの出店だよー!」
なんとも威勢のいい声が聞こえて来る。
そして、スパイシーな香りがより強く漂ってくる。
出店を良く見てみると、串に刺した何かを焼いている。
「うわ、すっごい色してる。食べられるのこれ?」
リステルが焼いているお肉を見て驚いている。
焼いているお肉は鶏肉で、色は濃い橙色。
「あ、タンドリーチンかな?」
私がそう呟いたのが聞こえたらしく、呼び込みをしている男性が嬉しそうに話しかけて来た。
少しびっくりして後ずさりそうになるけど、何と我慢した。
「お! 物知りだねお嬢ちゃん! これはカルタナーカ連邦国でよく食べられている料理なのさ! ウチは、カルタナーカ連邦国の料理を多く扱っているからね。良かったら食べてくれよ! 奢るからさ!」
「え、お金ちゃんと払いますよ!」
「いいよいいよ! 他国の料理って食べるのに勇気がいるだろう? 口に合わないかもしれないしさ。だからお試しに食って見てくれって! 美味かったらさ、店に来て色々食べてくれた方が、俺も嬉しいんだよ!」
そう言いながら、いそいそと串を人数分用意してくれている。
「じゃあお言葉に甘えて、いただきますね」
「おうよ!」
みんなで一斉にかぶりつく。
沢山使われたスパイス独特の香りが口の中に広がり、ピリッとした辛さを感じる。
この香りが鶏肉の臭みを消し、食欲をわかせると同時に、鶏肉のジューシーさと非常にマッチしている。
「美味しい!」
「おお、これはまた経験した事のない味じゃ。じゃが、確かに美味いのう」
無性にカレーライスが食べたくなってきた。
……よし、今度作ろう。
私達が夢中で串にかぶりついている姿が美味しそうに見えたのか、釣られるように見ていた人が次々と買ってかぶりついている。
「あら、上手く利用されてしまいましたね」
「はははは。いや、参ったな。そんなつもりじゃなかったんだけど。ああそうだ! 新緑祭一日目の夜に、ウチの店が主催する催し物があるんだ。良かったら見てってくれよな!」
「何をされるんですか?」
「大食い大会さ! 毎年新緑祭の時には開くんだけど、人気の催し物なんだぜ?」
「どんなお料理を出されるんです?」
「えっとお嬢ちゃん、チャパティって知ってるかい?」
「小麦粉に塩、水、油を混ぜて薄く焼いたもので合ってますか?」
確か本場では、アタ粉とか言うのを使うんだっけ。
「いいねえ! 正解だ! お嬢ちゃんやっぱり物知りだね! そのチャパティに、今食べてもらったタンドリーチキンを巻いたヤツと、他にも色々とチャパティで巻いた料理を出すよ! 当日ここの出店でも出すから楽しみにしてくれよな!」
「美味しそうですね」
「お嬢ちゃんも出てみるかい? なーんて!」
あはははと笑ってジョークを言う男性。
「ハルル出たい!」
「ええっ?!」
ハルルがぴょんぴょん飛び跳ねながら嬉しそうに言う。
流石のこれには男性も驚いている。
「お嬢ちゃん、大人しか出ないんだよ? それでも良いのなら出てみるかい?」
「出る―!」
おー!
いいぞー!
ガキんちょ応援するぞー!
頑張れー!
ハルルの大きな声に、出店の近くにいた人達から歓声が上がる。
「あのー、この子、
「あらま、また珍しい体質の子なんだね? いいよいいよ! それはそれで盛り上がるさ! あ、賭けも開かれるから、それも楽しんでよ!」
ハルルが、参加するにあたっての注意事項を聞き、正式に参加者として認められた。
一日目のお昼丁度に、参加選手の発表と賭けの受付が開始されるので、その時にハルルはステージに立って、簡単な自己紹介をすることになった。
この後私達は既に開店している出店を巡り、珍しい食べ物に舌鼓を打った。
やっている出店の大体はハルモニカ王国で食べた事がある物と変わりがなかったけれど、中にはさっき食べたタンドリーチキン、カルタナーカ連邦国の食べ物と、ジエンアルーブ帝国と言う国の食べ物があった。
……ガラク皇国の食べ物は全くなかった。
「あー、ガラクの食べ物ねー? 腐ったものが多いから誰も食べないんだよ……」
何となく出店をやっている人に聞いてみると、そんな事を言われてしまった。
「あ、瑪瑙が拗ねてる」
「腐敗と発酵は違うもん! そんなこと言ったらチーズだって腐らせてるじゃん! カビだって生えてる事あるのにっ」
ぷー!
とまあ、文句を言って見るけれど、こればっかりは仕方がない。
「ねえ瑪瑙。腐敗と発酵ってどう違うの?」
ルーリが首を傾げて聞く。
「えーっと、腐敗と発酵ってそもそも現象は同じことなんだよ。ただ、人に有用なのが発酵で、有害なのが腐敗。本当は厳密に言えばもっと違うんだけど。チーズは食べられるでしょう? だから発酵。牛乳をほったらかしにして分離していたり、変な臭いがするのは腐敗。飲んだらお腹壊しちゃうからね」
「え、一緒なの?!」
「うん。それをうまくコントロールして、人に有用な発酵にするんだよ。ワインも、ブドウを発酵させて作ったお酒だからね」
「ほう? ワインも発酵させていたとはのう。意外と身近なのじゃな」
「だよー」
「でも、ガラクの料理ってこの間瑪瑙に食べさせてもらったけど、発酵させてるものなんてあった?」
と、リステル。
「お味噌とお醤油がそうだね。あれは大豆を発酵させて作った物だよ。あ、お酒はお米をね。あ、そう言えば味醂も発酵させてたっけ……」
ちなみに、まだみんなに出していない食べ物がある。
「え、食べたけど凄く美味しかったじゃない。と言うか、思ってたより多かった……」
「まあ知らない人から見れば、少し忌避感があるかもねー? 私もみんなに出していない食べ物があるもん」
「え、それはなんて言うの? 美味しいの?」
「納豆って言って、大豆を発酵させて作るんだけど、臭いが凄くてネバネバしてて、見た目は凄く悪い。こっちの世界のはまだ食べてないけど、私は好き」
「ハルル食べてみたい!」
「じゃあ今度出してみるね?」
「やたー!」
「因みに、私の国でも好き嫌いがはっきり分かれるよ」
「へえ、私も食べて見たくなった!」
まあ、この四人の中で一人くらい美味しいって言ってくれる人がいたら、ラッキー程度に考えておこう。
こうして私達は新緑祭が開かれる前の日から、出店を沢山まわって楽しんだ。
そして新緑祭が開かれ、大食い大会の出場者を紹介する時間になった。
「さあさ、新緑祭をお楽しみの皆様! レーベック新緑祭の目玉の一つが今年も開催されます! 食事処キロシスタ主催大食い大会! 今宵熱く火花を散らす参加者の御紹介! なお、この紹介が終わりましたら、誰が優勝するかを予想する賭けの受付が始まります! ふるってご参加を!」
うおおおおおおおおおっ!!!
司会の人の声に、観客のボルテージも高まる。
それにしても、開催前の広場でもそれなりの賑わいを見せていたのに、今は比べ物にならない程の人の多さ、それと熱気。
久しぶりの人だかりに、少し眩暈を起こしそうだった。
「あ、ハルルが出て来たよ!」
リステルが嬉しそうにステージの方を指さした。
「ガタイの良い男ばかりだと思っておったが、女も参加しておるのじゃな」
サフィーアの言う通り、ハルルの横に二人、女性が並んでいる。
一人は見るからによく食べそうな、ふくよかな女性。
もう一人は、スタイルは普通と言った感じ。
そういえば、普通にスタイルが良い人でも驚く量を食べる人って、私の世界にいたなー。
「まずは昨年、一昨年の覇者! 今年も勝って三連覇となるか?! レイガンス!」
「うぉぉぉぉっ!」
一番最初に紹介された男性は、身長はとても高く、筋骨隆々。
腕なんて、ハルルの顔位あるんじゃないかってくらい太い。
そんな男性が雄たけびを上げ、ムキムキとポーズをキメ、アピールをしている。
今年もやったれレイガンス―!
お前に賭けるからなー!
きゃー! レイガンスさーん!
あちこちから応援の声があがる。
中には黄色い声も。
参加する人の紹介は続き、いよいよ最後、ハルルの番。
「さあ、最後の参加者だ! ハルモニカ王国からやってきた小さく可憐な冒険者! 小さいからと侮るなかれ!
ちびっこがんばれよー!
かわいいー!
いくらなんでも無理があるだろう。
いや、めっちゃ食うぞあの娘。
「せーの」
『ハルル―! 頑張れー!』
私達はそろって声援を送る。
「頑張るー!」
私達の姿を見つけたハルルは、嬉しそうに私達の方を向き、ピョンピョンと飛び跳ねる。
紹介が終わって戻ってきたハルルと合流し、賭けの受付が行われている場所へ向かう。
一番人気は、三連覇がかかっているレイガンスと言う男性。
ちなみに我らがハルルちゃんの人気は六人中六位の最下位。
「ハルルに金貨一枚!」
私達がハルルに賭けることを宣言し、それぞれが金貨を置くと周囲がどよめく。
「はいよー! ハルル選手に金貨一枚! 気前良いねえ! この木の割符を無くすなよー!」
割符をもらって私達は、大食い大会が始まるまでの間、出店や出し物を色々見てまわる。
昨日まではいなかった吟遊詩人や大道芸を披露している人達、広場の真ん中のステージで歌や演奏を披露していたりと、それらを出店で買った食べ物を食べながら見て過ごし、時間はあっという間に過ぎていく。
「お酒なんかも売ってるのね」
「私ちょっと食べすぎちゃった」
「私も―」
リステルと笑いながらお腹をさする。
「ハルルも結構食べてたけど、大丈夫?」
ルーリはハルルのお腹の具合を心配しているようだ。
「大丈夫! 少しは食べておかないとハルル持たないもん」
「無理はしちゃダメよ?」
「ん! ありがとうルーリお姉ちゃん!」
そしていよいよ、大食い大会の時間がやって来た!
「それでは選手一同席についてください!」
六人全員が席へと座る。
「それではー……。はじめっ!!」
司会の掛け声と共に歓声が上がり、参加している選手の下に料理が乗ったお皿が運ばれる。
お皿にはチャパティを巻いた料理が五つ乗っていて、五つは全部同じ味付けだそうだ。
ただし三皿食べ終わったら、中の具が変わる。
三皿ごとに味を変えていくらしい。
最終的に一番多く食べた人の勝ち。
「ものすごい勢いで食べていくレイガンス選手! まるで飲み物のようだ!」
司会の人の実況通り、丸のみしているようにしか見えないスピードで食べていく優勝候補の人。
「ほー! 見事な食べっぷりじゃわい! 見ていて気持ちが良いくらいじゃのう」
サフィーアが声をあげて笑っている。
他の選手も優勝候補の人ほどではないけれど、中々の食べっぷり。
「はくはくはく」
「ハルル選手も中々の食べっぷりだが、その小さいお口では限界があるか―!」
がんばれー!
むりすんなよー!
あの子ずっとニコニコして食べてる!
かわいい! がんばれー!
「ハルルのやつ、ご機嫌じゃのう」
「珍しい料理らしいからねー。味わって食べてるんじゃないかなー?」
三皿、六皿と、お皿がどんどん積み上げられていき、一人二人と脱落者が出てくる。
「おっとここでトムソン選手ギブアップ! 結果七皿! 去年よりは健闘したか―!」
男性一人が手を挙げて降参する。
これで残り三人。
優勝候補のレイガンスさんと、スタイルが良い女性ミメットさん、そして我らが大食い隊長ハルルちゃん。
「誰がこれを予想できたでしょうか! ここまで現在十二皿! レイガンス選手は当然残っていますが、残り二人! 女性だ! しかも一人はまだ幼い少女!」
いよいよ十五皿と言う所で、ミメットさんが手を挙げてギブアップ。
残すはハルルとレイガンスさんの一騎打ち。
「さあどこまで行く! どこまで行ける! 何もかもが正反対の二人の一騎打ちだーっ!!」
ハルルは相変わらずニコニコ笑顔のまま、ペースを崩さず黙々と食べている。
一方レイガンスさんは、最初の勢いからはかなりペースを落とし、ハルルを横目でチラチラとみるようになった。
『ハルル―! 頑張れー!』
静まり返って戦況を見守る観衆の中、私達はハルルに声援を送る。
「ん!」
ブンブンと嬉しそうに手を振り、ハルルは何と、ペースを上げだした。
「わーお」
思わずそんな間抜けな声が出た。
「おっとここでハルル選手のペースが上がった?! レイガンス選手を突き放す! その小さな体のどこにそんなに入るというのか?!」
いけー!
やっちまえー!
いいぞー!
どんどんとハルルを応援する声が増える。
そして、ニ十皿を迎えた瞬間に、レイガンスさんが手を挙げて降参した。
「決まったああああああああああっ! 小さな体に底なし胃袋! 讃えよう新たな伝説を! 優勝はハルル選手っ!!!!」
ウオアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!
司会の人がハルルを讃えた瞬間に、耳をつんざくほどの歓声が響いた。
私達も声を上げ、手を叩いて喜んだ。
でもハルルはまだ呑気にモグモグと食べている。
綺麗に一皿を食べきって、司会兼実況の人からインタビューを受ける。
「それではハルル選手! 見事優勝した今のお気持ちをお聞かせください!」
「美味しかった! ハルルもっと食べられる! 瑪瑙お姉ちゃんの作った料理だと、もーっともーっっっと入る! 瑪瑙お姉ちゃん今度作ってね!」
「まだまだハルル選手は余裕だった模様! そして、メノウお姉ちゃん、どこですかー?」
「あそこー!」
ハルルが私の方を指差した。
「え”っ?!」
「ほら瑪瑙、手を振ってあげなよー!」
「ほらほらーハルルが待ってるわよー!」
両脇からリステルとルーリに突かれる。
しぶしぶ私はハルルに向かって手を振った。
周囲の視線が一気に私に集まる。
恥ずかしいっ!
「メノウお姉ちゃん、ハルル選手に一言何か言ってあげてくれませんかー!」
「ハルル優勝おめでとーっ! 今度ハルルが食べたい料理、いーっぱい作ってあげるからねーっ!」
半ばやけくそ気味に叫ぶ。
「やたー! 瑪瑙お姉ちゃん大好き―!」
今日一番の笑顔で飛び跳ねるハルルちゃん。
私の顔は、火を噴きそうなくらい熱かった。
ハールールッ!
ハールールッ!
その後大歓声とハルルコールに包まれ、大食い大会は大盛況のうちに幕を閉じた。
優勝賞品はハルルの達てのお願いで、大量の香辛料が贈られることになった。
「これで瑪瑙お姉ちゃんにもっと美味しい料理作ってもらう!」
ふんすふんすと鼻息を荒くして、色々な香辛料を私に渡してくれたのだった。
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