騙る者

「そう言えば、皆さんは竜殺しの四英雄ってご存知ですか?」


 一通りみんなに試食をしてもらったあと、本格的に昼食を作って食べ、今は食後の焚き火を囲んでのまったりタイム。

 ガネットさんから買った、ほうじ茶を淹れて振舞って見たけど、割と好評。

 私だけ湯呑に入れて飲んでいるけど、流石にもうずずっと音は立てていない。


「え、ええ……。演劇の演目だったり、楽曲の名前ですよね?」


 何を言われるんだろうと、少しどぎまぎして誤魔化してしまった。


「今、ヴェノーラを訪れているらしいんですよ。楽曲にもなった風竜殺しの英雄ご本人達が! 一度会って見たいですねー。とても綺麗な四人組だというお話なんです」


 おや?

 私達の事を言っているのかと思ったけど、どうやらそうではないみたい。


 まぁ私達自身面倒事に巻き込まれそうで、自分達が風竜殺しの英雄だなんて喧伝していない。


「ふむ、一冒険者として風竜殺しの英雄には会ってみたいな。ガネット、今彼女たちは何をしているか知っているか?」


 唐突にシルヴァさんがそんな事を言い出したので、私達はギョッとする。

 コルトさんとカルハさんは、別に動揺している感じはない。


「えっと確か、絵のモデルを依頼されて、それを受けたとは聞いていますね。確か、絵画会アカンサスだったかな? そこの人気画家に依頼されたという話しを聞きました」


「そうか、ありがとう。機会があれば会ってみるよ」


「皆さんはしばらくヴェノーラに滞在予定ですか?」


「ええそうねー。休みなしでヴェノーラに来ちゃったから―、少しゆっくりしようかなーって思っているわー。ガネットさんはこれからどうするのー?」


「そうですね……」


 ガネットさんは顎に手を挙げ、うーんと空を見上げる。


「私もしばらくはヴェノーラに滞在ですね。流石に今日いきなり売り物が完売するなんて思ってもみなかったので、色々と計画の再検討ですね。アンデとリュベラにも話さないとです」


 ガネットさんは私をじーっと見ながらそう言った。


「あの、私の顔に何かついてます?」


 当然、顔に何もついていないのはわかってる。

 あまりにもまじまじと見られるので、居心地が悪くなって思わず口を開いたのだ。


「おおっと! 失礼しました。知っているお方によく似ていらっしゃったので、ついついじっと見てしまいました」


「そうだったんですか」


「フラストハルンで忙しそうにしている人が、こんな所にいるわけがないのはわかっているのですが、びっくりしましたよ」


 私のいた世界では、自分とよく似た顔の人が三人はいるって言うけれど、異世界にもそっくりさんがいるのか。


 それから私達は、洗い物などの後片付け済まし、ヴェノーラの街の中に帰った。


「それでは、私はこちらですので失礼します。メノウさん! 美味しい食事をありがとうございました!」


「いえいえ! 私の方こそ、良い物を沢山買うことが出来て良かったです!」


 私とガネットさんは握手を交わす。


「それでは皆さん! ご縁がありましたら、またどこかでお会いしましょう!」


 少し街の中を歩き、大通りの分かれ道。

 そこで私達は、ガネットさんと別れた。



「何とか平静を保てたけど、あのハルルって子、ちょっと怖かったわね。気取られてはないと思うけど……。それにしても四英雄と同じ名前の子達が二組か。どっちが騙る者ものなのやら。……まあ考えるまでもないか。オニキス様とそっくりな子もいるし、やっぱり私は運が良いわね。二人に話しておかないと」


 瑪瑙達と別れ、華やかな音楽が奏でられる通りを一人歩くガネット。

 彼女の真意を、瑪瑙達が知ることは無かった。



 私達はガネットさんと別れ、ヴェノーラの冒険者ギルドに向かって通りを歩いている。

 音楽や歌は聞こえてくるけれど、最初に通った通りとは趣が違う。

 ギターのような楽器で弾き語りをしている人が多かった。

 グループで演奏している人達もいるけど、多くて三人まで。

 そして、必ず歌っている人がいる。


「ほう、ここは吟遊詩人たちの通りになっているか」


「そうですね。冒険者ギルドが近いという事もあるのでしょう。ここでは色々な冒険譚が聴けますよ。歌劇になっているより、吟遊詩人の方が事実に近い詩を聴けることがあるので、面白いですよね」


「確かにのう。噂を聞きつけ現地にまで現れる者がおるという噂じゃからのう」


「それ、本当の事ですよ」


 少し耳を澄ませながら歩いてみる。

 聞こえてくる詩は様々で、例えば、結成したばかりの若き少年たちのパーティーが、魔物に襲われていた行商人を命からがら助けた話や、ならず者に連れ去られた美女を男性冒険者が助け、恋に落ちる話、行方不明になっていた人を助け、優しく看護した一人の少女の話など、どれも聴衆を惹き付ける魅力的な詩だった。


 冒険者ギルドに入る。

 フルールの冒険者ギルドと負けず劣らずの大きさ。

 ただその建物は、壁に剣や盾、杖などを持った人物達が彫られていて、その佇まいに圧倒される。


 ギルド内も中々に人が多い。

 腰に武器を下げた冒険者も多いけれど、どうにもそうじゃない人も多い。

 商人というわけでもなさそうだ。


 常設依頼が載っている掲示板を見に行く。

 内容は首都とよく似ていて、魔物の討伐は少なく、小動物のような獣の狩猟や、薬草の採取が多かった。

 首都もそうだったけど、ヴェノーラの周辺も魔物が少ないそうなので、どうしても常設依頼は少なくなるんだとか。


 その代わり、個人依頼の掲示版は凄い事になっていた。

 多いのが、冒険譚の聴き取り。

 これはフルールでも見かけたことがある依頼ではあった。

 ただ、その数はフルールの比ではない。

 依頼料が依頼主の裁量なのは、ここでも一緒みたいだけど。


 次に多いのは、街から街へと移動するための護衛。

 ただ、依頼主は商人や商隊だけじゃない。

 演奏家や、歌劇団のような人達からの依頼も多い。

 他の街へ公演に行くための護衛を、ここで募っているらしい。


「やっぱり各街で依頼の傾向って全然違うよね」


「そりゃーね。街の近くに何があるかで大きく変わるから」


 冒険者ギルドに入ってすぐに、何人かの人が私達の方へ寄ってこようとしていたけど、右胸に着けている赤いリボンが付いたブローチを見つけると、がっかりした様子で戻っていった。

 そのおかげで、私達は今こうしてのんびりと依頼を見てまわることが出来ている。


「そう言えばシルヴァ? その四人組と本気で会う気なの?」


「そうだな。出来れば会いたい」


「面倒事に巻き込まれに行くの?」


「一つ忠告をしておきたいと思ってな」


 シルヴァさんの言葉に、リステルはむーっと顔をしかめている。


「別に私達は何とも思ってないですし、無視していいのでは? 厄介事に巻き込まれるのってその四人組のほうなんですし」


 流石に私も自ら厄介事に巻き込まれに行くのは避けたい。


「そーだそーだー」


 リステルが何故か私の背中に隠れながら言う。


「そう思うのが普通よねー?」


「何かあるんですか?」


「四人が賜った勲章はー、この国の王が認めた者のみが持つことを許される物なのー。そして、それと同時にあなた達はー、風竜殺しの英雄という二つ名を得ているのー。それを偽称することはー……」


 カルハさんはそこで言葉を切ると、手で首を切る動作をした。


「最悪処刑よー」


「――っ」


 その一言に、ぐっと息をのんだ。


「因みにですが今までに、誰かを騙る者がいなかったかと言うと、これが結構いるのです。罰を厳罰化したとしても、減る事はありません」


「聞けば聞くど、妾も放っておけばよいと思うがのう?」


 サフィーアが首を傾げる。


「んー、シルヴァ怒ってる。ご機嫌斜め」


 ハルルがじーっとシルヴァさんを見つめて言う。


「シルヴァさん?」


 私もリステルもルーリもサフィーアも、シルヴァさんをじーっと見る。

 するとシルヴァさんは照れ臭そうに、頬をかいた。


「……お前達が命がけで得た称号を、どこぞの知らん輩に名乗られるのは気分が悪いんだ」


 目線をすいーっとそらし、恥ずかしそうにそんな事を言う。


「ふっ! お前さんらは相変わらず難儀な性格をしとるのう?」


「……くっ。こればかりは言い返せん」


 なんて、私達は照れるシルヴァさん達を揶揄っていると、突然建物内がざわざわと騒がしくなった。


「どうしたんだろう?」


 騒がしい方に視線を向ける。

 どうやら誰かが冒険者ギルドの中に入って来て、それが騒ぎになっているようだった。


「ごめんなさい。まだモデルの依頼が終わっていないのです。だから他の方の依頼は当分の間受けられません」


 寄ってくる人たちに申し訳なさそうに話しているのは、凄く綺麗な女性。

 見た感じ、私より少し年上くらいのお姉さん。

 その後ろに歩いている三人も、ビックリするぐらいに美人だった。

 その四人の右胸には、黄色のリボンが付いたブローチをしている。


「ごめんねー? ちょっと通してくれるかなー?」


 彼女達を取り囲む人だかりを割りながら、四人は受付窓口へと向かう。


「すっごい綺麗な人達……」


 リステルも驚いたのだろう、四人組を見てつぶやいていた。


 風竜殺しの英雄譚を直接お聞きしたいものだ。

 噂以上に美麗な方達だな!

 あの容姿なのに、風竜を屠るのか……。


 騒めきの中から、そんな言葉が聞こえて来る。


「リステル様、ルーリ様、メノウ様、ハルル様、ようこそおいで下さいました」


 受けつけにいた四人組を、奥から出て来た一人の男性が出迎える。


「ご機嫌よう、ギルドマスター。ヴェノーラの街は今日も平和ですか?」


「ええ。風竜殺しの英雄である皆様を必要とするほどの問題は起こっておりませんので、ご安心ください。街の安全の確認の為、態々来てくださりありがとうございます」


 そんなやり取りを、私達は遠目で見ていた。


「何だかあのお姉ちゃん達、凄く怯えてる」


 ハルルがそんな事を言い出した。


「そうなのか? ハルル」


「ん」


「……英雄を騙るのは、何か理由があるのかもしれませんね」


「どうするー? 放っておくー?」


 シルヴァさん達が何やら相談を始めた時だった。


「失礼ですが、あなた方は本当に風竜殺しの英雄様方なのですか?」


 受けつけから離れた四人に向かって、一人の男性が声を大きくして話しかけたのだ。

 男性の言葉に、彼女たちの登場で賑やかだったギルド内が、いっきに騒々しくなる。


「おや、失礼なことを聞きますね。どちら様ですか?」


 すると、足を止めた彼女たちの間に割って入るように、三人組の男性が現れた。


「あなた達こそ何者ですか? 私は彼女達に話してるのですが」


 怪訝な顔をして、現れた男性に質問を返す。


「私共は、彼女達と同じパーティーを組んでいる者ですよ。仲間が謂れのない言い掛かりをつけられるのを、黙って見ているわけにはいきませんからね」


「アンタはどうして、彼女等が偽物だと思ったんだ?」


「私は、ハルモニカで行われた叙勲式で開かれた天覧試合を直接観戦した者だからです。私が見た四人は、もう少し幼かった。そして、腰に下げている武器が違う!」


 男性が英雄と騙る女性達を指さして、はっきりと言い放った。


「やれやれ、タイミングが良いのか悪いのかわからんのじゃ」


「何だかややこしい事になってきたわね」


「だね」


「ねえシルヴァどうするの? 文句を言いに行くんじゃなかったの?」


 私達は顔を寄せ合ってひそひそと小声で話す。


「はあ。あなたの様に彼女達を疑う人は、今までに何人かいましたが、全て衛兵に捕まっていますよ。なぜなら彼女たちは緑竜勲章持っているのですから!」


 少し大仰に、演技めいた仕草でいう男性。

 男性の声に合わせるかのように、女性一人は勲章を手に持って見せた。


「そこまでするのか……」


 シルヴァさん達が大きくため息をついた。

 そして……。


「失礼だが、その緑竜勲章を見せてもらっても良いか?」


 とうとうシルヴァさんが動き出した。


「どうぞどうぞ! しかと目に焼き付けてください!」


 さっきから気にはなっていたけれど、偽物と疑われた直後から、女性四人はずっと黙ったままだ。

 そして、ずっと同じ仲間だという男性達だけが喋っている。


「ふむ、四本足の竜の胸に緑色の宝石。これは……本物か」


 シルヴァさんの言葉に、ざわざわと騒めきが大きくなり、彼女達を偽物と疑った男性へ非難の声が上がる。


「そうでしょうとも! では、どなたか衛兵を呼んで――」


「待て。私が言ったのは宝石が本物という事であって、この勲章自体は偽物だ」


 嬉々として話す男性の声を遮り、シルヴァさんははっきりとこれは偽物だと言い切ると、ギルド内が一瞬静まり返り、そして先ほど以上の怒声交じりの声が沸き上がる。


「静かに! 静かにっ!! 落ち着いてください! 彼女が言い掛かりをつけているのです! あなたはどうしてこれが偽物だと言えるのですか!」


「……お前、風竜ウィンドドラゴンを見た事ないだろう?」


「それがどうかしましたか?」


風竜ウィンドドラゴンはな、二本足なんだ。前足が無く、そして尾も長い。緑竜勲章は風竜ウィンドドラゴンをモチーフに作られている。それがこの勲章が偽物である何よりの証拠だ」


 そう言って、シルヴァさんは偽物の勲章を男性に放り投げる。

 男性は偽物の勲章を受け取るそぶりすら見せず、床に落としてしまった。

 そして、今まで押し黙って男性の言うがままにしていた女性達四人が、その場にへたり込む。


「……助けてください! 仲間が一人、人質になっているんですっ! 私達は脅されて、風竜殺しの英雄を騙らされていました!」


 唐突に大きな声で言う女性。


「なっ! お前達! それを言う意味が解っているのですかっ!」


 今まで騒然としていたギルド内が一気に静まり返り、当事者たち以外誰も口を開いていない。


「さて、そう言う事らしいんでな。詳しく話を聞こうか?」


「くっ!」


 シルヴァさんがキッと睨むと、男性三人組の一人が逃げ出そうとする。

 影から見ていた私はそれを見逃さず、フローズンアルコーブで足元を凍らせ、三人の動きを封じた。


「冷てえっ?!」


「この魔法は……」


「くそっ! こうなったら!」


「ダメっ! 正面の男は魔法が使えますっ!」


「ファイアバレット!」


 シルヴァさんに向かって複数の火球が放たれるが、何ら意に介することはなく手を軽く振り払うと、火球は届くことなく掻き消えてしまった。


「これ以上するなら私も本気で相手をするが、かまわないか?」


「――くっ!!」


「お前達にも詳しく話を聞きたいから、大人しくしていてくれよ?」


 シルヴァさんはそう言って、後ろの女性達を一睨みする。

 睨まれた女性達はゆっくりと頷く。


「其は深き深き暗い青。仄暗き内より溢れだす、安息の煌めき。汝らを優しく誘わん。昏々と眠れ、コーマ・アパタイト」


 深く暗い青色の結晶が男性三人を包み込むと、白目を剥いて動かなくなった。


「事情を聞くのなら、この男共はいらんじゃろう?」


「ああ、助かるよサフィーア」


 衆人環視の中、堂々と話をするシルヴァさんとサフィーア。


「……殺してしまったのですか?」


 顔を真っ青にして怯える女性達。


「いや、妾の魔法で昏睡しておるだけじゃ。妾が魔法を解かない限り、目が覚めることは無いがのう?」


「さて、お前達。人質が取られているとは本当の事なんだな?」


「はっはい!」


 シルヴァさんの少しきつい口調に、それでも必死に返事をする女性達。


「では、案内しろ。今から助けに行く」


「――っ! ありがとうございます!」


 残りの三人と昏睡している男性達を慌ててやって来た衛兵に任せ、私達は私達を騙った女性一人の案内で、街中を歩く。


「みんなは残っても良かったんだぞ? ややこしい事にはなったが、これくらい私達三人ですぐ済ませられるんだ」


「まあまあ、そう言わないでよシルヴァ。別に三人の心配はしてないけどね。あのままギルドに残っててもすること無かったし」


 今から人質を助けに行くというのに、シルヴァさんとリステルは呑気に喋っている。

 それを不安そうに見ている案内をしている女性。


 私は、道すがらこの女性から事情を聞くことにした。


 元々彼女達は女性五人の冒険者パーティーで、ハルモニカ王国内を気ままに旅をしていたそうだ。

 ある時、滞在中の街で、彼女達が風竜殺しの英雄だと間違われる事態が発生した。

 どれだけ否定しても受け入れてもらえず、逆に謙虚で素晴らしいと大きな騒ぎになってしまった。

 好意で大量の食糧や、活動資金の足しにと、金品まで渡されるほどに騒ぎは発展。

 その小さな街は、お祭り騒ぎになった。

 自分達だけで収集がつかなくなってしまう程に大事となったことに彼女たちは恐怖し、その街から逃げた。


 そして、油断している所を件の男連中に仲間の一人が捕まり、いう事を聞かなければ仲間の命がない事と、英雄を騙って金品をだまし取ったと言いふらすと言われ、仕方なく言う事を聞いていたそうだ。


「あなた達は一体……」


「あー、ただのしがない冒険者ですよ。ちょっと正義感が強い仲間がいる」


 と、私は誤魔化しておいた。


 結局この事件は、あっけなく終わった。

 当然だろう、私はともかく、コルトさんシルヴァさんカルハさんの三人が動いたのだ。

 人質も無事に確保。

 人質を監禁していた二人も容易く無力化。

 私達が手を出す暇もなく、危なげすらなかった。

 人質の女性が乱暴されていないかと心配していたのだけれど、それも無かった。


 その後、私達も一応事件の当事者として簡単な事情聴取を受けたけれど、緑竜勲章を提示するとあっさり開放。


 騙っていた者達の処遇をどうするかと言う話しも持ちかけられた。


「私達が口出ししなければ、全員どうなるんですか?」


「女性四人に関しては、酌量の余地があります。しばらく拘留の後に釈放でしょう。脅していた連中の方ですが、少々刑が重くなると思われます」


「……そうですか」


 彼女達に騙らせていたことも罪が重い事らしいのだが、それより問題だったのが、勲章の偽造。

 これがかなり重罪にあたるそうだ。


 私達は課せられる刑罰に口を出さないことにした。



「結局、私達何もしてないよね」


「まあたまにはいいんじゃない? 珍しくシルヴァの機嫌が悪い所も見れたんだし」


「せっかく美味しい昼食を食べた後だったのに、少し後味が悪いわね」


「瑪瑙お姉ちゃん瑪瑙お姉ちゃん、次はどんなお料理作ってくれる?」


「そうじゃな。ハルルの言う通り、今回起こったことより、妾も瑪瑙が作る瑪瑙の国の料理が楽しみじゃ」


 夜、宿屋の一室に集まって、いつも通りの会話。

 珍しくコルトさん、シルヴァさん、カルハさんも一緒。


「調味料が増えたことで、レパートリーが一気に増えたからね! 楽しみにしてていいよ!」


「やたー!」


 ハルルが手を挙げて嬉しそうにしている。


「どんなのが食べてみたいー?」


「ハルルは! ハルルは――!」


 こうしてヴェノーラに到着して、慌ただしい一日が更けていくのであった。


 この時の私達は考えてもいなかった。

 コルトさん達との別れが近づいていたことに……。

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