青い薔薇
「スペリオルがこの街を襲った理由ですか?」
領主であるボルンハルトさんに昼食会に呼ばれてから、七日が過ぎた。
私とルーリは午前中は炊き出しの準備をみんなと一緒に手伝い、午後からは怪我人が来ても良いように、仮設された診療所に待機するようになった。
セレスタさんにレクチャーを受けながら、治癒魔法の練習をする。
そのおかげでルーリは、ヒーリングを行使しても痛くならないようになった。
私も複数の治癒の魔法を覚えることが出来た。
そんなに頻繁に怪我人が来るわけではないので、暇な時間を使って気になっていたことを聞いてみることにしたのだ。
「あの
「実は、スペリオルは私達に、治癒魔法の技術の開示を求めていたんです」
「教えなかったんですか?」
「そうですね。話し合うまでもなく、教えるつもりはありませんでした」
セレスタさんは少し辛そうに俯き、スカートの裾を握る。
セレスタさんが私達に治癒魔法のノウハウを教えてくれているのは、この街の危機を救ったからというのもあるが、治癒魔法をちゃんと怪我をした人の為に行使できる人間だとわかったからという事らしい。
その点スペリオルは、魔法を使えない人たちを見下していて、魔法が使える自分たちの発展の為に治癒魔法のノウハウを教えろという、酷い理由だった。
セレスタさん聖女一家の考えから大きく外れていたので、ずっと断っていたのだとか。
「結果、この街全てを巻き込んだ挙句、多くの命が失われる事態になってしまいました。私が殺してしまったも同然ですね……」
「ごめんなさい。安易に聞くような事じゃありませんでした……」
「いえ、本当は誰かに言いたくて聞いてほしくて仕方なかったんです……」
ポツポツとセレスタさんの頬を涙が伝い、零れ落ちる。
「セレスタさん……」
「私がスペリオルに開示していれば、セレエスタの街はこんな事にはなっていなかったはずっ! 私のっ! 私のせいで……っ! 沢山の……人が……っ」
声は途中から嗚咽交じりになり、唇を噛む。
私はセレスタさんをぎゅっと抱きしめた。
「もしセレスタさんが治癒魔法の技術を教えていたら、もっと多くの人が死んでいたかもしれません。
私はセレスタさんの後悔を全部はわかってあげられない。
それでも、ほんの少しの慰めにしかならなくても、思ったことを口にする。
「うっ……ううっ……」
「だから自分を責めないでください」
「あり……がとう……メノウさん……」
セレスタさんが落ち着くまでの少しの間、私はセレスタさんを抱きしめ、ルーリは背中を優しく撫でていた。
「ごめんなさい。お恥ずかしい所をお見せしました」
「いえ、気にしないでください」
話して少し気が楽になったのか、優しい笑みを浮かべているセレスタさん。
「そういえば、もうそろそろ三番隊が到着する頃ですね」
「そうですね。先遣隊で来ていたランメルさんとセイネさんが、十日ほどで本隊が到着するって言ってましたからね」
「お二人はやっぱり三番隊の方達が到着したら、セレエスタを発つのですか?」
「はい。ここまで来て、また叙勲だとか言って首都に呼び出されるのは嫌ですから」
「……あははは。とても名誉ある叙勲ですのに……。あのっ!」
私達が叙勲の話に嫌そうな顔をしているのを見て、セレスタさんは乾いた笑いを浮かべていたと思ったら、急に真剣な顔になって私たち二人を見る。
「よければ! あと少しの期間しかないですが、皆さんの事を……えっと……その……」
少し頬を赤らめ、もじもじしながら話すセレスタさんを見て、私とルーリは視線を合わせてクスっと笑った。
「メノウでいいよ!」
「私も、ルーリって呼んで? セレスタって呼ばせてもらうから!」
そう言って、二人でセレスタに手を差出した。
「うんっ! ありがとう!」
今までで一番の笑顔を見せて、セレスタは私とルーリの手を握ったのだった。
夜には拠点であるお屋敷に戻って、リステル達とも改めて自己紹介をして、親睦を深めた。
「ジェフロワさんは、ご両親が決めた婚約相手なの?」
「えっと、そのー、いっ一応そうなんだけどね?」
恥ずかしそう顔を赤らめ、もじもじして話すセレスタ。
シャワーも食事も終わり、後は寝るだけのゆったりとした時間。
私達は一つの部屋に集まり、のんびりとお話をしている。
今話している話題は、セレスタの婚約者であるジェフロワさんとの馴れ初め。
ぶっちゃけ恋バナだよね。
やっぱりこの世界でもこういう話しはみんな好きなのか、興味津々そうに聞いている。
「小さい頃から面倒を見てくれてたお兄ちゃんみたいな存在で、ずっと好きだったの」
「じゃあ、好きな人が婚約者になったってことだよね?」
「……うん」
セレスタのはにかんだ顔に、私達もつられて顔が熱くなる。
「それは素敵ね」
「でもでも! ジェフロワは嫌じゃなかったのかなって心配になった時期もあって……」
「あー。親が決めた事だから、仕方なしなんじゃって思っちゃった?」
「うん」
「ふむ。その様子を見るに、無用な心配じゃったと?」
指先をつんつんと合わせながらセレスタはこくんと頷き、顔を真っ赤にする。
ぷしゅーと頭から湯気が出てそうなほどだった。
「何かあったの?」
「えっとね、不安で不安でたまらなくて、私だけがジェフロワの事をこんなに好きなんじゃないかって。それで思わず聞いちゃって」
「それで? それで?」
ハルルがこういう話しに興味があったのは少し意外だったけど、楽しそうにセレスタに続きを促している。
「私の事、別に好きじゃないよね? って言っちゃって、私泣いちゃったの。そしたら、大好きだよって言ってくれて、その……あの……ごにょごにょ」
後半はさらに顔を真っ赤にして俯いたセレスタの声は、どんどん小さくなって聞き取れなかった。
「え、何々? 何があったの?」
リステルが楽しそうに聞く。
ルーリは口を手で押さえながら、じっと話の続きを待っている。
ハルルもサフィーアも興味深そうに、セレスタを見つめている。
私も背中がむず痒くなるような感じと、胸の鼓動が早くなるのを感じている。
みーんな顔が真っ赤だ。
「キ、キスしてくれたの」
キャーっと黄色い声が上がる。
「どこに? どこに? ほっぺ? おでこ?」
「これハルル、落ち着くのじゃ。流石にそれはセレスタも言うのは恥ずかしいじゃろうに」
「えー?! セレスタお姉ちゃーん!」
「え、えっとね……」
口には出さず、セレスタはそっと自分の唇に指を触れた。
その仕草と表情は、同い年とは思えない程に幸せそうで、そして何より色っぽく大人びて見えた。
「――っ」
その時の光景を思い出したのか、セレスタは真っ赤な顔を両手で覆う。
顔が熱い。
私もきっと頭から湯気が出ているに違いない。
「ねえねえ! メノウ達はどうなの? さっきから私の事ばっかりじゃない。みんな綺麗で可愛いんだから、恋人いた事あるんじゃないの?」
「あ、あはははは……。実はここにいる五人、全員男の人が苦手なんだよね……」
「え、嘘?! 本当に? 私を揶揄ってるわけじゃなくて?」
「うん」
リステルが頷く。
「そうなんだ、ごめんね? 嫌なこと聞いちゃった」
「ううん、言ってなかったもん。仕方ないよ」
「リステルは……あの出来事だって予想はつくけど、三人はどうしてか聞いて良い? 嫌なら話さなくていいんだけど」
「私は小さなころに、男の人に執拗に迫られたことがあって。それで怖くなっちゃったの」
「ハルルも。ハルルは怖くはなってないけど、気持ち悪いって思った」
ルーリもハルルも、よく似た理由を答える。
「瑪瑙は、何か理由あるの?」
「うーん、たぶんこれがきっかけかなーって言うのはあるかなー?」
「どんなの?」
「私は、女の子に凄い人気があった男の子に告白されたことがあるの。私は別に何とも思ってなかったから断ったんだけど、そしたら、逆恨みされちゃって。たぶんそこからかなー? 何だか男の人が怖くなっちゃったのって」
小学一年生くらいの時の話だったと思う。
よくよく考えてみると、そこから男の人が苦手になっていったんだと思う。
「そうだったの」
ルーリがしょぼんとしている。
「三人にしてみれば、大したことない理由だよね」
「ううん、そんな事ないよ。嫌なことに大小なんてないよ」
「ありがと」
リステルの優しい言葉に、ほんの少しホッとする。
「サフィーアはなんで?」
ハルルがズバッと切り込む。
「妾か? 妾と言うより、テインハレスに住む
「え、そうなの?」
「うむ。妾の母であるエメリとコランも男が苦手じゃった。そもそも
「サフィーアもなんだ?」
「当然じゃ。まあタルフリーンにお役目で住むようになって、幾分ましにはなったがのう。それでも苦手意識はしっかりとまだあるのじゃ」
「みんなそれぞれ大変な思いをしてるのね」
セレスタはしょんぼりとする。
「あ、でもついこの間、瑪瑙は告白されてたよねー?」
リステルが少しニヤニヤして私を突く。
「おー! 誰に誰に?」
ついさっきしょぼんとしていたセレスタが、目を輝かせながら聞いてくる。
「王国騎士団二番隊のハスト隊長。ティンバロの街で偶然出会ってね。任務のお手伝いをすることになったの。任務が終わって帰還する直前に結婚してくれーって言われちゃった」
嫌な思い出と言うわけではないけど、やっぱり自分の事を話すのは恥ずかしい。
「隊長さんと会ったのはその時が初めて?」
「ううん。首都で
「三番隊の代表との天覧試合が開かれたんだけど、その時の瑪瑙の戦う姿に一目惚れしちゃったんだって」
「それはちょっとわかるかも。私も、メノウが必死で治癒魔法を使っている所をそばで見ていたけど、綺麗だったもの」
「そ、そうかな? ただ必死だっただけだよ」
「隊長さんも残念よね」
「告白されたこともびっくりしたけど、大変だったのはその後だよー」
「何かあったの?」
セレスタがキョトンとして首を傾げる。
「二番隊の人達に全部聞かれてて、私の目の前でハストさんを揶揄うし、この三人が嫉妬しちゃってさ。ずーっとむくれてるんだもん」
「うっ」
「ヤなものはヤっ!」
リステルは無言で視線を泳がせて、ルーリは気まずそうに目を逸らす。
ハルルはぷーっと頬を膨らませてぷいっとそっぽを向いた。
「へー? じゃあ三人が好きな人はメノウなんだ?」
「ん! ハルル瑪瑙お姉ちゃん大好きっ!」
「瑪瑙だけじゃないよ? ルーリもハルルもサフィーアも、私の特別」
「私も」
元気よく両手を挙げるハルルに、真剣な表情で言うリステルとルーリ。
「瑪瑙は?」
「好きでもない人に、頬にキスしたりなんかしないでしょ?」
リステルの視線から逃れるように顔を背けて、少しぶっきらぼうに言う。
恥ずかしくて顔が熱くて、今の顔をあんまり見られたくなかった。
チラッと横目で見ると、リステルとルーリも顔を真っ赤にしてモジモジと俯いていた。
「もー! 変な空気になっちゃったじゃない!」
なんとも言えない空気を誤魔化すように、大げさに言う。
「今のは瑪瑙が悪いー!」
「ごめんなさーい」
「ふふふっ! あはははは! みんな本当に仲が良いのね! 羨ましいわ」
「セレスタは、私達の他に友達っていないの?」
「うん、いないの。三代にわたって待ち望まれた力の強い聖女だったから。周りは大人ばっかりだったし、知り合った年の近い子達もみんな聖女様って私を呼んで、距離をとってたからね。正直寂しかった。だからみんなと仲良くなれて、こんな風に話せてすっごく楽しい!」
「セレスタが喜んでくれて、私達も嬉しいよ」
次の日から、セレスタとできるだけ行動を共にする。
朝起きて朝食を一緒に作って食べて、昼食の時も、夕食も。
夜はみんなで集まって、いろんな話をした。
私達からは、今までしてきた旅の話。
楽しかったことは当然沢山話したし、辛かったことも話した。
セレスタはこの街から出たことがほとんどなかったらしく、私達の話を興味深そうに聞いていた。
セレスタはセレスタで、この街での思い出を沢山話してくれた。
ジェフロワさんとの思い出話が多く、中には惚気かな? って思うような、聞いていてこっちまで恥ずかしくなる話がいくつかあった。
そしてあっという間に四日が過ぎ、聞いていた予定と一日遅れで王国騎士団三番隊が到着した。
「皆さんお久しぶりです! 素晴らしいご活躍だったとか。
開口一番、三番隊隊長のサフロさんが私達を褒め称えてくれた。
「お久しぶりです、サフロさん。色々偶然に偶然が重なった結果なだけで、私達はそこまで凄い事をしたつもりはないんですけどね」
「何をおっしゃいますかメノウさん。
「
サフロさんだけでなく、副隊長であるヨーキさんまで私達を褒めちぎるので、少し居心地が悪かった。
「お初にお目にかかります。今代の聖女を務めさせていただいております、セレスタです。この度は、セレエスタの復興のための物資を運んでいただき、誠にありがとうございます」
「初めまして。王国騎士団三番隊隊長サフロです。事情は先遣隊を務めた隊員から聞き及んでおります。聖女様方がご無事で何よりです」
緊張した面持ちのセレスタが挨拶をすると、優しい声でそれに応えるサフロさん。
領主さんとの挨拶を済ました後らしく、サフロさんとヨーキさんだけで私達に会いに来てくれたらしい。
ランメルさんとセイネさんを含めた他の隊員さん達は、物資を指示された場所に運び入れている。
「皆さんはまだセレエスタに滞在されるのですか?」
「いや、三番隊が来たからな。私達はそろそろここを出るとするよ」
「はぁ、やっぱりですか。そんなに叙勲がお嫌ですか? シルヴァ様」
「そりゃあな。目的があって旅をしてるんだ。ここまで来てまた首都に来いとか言われるのは、たまったもんじゃないさ」
ため息をつくサフロさんに、肩をすくめて言うシルヴァさん。
「いつ頃発つので?」
「明後日あたりだな。あんまりのんびりしていると、書状が届きそうでな」
「流石にこんなすぐには決まりませんよ」
「わかってはいるんだがな。一応念の為だ」
「もう三番隊が来ちゃった……」
「うん」
シルヴァさん達とサフロさん、ヨーキさんとの会話を、少し離れたところで寂しそうに見ているセレスタ。
「せっかく仲良くなれたのに……」
「ごめんね」
「ううん。まだほんのちょっとだけど、時間はあるもん! その間はみんなとくっついて離れないからねっ!」
翌日から私達は復興のお手伝いを辞め、セレエスタを発つ準備を始めた。
ここまでずっと働きっぱなしだったセレスタは数日休養を貰い、私達と行動を共にしている。
「え、こんなに食材買い込むの?!」
「うん。セレエスタからしばらくは、歩いて次の街へ向かうからね。その分の食材はいっぱいいるんだよ」
中流区の被害が少なかった場所で、バザールが開かれているのでそこでたくさん買い込む。
実はサフロさんが、食材を別けてくれると言っていたのだけれど、私達はそれを断った。
こうやって街にお金を落とすことも、復興の手助けになるからだ。
少し割高になっている品を、気にせずあれやこれやと色々と買う。
まあ買うと言っても、消耗品ばかりなのだけれど。
「薪ってそんなにいるの?」
「結構使うわよ」
「メノウの魔法だけじゃだめなんだ?」
「実は魔法より温度の調整がずっと楽なの。それに、何かあった時の為に持っておいた方が良いからね」
「へー、なるほど。ふふっ」
「どうしたの?」
「旅の途中でも、メノウの料理がずっと食べられるのは少し羨ましいなって思って」
「えへへーいいでしょー?」
ハルルが嬉しそうに言う。
「セレスタだって料理できるじゃない」
「そうだけどー! メノウには全然かなわないもん!」
「レシピはいくつか残したでしょ! お料理は創意工夫! 旦那さんの為にも頑張ってね?」
私がそう言うと、セレスタの顔がぼんっと真っ赤になる。
「まっまだ結婚してないよっ!」
みんなでワイワイはしゃぎながら買い物をするのは楽しかった。
そして――。
「みんなと出会て、仲良くなれて嬉しかった」
少し涙ぐんで話すセレスタ。
「皆さんには何から何までお世話になりました。皆さんがこの街に訪れた奇跡を、私達は生涯語り継いでいきますね」
「奇跡なんて、そんな大それたものじゃないですよ。私達の我儘でここに来たんですから」
ティレルさんの言葉に、コルトさんが少し困った表情で言う。
「瑪瑙が私をかばって左手を失って。元に戻せるかどうかわからないけど、少しの望みをかけてここに来ただけなんだよね」
「偶然だったとしても、皆さんが来てくれたおかげでティレルもセレスタも命が助かったのです。もちろんセレエスタの街の多くの住民も。本当にありがとうございます」
ヴィオラさんが深々と頭を下げる。
「少しでもセレエスタの街の一助となれたのなら幸いです。まだまだ復興は始まったばかりですが、無理はなさらないように気をつけてくださいね?」
相変らずリステルのこういった畏まった振る舞いには、見惚れそうになってしまう。
まだ日が昇る前の暗い早朝。
私達は東門の前で別れの挨拶を交わす。
「もう少しゆっくりして、私達のお手伝いをしてくださってもいいんですよ?」
三番隊隊長のサフロさんが、苦笑交じりに言う。
「のんびりしてると首都に行く羽目になるからな。流石にそれは避けたい」
「次は普通に王城で叙勲だと思いますよ?」
「私達の事を知っていてー、そう言われて喜ぶ人がいると思うの―? サフロちゃーん」
「それもそうですね」
ジトーッとした目でサフロさんを見るカルハさんに、サフロさんは肩をすくめて笑っている。
「それじゃあ行くね」
「……うん」
「復興頑張るのよ?」
「セレスタお姉ちゃん、お幸せにね!」
「無理はせんようにな?」
「うん、うんっ! ありがとう! みんなに出会えて嬉しかったよ! もし、ハルモニカに帰ってきたのなら、セレエスタにもまた来てね!」
「もちろん! またね!」
「いつかまたー!」
「んー! お姉ちゃんまたねっ!」
「復興が終わったセレエスタ、楽しみにしておるぞー!」
「……」
みんな思い思いの言葉で、再会を約束する。
私は何も言わず、頷かず、ただただ笑顔で手を振っただけだった。
それが無性に寂しくて、悲しくて。
私は慌てて両手を合わせ、水の魔力を集めて魔力石を作る。
「セレスタ!」
できた魔力石をセレスタに放り投げる。
「わっとっと!」
ビックリしつつも何とかそれをキャッチするセレスタ。
「――綺麗! 青いバラ?」
「花にはね! 花言葉って言うものがあるの! 青い薔薇には! 奇跡って花言葉があるんだよ!」
「――っ!」
「私からの―! プレゼント―!」
「ありがとー! メノウ! またねーっ!!!」
涙を流しながら、渡した魔力石を大事そうに抱え、大きく手を振るセレスタ。
「元気でねー! セレスタ―!」
私も大きく手を振り返し、東門を出た。
再会の約束はしない。
「またいきなりとんでもない物を作って渡したな、メノウ」
シルヴァさんにコツンと軽く頭を小突かれてしまった。
「ごめんなさーい!」
そう言って、リステルの後ろに隠れる。
さあ、また旅の再開だ!
青い薔薇の花言葉は「奇跡」の他に、もう一つある。
「夢叶う」
青い薔薇の元々の花言葉は「不可能」だった。
それは昔、青い薔薇を作ることは不可能と言われていた事に起因する。
神話やお伽噺にも、存在しない宝として青い薔薇が登場していたほど、青い薔薇は存在しないものの象徴とされていた。
やがて時代は進み、とある企業が十四年もの歳月をかけて青い薔薇を作った。
「
まだまだセレエスタの街の復興は始まったばかりで、これからも大変なことは続いていくだろう。
それでもセレスタ達の強い思いは、セレエスタの街を復興に導くだろう。
セレスタ達が思い続ける限り、「夢は叶う」のだ。
もう一つ。
いつか、私がこの世界を去った後、リステル達と再会したいという夢をかなえて欲しいと思って、私は青い薔薇の魔力石を贈ったのだった。
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