事件の始まり
「そんな事があったのねー」
夕方、家に戻って夕飯の準備をみんなでしている時に、王国騎士団三番隊と、首都にある
あれからコルトさん達は、一日ダラダラと寝て過ごしていたそうだ。
久しぶりに何もしない日を過ごしたと、嬉しそうに話していた。
「三番隊総出ですか。それはまたえらく大事ですね」
「そうなんですか?」
「ああ、確か首都の
「議会とか私は良くわからないんですが、事を荒立てるようなことを、わざわざするんですか?」
切ってもらった野菜を炒めつつ、私は首を傾げる。
「古くから執られている手法ねー。規模を大きくすることでー、どれだけ重要な案件かって言うのを内外に示す目的もあるのよー。しかもー、そうすることでフルールの
私の隣で同じように野菜を炒めているカルハさんが、のほほーんと話す。
そこでふと、今日の出来事を思い返してみた。
サフロさんやカーロールさんの言っていた、
「ルーリのことは以前に話は聞かせてもらっていて、あまり関わりたくないのはわかります。ですが、そう言う事はちゃんとしておいた方がいいですよ? 相手に付け入る隙を与えてしまいます。今回みたいに」
「そうですね。ごめんなさい」
コルトさんが優しく諭すように言うと、ルーリは素直に謝った。
ルーリの事情について、コルトさん達三人には、悪い噂の事だけは話している。
当然、魔法適正を測る魔導具のこと、マナを見ることが出来る手鏡のことについては一切話していない。
私だってマナを見る手鏡をルーリが作っていた事と、それが周囲に与えるとんでもない影響を、今日知ったばかりだ。
食事を済ませ、ルーリと一緒にシャワーを浴びる。
もうとっくに一人でシャワーぐらい入れるんだけど、未だに誰かと一緒に入っている。
今日はルーリと一緒。
ザーッと体を流れるお湯に合わせるように体の力を抜いて、私とルーリは、
「はあ~」
と、一息つく。
「瑪瑙、今日はありがとうね? 一緒にいてくれて心強かったわ」
「私はほんとに一緒にいる事しかできなかったから、お礼はリステルに言ってあげて?」
「うん。リステルにもちゃんと言うわよ? ハルルにもサフィーアにも。シャワーが一緒だったから、瑪瑙が最初」
私の顔を見て、にまーっと笑って言うルーリ。
そんなルーリの顔を見て、料理をしている最中に、薄っすらと考えていたことを話してみる。
「ルーリってもしかして私達に、噂とか魔導具の話をするのって、嫌なことだったりする?」
普通に考えれば、自分の悪い噂話や、知られるとマズい魔導具の話なんて、あんまりしたくはないはずだ。
「あー……、出会ってすぐに私の悪い噂を知られちゃったのは、ちょっと嫌だったかも。でも今なら、何を知られても隠す必要は無いって思ってるわよ?」
「そうなの? マナを見る手鏡の魔導具の話とか、今日初めて聞いてびっくりしちゃったんだけど」
私が少し拗ねたように頬を膨らませて言うと、
「それは完全に忘れてたのー! 許して? ね?」
私にぎゅーっと抱き着いて、少し甘えた声でルーリが言う。
「どーしよっかなー?」
と、ちょっとからかって言う。
すると、
「瑪瑙だって、スマフォとか言う道具の事、忘れてたじゃないのー! そ・れ・に――」
ルーリはそう言うや否や、私の背中に回していた腕をするりと腰に回した。
「あの女の子達はだーれ? 瑪瑙と、前に心の中で会った女の子はわかったけど、あと三人知らない子がいたわね? 随分仲良さそうに見えたけどぉ?」
そう耳元で囁かれ、腰に回された手が、つつつっと私の背筋をなぞっていく。
あっあっあっ!!
「と……」
「と?」
「……友達――っい!!!」
ぞわぞわと体を襲う感覚を誤魔化すように、振り絞って友達と言った瞬間、思いっきり肩を噛まれた。
「まあ友達が一人しかいないってことは、無いわよね……」
肩から口を離し、ぽそっとルーリが呟いた。
……あれ?
私、噛まれ損じゃない?
まあどうせ寝る前になったら
「ルーリさん嫉妬ですかなー?」
今度は私がお返しと言わんばかりに、ルーリのわき腹をつつつーっと指でなぞる。
「ひゃっ! ちょっ! そこはっダメ!」
身悶えするルーリにお構いなく、イタズラを続ける。
途中でルーリも反撃を始めて、ちょっとだけ? 変な空気になったのは内緒。
……本当に聞きたいことを、言葉には出せなかった。
つまり、ルーリが
私が元の世界に戻る方法を探す旅へ出る日は、もうすぐだ。
目的地は一応あるものも、それもただ一応程度のもの。
きっと
もしかすると、二度と戻って来れないかもしれない。
ルーリは、私が元の世界に戻る方法を一緒に探してくれると言っていた。
だから旅をする時も一緒だと、当然のように考えてしまっていた。
でも今回の事で、ルーリが大切にしている場所があることを知った。
『ルーリは、一緒に来てくれるんだよね?』
なんて、そんな自分勝手なことは、口には出せなかった。
……。
「二人とも、何やってるんだか……」
そう言うのはリステル。
こちらに手をかざし、ウィンドで風を送ってくれている。
「のぼせるまで何をしていたのかのう?」
ニヤッと笑ってサフィーアがそう言うと、ハルルが私とルーリのワンピースの肩をグイっと引っ張ってはだけさせた。
そこにはしっかりと
「お姉ちゃん達何かあった?」
ちょっとだけぷーっと頬を膨らませたハルルだったけど、すぐに心配そうな表情になって私とルーリを見る。
「ルーリが私の友達の事で嫉妬しちゃってねー」
「友達?」
私がそう言うと、キョトンとするリステルとハルルとサフィーア。
「ほら、瑪瑙のスマフォって道具で、瑪瑙と一緒にいた、瑪瑙の幼馴染とは別の女の子達」
「あーそう言えばそうだ!」
「瑪瑙お姉ちゃん、あれは誰?」
「確か服装も一緒じゃったのう?」
ルーリの一声に、目が怪しくなる三人。
「説明しろー!」
と、私に飛びかかるリステルと、
「しろー!」
それに続くハルルちゃん。
私はそのままベッドに押し倒され、もみくちゃにされる。
「ちゃんと説明するからーーーーーっ! あっ……」
結局説明なんてどうでもよかったのか、みんなといつも通り賑やかな夜を過ごした。
その時に、サフィーアが私に魔法をかけ直してくれた。
直接胸に触れて魔法をかけないとダメらしく、少し恥ずかしいんだけど、それ以上に恥ずかしい事をしているし、魔法をかけてもらった後は、胸がじんわりと温かくなるような感じと、ほんの少し不安が消えるような感じがするので、ちょっと気持ち良かった。
次の日の早朝、朝食の準備をしていると、珍しく来客が来た。
ちなみに来たのはアミールさんとスティレスさん。
二人は冒険者ギルドからの使いで、お昼頃に全員で冒険者ギルドに来て欲しいと、ガレーナさんとセレンさんの二人から伝えてきて欲しいと頼まれたそうだ。
……それはそうと、何でこんな朝早くに来たのかと言うと……。
「いやー、食堂で食べるのも悪くないんだけどよー。早く行って手伝えば、メノウの作る料理がまた食えるかもって思ってなー!」
あっはっは! っと豪快に笑い、悪びれることなく話すスティレスさん。
「……ごめんねメノウちゃん。スティレスってば、言い出したら聞かなくって」
その横でトホホと肩を落とし、手を合わせて謝るアミールさん。
「あはははは……。まあ、私の料理をそこまで楽しみにして貰えるのなら、作り甲斐もありますよー」
若干乾いた笑いが出たけれど、楽しみにしてくれるのは純粋に嬉しかった。
元々ハルルが文字通り山ほど食べるので、二人分が増えたところで手間は大して変わらないしね。
こうして騒がしくも愉快な一日が始まった。
この時はそう思っていた。
「そう言えば、私達は冒険者ギルドにどんな理由で呼ばれているんです?」
朝食をとりながら私は話を切りだす。
「あーその事なんだけどよ。理由はアタシらには話せないって言われたんだよ。なんかしたか?」
「何かしたって……。私達何か問題を起こすようなことしてないと思うんですけど。みんな何か心当たりある?」
私がスティレスさんの言葉に苦笑しつつ、みんなにも話を振ってみる。
みんなうーんと少し考える仕草をするけど、やっぱり思い当たるところはないようで、そろって首を振る。
「そうよね。みんな問題を起こすというより、私が見て来た限り、巻き込まれてるって感じだものね」
アミールさんもそう言って、首を傾げている。
「ふむ。行って話を聞くしかないじゃろうて。まだそんなに時間も経っておらんことを考えると、報酬の話ではあるまい? 突然今日の昼に来いと呼び出すのじゃから、それだけの事情があるんじゃろう」
サフィーアは腕を組みつつそう答える。
「だったらこの時間にここに訪ねて来たのは正解でしたね。私達、今日は朝食が終わったら買い物に出る予定をしていたので」
「あら、そうだったの? それは行き違いにならなくてよかったわ」
「アミールさんとスティレスさんは、私達が買い物に行っている間は、ギルドに戻るんですか?」
「いや、アタシらの今日の仕事は、みんなをギルドに連れて行くことだからな」
「良ければ買い物もご一緒していい? メノウちゃん」
「ついでに昼食もたのむ!」
遠慮がちに同行の許可を求めるアミールさんの横で、ニカッと満面の笑顔でそう言うスティレスさん。
「……ちょっとスティレス? 流石に図々しいわよ?」
大きなため息をつくアミールさんを、私はまあまあとなだめるのだった。
朝食と片付けを済ませ、いざみんなで買い物へ!
十人という大所帯での買い物だけど、もう何回も経験しているので、何も気にせずバザールへ向かう。
と、家から出て少し歩いたところで、
「気づいてる?」
と、リステルが小さく話し出した。
「ん」
「家に三、こちらに三ですね」
「素人じゃないわねー」
「向こうに私達が気づいたことは気取られてはいないから、もう少し様子を見るか」
表情を変えず、雰囲気もいつも通りの五人が、何やら怪しい会話を始めた。
「どうしたの?」
「瑪瑙。後でちゃんと説明するから、今は何も聞かなかった事にしてくれない?」
すぐに理由を話してくれると思っていた私は、予想外の返答に戸惑ってしまう。
「……わかった」
リステルからちょっとピリッとした空気を感じ、不安を覚えながらも頷いた。
こうして、私は何もわからないまま、水面下で事件が始まっていたのだった。
色々と買い物を済ませて、家に戻る。
いつもは楽しいはずの買い物だけど、今日はあまり楽しめなかった。
「それで? 何が起こってるの?」
キッチンでお茶をしながら、ルーリが話しを切り出した。
すると、リステルは人差し指を自分の口に当てた。
そして小声で、
「今は何も聞かないで、普段通りにしてて? お願い」
「……」
ルーリもその一言で黙ってしまう。
みんなの様子を見て、今何が起こっているのかを正確に理解しているのは、リステル、ハルル、コルトさん、シルヴァさん、カルハさんの五人だという事だけはわかった。
それと同時に、何もわからない自分に、苛立ちを覚えたのだった。
ルーリとサフィーアは少し不安そうな表情になり、アミールさんとスティレスさんは、悔しそうだった。
いつもだったら賑やかな昼食の時間も、今日は会話があまりなく、静かだった。
そして、冒険者ギルドへ向かうため、家を出る。
しばらくみんなで歩いていると、
「さて、アミールさんとスティレスさんには悪いんだけど、私とコルト、カルハはこれから別行動させてもらうね?」
と、リステルが突然言う。
「……本気なのね?」
アミールさんの問いかけに、静かに頷くリステル。
「そちらにはシルヴァとハルルを残していきます」
「それじゃあみんなまた後でねー」
コルトさんとカルハさんがそう言うと、三人は速足で、ギルドへ向かう方向とは別方向へ歩いて行った。
「では、私達は冒険者ギルドへ行くとしようか」
何事も無かったかのように、いつも通りの雰囲気のままシルヴァさんはそう言った。
「シルヴァ。こっち一人。あっちに二人行った」
「大丈夫だハルル。私も気づいている。私達がギルドに入る直前に捕縛できるか?」
「ん、まかせて」
こうして、いよいよ事態が大きく動くことになる。
――リステル視点――
昨日と今日で、気分が悪くなることが立て続けに起こっている。
昨日は、
あれはとても腹が立った。
あそこにいた人間のどれだけが、本当の事を知っているのやら。
少しルーリと話しただけでも、悪い噂を流されるような子じゃないって、容易にわかるはずなのに。
人だかりを作っていた連中は、揃いも揃ってルーリの事を見下したような視線をずっと送っていた。
そして今日。
朝、みんなで買い物へ出る直後から、家の様子を伺うように潜んでいる者が三人。
その後、私達の後を尾行している者が三人。
どれも潜み方、尾行の仕方から、素人じゃないのが分かった。
買い物から帰る時に一人増えたけど、こちらは多分別件だ。
それだけでも、みんなとの時間を邪魔されているようで、気分が悪くなる。
更に今、私の目の前で起こっている事には、もう我慢が出来そうになかった。
知らない人間が、大切なルーリの家に侵入しようとしているのだ。
見張りが二人、ドアに向かって鍵を開けようとしている者が一人。
私とコルトが見ていることに気づきもしないで、黙々と解錠を試みているのだろう。
私は怒りを抑えつつ、コルトと共に一瞬で物陰から飛び出し、見張りをしている二人を、音もたてずに沈黙させた。
「くそっ! これは普通の鍵じゃねえっ! バレちまうが壊して入るか……」
ドアに向かって悪態をつきながら、ガチャガチャと音を立てている者に歩み寄り、首筋に剣を押し付ける。
「もしそんな事をしたら、あなたの両腕、叩き斬るけど、それでも続ける?」
私の殺気を込めた声に、すぐさま持っていた道具を落とし、手を挙げる男。
「……ア、アンタらを監視していたやつらと、ここを見張っていた二人はどうした?」
震えた声で私に質問を投げかける男。
「あなた、自分が質問できる立場だと思ってるの? 質問するのは私で、答えるのがあなた。それ以外はあなたの命を縮めることになるだけだから、気をつけなさい」
「な、何が聞きたいんだ?」
「何が目的? あなた達が素人じゃなく、しかも、組織的に動いているのは聞かなくてもわかる。だから、目的を言え」
「……ま、魔導具の設計図を片っ端から盗って来いと言われた」
なるほど?
このタイミングでこんなことを起こすなんてことは、
「
「なんでそれをっ?!」
「……。私、言ったよね? 気をつけろって。それ以外はあなたの命を縮めることになるって。今すぐ仲間の所に送ってあげるっ!」
首筋に当てていた剣を大きく振りかぶり、男に向かって容赦なく振り下ろす。
「っひ!! 助け――がっ!!」
命乞いをする暇もなく、男は崩れ落ちた。
「お嬢様?
合図を送りながら、コルトが私に質問を投げかけた。
「うーん、隠してるつもりはなかったんだけど……」
少し言い淀んでいると、
「二人ともお待たせ―」
のほほーんとした声が聞こえて来た。
カルハと、その後ろにはもう一人、見知った顔が、鎧を着た人達を引き連れて歩いてくる。
「……殺してはいないようだな」
「流石にこんな街中で殺しはしませんよ、サルファーさん。そのためにカルハを詰め所に行かせたんですから。でも、サルファーさんが来るとは思っていませんでしたけどね」
私達は瑪瑙と別れた後、詰め所がある東門へ向けて、わざと人気の少ない入り組んだ通路を選び、移動した。
そこで私とコルトは尾行を撒き、ルーリの家付近まで戻って来て、様子を伺っていたのだ。
カルハは私達が尾行を撒いた瞬間に、尾行してきた人間を強襲、捕縛して、詰め所に事情を説明しに向かうという作戦だった。
「話を聞いた時、どれだけ驚いたと思っているんだ。カルハが捕縛した二人があっさり自供したから良かったものの、一つ間違えば、お前達が罪人になっていた可能性もあるんだぞ?」
「まあ少々強引だったことは認めますよ。ですがカルハは、相手がとぼけたり、言い逃れするのを許すような、温い人間じゃないんですよ」
コルトがそう言うと、
「成程な。道理で奴らが気が付いた時、酷く怯えていたわけだ。一体どんな恐怖体験をさせられたのやら」
サルファーさんが、苦虫でも噛み潰したような表情でカルハを見るが、
「ふふふー」
いつもと変わらないのほほーんとした笑顔を浮かべている。
「サルファーさん。私達はただ視線を感じただけなら、こんな強硬手段に出ることはないんですよ」
私はまっすぐ射抜くように、サルファーさんの目を見て話す。
「私達は、私達に向けられた害意を、一切の容赦なく叩き潰します。それは――」
「「「絶対に」」」
最後の一言は、私達三人同時に言葉を放った。
「っ……」
サルファーさんと警備隊の人達は、私達の言葉に気圧されたのか、表情が強張り、身動き一つしなくなった。
「さていい加減もう一人、舞台に出て来てもらいましょうか?」
コルトがため息交じりにそう言った。
そう、私達に向けられていた視線は、もう一つある。
買い物へ出た時にはなかった視線が、私達が買い物から帰る時には、一つ増えていた。
まるでこちらを監視しているような視線。
はっきりとわかっている事は、私達に害意を向けて来た連中とは、桁外れの腕前の持ち主だという事。
「サフロ。そこにいるんでしょう?」
コルトが視線を向けた先からゆっくり出てきたのは、王国騎士団三番隊隊長のサフロさん、その人だった。
流石に私はサフロさんだとまではわからなかったので、姿を現したのがサフロさんだったことに、驚いてしまった。
「サフロちゃんお久しぶりー」
のほほーんと手を振るカルハ。
「リステルさんには気づかれると思ってはいましたが、まさか守護騎士であるあなた達が一緒にいるとは思いもしませんでした……」
「サフロさん、どういった理由で私達を監視していたんですか? カーロールさんの護衛はどうしたんですか?」
うなだれてぼやいているサフロさんには悪いけど、話を進めさせてもらう。
「副隊長に任せていますよ。ちゃんと説明しますから、そのピリピリした気配を収めてください。流石に怖いです……」
両手を上げ、抵抗する意思がない事を私達に示すサフロさん。
今日は朝からカーロールさんとバザールへ買い物に来ていたそうだ。
バザールが一番活気づくのは朝。
特にフルールは恵みの街と呼ばれているだけに食材が豊で、バザールも、ハルモニカ王国で一番活気があると言われているだけに、カーロールさんは嬉々として買い物に繰り出した。
護衛をしない訳にもいかず、かといって、滅多に来ることが出来ないフルールのバザール。
サフロさん自身も護衛をしつつ、楽しんでいたそうだ。
そんな時に十人と言う大人数で買い物をしている人達を見かけた。
まあ、私達の事だ。
声をかけようかと悩んでいると、怪しい連中が私達を尾行している事に気づいた。
部下に監視を命じようか考えたが、私、瑪瑙、ルーリ、ハルルがいるから、下手な相手だとすぐにバレるだろうと思い、サフロさん自らが監視を始めたという。
「この様子だと、私が監視を始めた時点で、私の事はもうバレてたみたいですが……」
実際は、瑪瑙達は自分たちが尾行されているなんて、全く気付いてないんだけどね。
これは何かおかしいぞと思い、監視対象を私達から、家を監視している連中に移したそうだ。
「そこでのされている連中が、この家に侵入しようとしているのに気づいて、捕まえようと思った時に、リステルさんとコルト様が現れたわけです。正直な話、リステルさんの殺気が尋常じゃなかったので、そこの男を叩き斬って殺したのかと、焦りましたよ……」
「ああこの剣、訓練用の模造剣ですよ? 天覧試合で使ったやつです」
私は剣を鞘から抜き、刃に指を押し付けて、指に傷一つつかないと、みんなに見せた。
まあ正直な所、私の大切な場所でもあるルーリの家を汚そうとした奴らには、少なからず殺意はあったんだけど、黙っておこう。
「それより、
私がそう聞くと、若干気まずそうにサフロさんは、
「
と、話した。
「お嬢様。とりあえず冒険者ギルドに向かいませんか? 道中、ルーリの事でお聞きしたいこともありますので……」
「ごめんコルト。今回のゴタゴタの原因を私は知ってると思うんだけど、私からはあまり言いたくないの。だから悪いんだけど、ルーリに直接聞いてもらえる?」
「はあ、わかりました。では早速冒険者ギルドへ向かいましょう。サルファーさんはどうしますか?」
大きなため息をついたコルト。
「私も行くぞ。部下を三名冒険者ギルドに向かわせてもいるからな。それに私も何が起こっているのかちゃんと知っておきたい」
「あのっ! 私も一緒に行っていいですか? 私も何が起こっているのか、ちゃんと知っておきたいんです!」
サルファーさんが私達に同行する旨を伝えると、サフロさんも声を上げた。
「あー……。サフロさんはカーロールさんを連れて来てもらっていいですか? カーロールさんにも関係あると思うので」
「わかりました。急いで連れてきますので、冒険者ギルドには話を通しておいてください」
そう言うと、サフロさんは急いでこの場から去って行った。
「では、四名は残ってここの監視と警備にあたれ! 残りはこいつらを連行して話を聞き出せ!」
サルファーさんの大きな号令がかかると、警備隊の人たちは、各自自分の役割を果たすべく行動を開始する。
「では、行くとしよう」
その様子をある程度見届けて、サルファーさんは私達にそう言った。
そして、私達は冒険者ギルドへ向かうのであった。
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