依頼
「コホン。失礼しました。お前たちは、拘束されている連中を連行。馬車にいる少女たちも保護しろ!」
「了解!」
咳ばらいをして、部下と思われる女性達に指示を出すリンネさん。
「サフィーア様はどうなさいますか?」
リンネさんがサフィーアさんに聞く。
「む……。改めてきちんと礼を言いたいのだがな、今はまともに体が動かんのじゃ。少々魔力を使いすぎてしまってな」
そう言って座り込んだままのサフィーアさん。
「それは大変ですね。エメラーダ様もまだ目を覚ましませんので、今日の所は、我々が保護するという形でよろしいでしょうか?」
「そうしようかの。少々待ってくれ。えーっと、メノウ……であっておるかの?」
急に私に話しかけてくるサフィーアさん。
「あ、はい。あってます」
「少しこちらに来てくれんか?」
「はい?」
手招きをするサフィーアさんの傍まで行くと、手を握られた。
(返事をせずに聞くのじゃ。
急に頭の中に声が響いて、一瞬ビクっとしたけど、言われた通りに握られた手に力を込めて、ぎゅっと握り返した。
「お前さん達は、どこの宿に泊まっているのじゃ?」
サフィーアさんは今度は普通に声に出して、喋りかけてくる。
「確か、タルフリーンで一番高い宿だって聞いています」
「あ、要人が泊まる宿ですね。では朝に、迎えを出してもよろしいでしょうか? 詳しくお話をお聞きしたいので」
リンネさんが話に入ってくる。
「わかりました。それでは宿でお待ちしています」
リステルがそう言うと、リンネさん達は、サフィーアさんとエメラーダさんを抱きかかえて去っていった。
それと同時に、幼い少女たちも一人を残して去っていった。
「……ねぇ。誰か馬車までの道ってわかる?」
リステルが言う。
「……わからないわね」
「ハルルもわからない」
ルーリもハルルもわからない。
勿論、私もわからない。
ここまで、声が伝わってくる方向に無我夢中で走って来たので、帰りの事を考えていなかった。
私達は、うーんと頭を悩ませていると、残っていた幼い少女が話しかけてきた。
「スピルネと申します。サフィーア様より皆様の側にいるよう命じられました。この度は、サフィーア様とエメラーダを助けていただき、ありがとうございます」
無表情に、無機質な喋り方で、頭を下げるスピルネさん。
「あのー。サフィーアさんに命じられたってどういうことですか?」
「皆様は恐らく、この場所から大通りへの帰り道を知らないだろうと、サフィーア様は仰っていました。なので、道案内をして欲しいと」
それはありがたい申し出だった。
私達はほっと胸をなでおろし、
「お願いしてもいいですか?」
と、スピルネさんにお願いした。
「お任せください。それと、お願いなのですが、私も同じ宿で、宿泊させていただいてもよろしいでしょうか?」
「それは構いませんが、どうしてですか?」
ルーリが聞き返す。
「先ほども言いましたが、皆様の側にいるようにとのサフィーア様からの命もあるのですが、今タルフリーンでは、人攫いが増えているのです。なので、皆様の側にいて、私自身の安全を確保するようにとも言われているのです」
「つまり、案内をする代わりに、面倒を見てもらえと?」
リステルが言うと、
「有り体に言ってしまえばそうなります」
「どういうこと?」
ハルルが首をかしげて聞いてくる。
「んーと。私達は案内をしてくれる人が必要だから、スピルネさんを残していったけど、人攫いが増えていて、一人で行動させるのは危険だから、私達と一緒にいるようにって言われたんだって。わかった?」
ルーリがハルルのためにわかりやすく答える。
「ん!」
と、ハルルは頷く。
「それから、皆様に、
あれ?
それはサフィーアさんから
何故知っているのだろう?
「もしかして、スピルネさんって
私は疑問に思ったので聞いてみる。
「はい。火を
そういってスピルネさんは歩き出しながら、話してくれた。
以前、コルトさんが教えてくれた
スピルネさんの体には、赤色の宝石があるらしく、火を司っているそうだ。
ちなみに、サフィーアさんは青色の宝石で水を司っていて、エメラーダさんは緑色の宝石、風を司っているらしい。
中には紫色と言った、火と水の複数の属性を司る者もいるのだとか。
この司っている宝石の色によって、使える『宝石魔法』の属性が変わるそうだ。
『宝石魔法』とは、
魔力で生み出した宝石を操作するのが主だそうで、攻撃より、防御に向いているのだとか。
そう言えば、サフィーアさんが青く光る壁に守られていたのも、あれも宝石魔法なのだろうか?
『
無口、無表情が
「それじゃぁ、瑪瑙が物凄く取り乱していたのって、サフィーアさんの焦った感情とかが伝わったせいなのかしら?」
ルーリが質問をする。
「恐らくは。実際、サフィーア様はかなり焦っておられました。だから私達は急ぎ、リンネを頼ったのです」
ただ、
元々の性格で、賑やかなのが苦手な者もいるらしく、そう言った者が、テインハレスを離れて、ここタルフリーンに移り住むという。
「私は、大勢の声が頭に響いて、酷い頭痛に襲われたんですけど、あれは一体なんだったんですか?」
「
ちなみに、スピルネさんも私と同じ症状を持っているらしく、テインハレスで生活できないので、タルフリーンに居を構えているそうだ。
そんな話をしている間に、大通りに出ることができ、馬車の止めてある場所にたどり着いた。
「みんな無事ですかっ!」
「急に後ろの馬車がいなくなってたから焦ったぞ!」
「まー、無事でなによりよー」
コルトさん達が慌てて駆け寄ってきた。
「ごめんなさい。心配をおかけしました」
私はそう言って頭を下げる。
「とりあえず宿に行こう。そこで事情を説明するよ」
リステルが馬車に乗るように促す。
「ハウエルさん、カチエルさん。我儘を聞いてもらってすみませんでした。ラウラさんとクルタさんもご迷惑をおかけしました」
御者の四人にも頭を下げる。
「お気になさらないでください。お願いを聞くのも、メイドの務めです」
ニッコリ笑顔で言ってくれたハウエルさんに、少しホッとする。
「ところで、そちらの少女はどうされたのですか?」
カチエルさんがスピルネさんの事を聞いてくる。
「
そう言って頭を下げる。
相変わらず、無表情で感情がこもってない平坦な口調だ。
「ちょっと事情があって、道案内した後、私達と一緒に来てもらうことになったんです」
ルーリが説明する。
「
クルタさんが聞いてくる。
そういえば、
「エメラ……? エメラーダのことですか?」
「おー! そうです! エメラーダです!」
嬉しそうにクルタさんが反応する。
エメラーダさんって確か、サフィーアさんの横で倒れていた人だよね……。
あの人大丈夫なのかな?
「先に宿いこ?」
ハルルが話を遮る。
「そうですね。クルタ、話しは宿についてからにしましょう。行きますよ」
ラウラさんがクルタさんを連れて、前の馬車に向かう。
「では後ほど」
コルトさん達も前の馬車に向かう。
私達と同じ馬車にスピルネさんも乗り込み、馬車は走り出した。
「――ふぅ」
私はため息をついて、背もたれにもたれる。
「瑪瑙お姉ちゃん大丈夫?」
ハルルが心配そうに手を握ってくる。
「うん。ありがとーハルル。みんなごめんね? 変なことに巻き込んじゃって……」
改めて、みんなに頭を下げる。
「声が聞こえたって言ってた時の焦りようは驚いたけどね。でも、瑪瑙のおかげで人助けができたんだから、問題ないよ!」
リステルが笑顔で答えてくれて、
「それにしても、
ルーリは首をかしげている。
「瑪瑙お姉ちゃんが実は
「瑪瑙の体に宝石なんて見た事ないよ? ルーリもハルルも見たことある?」
「無いわね」
「無い!」
「だよね? ちょっと今夜改めて、瑪瑙の全身チェックしてみる?」
ニコっと笑ってとんでもないことを言うリステルさん。
「もう! 何回も見てるでしょ!」
恥ずかしいし顔があっつい!
それにみんなも顔が赤くなってるよ!
リステルも自分で言っといて、何照れてるのよ!
「皆様はとても仲がよろしいのですね」
そんな私達をみたスピルネさんが無表情で言う。
……少しでも笑顔を浮かべてくれたら、肯定的なニュアンスで取れるんだけど、無表情で無感情なせいで、若干嫌味っぽく聞こえてしまう。
「そういえば、スピルネさんは、歳はおいくつなんですか?」
……しまった!
思わず聞いてしまった。
女性に年齢を聞くのは失礼だった。
女同士でも、嫌な人は嫌なのだ。
スピルネさんは見た感じ、ハルルよりちょっと幼く見えた。
光沢のある赤に近いピンク色の髪をしていて、とても可愛らしい感じだ。
無表情なのもあって、何ともお人形さんみたいな感じがしてしまったのだ。
「百二十六歳です」
無表情で答えられた。
「すみません。失礼なことをお聞きしました……」
「??
あ、きょとんとした顔をしたのはわかった。
それにしても、随分私達より年上のお姉さんだね。
すっごい違和感を感じてしまう。
「いえ、年上の方だとわかると、今のままの喋り方の方が喋りやすいですね」
私の返事に、
「そうですか」
そう答え得るスピルネさん。
むぅ。
無表情なせいで、少し調子が狂ってしまう。
そうこうしている間に、馬車は宿へ到着する。
宿泊の手続きをすませ、食事をとり、一同談話室に集合する。
「改めまして、皆さんにはご迷惑をおかけしました」
私が頭を下げ、今回の事を説明する。
ハウエルさんとカチエルさんは、私が頭の中に響く声の事をしっているので、サフィーアさんから口止めされていたけど、きちんと
もちろんスピルネさんに、みんなに教えることは話してある。
「なるほど。メノウがなぜ、その
コルトさんがそう言ってくれる。
「エメラは大丈夫なのでしょうか?」
クルタさんはお友達のエメラーダさんの事が心配みたいだ。
「少々お待ちください……」
そう言って、スピルネさんは目を瞑る。
しばらくしてから、
「大丈夫です。先ほどエメラーダは目を覚ましたようです」
「それが
シルヴァさんが聞いてくる。
「あれ? そう言えば、聞こえてませんね?」
「クルタさん。エメラーダから伝言です。"明日会いましょう"だそうです。それから、今のメノウ様は
「これってそんな効果があったんだ……」
胸元からペンダントを取りだす。
「私もテインハレスにいるときは、そのペンダントを使っていました。それが無いと、テインハレスでは頭が割れそうになるのです」
「私がテインハレスに行くとどうなるんでしょう……?」
「ペンダントをつけていないと、一瞬で気を失ってしまうでしょうね」
恐ろしいことをさらっと言う、スピルネさん。
(そのペンダントが肌に触れていない状態だと、こうして声が届いてしまうので、注意してくださいね)
頭にスピルネさんの声が響いてビクっとする。
「どうしたのー? メノウちゃん急にビクっとしてー」
カルハさんが私の様子に気づいて聞いてくる。
「あ、スピルネさんの声が頭に響いて、ペンダントが肌に触れていないと、声が届くから注意してって言われました」
ペンダントを胸にしまいながら答える。
「皆さんにはやむを得ず、
「わかりました。決して他言は致しません」
ハウエルさんが答えると、みんなは一様に頷く。
次の日の朝。
リンネさんの部下が馬車でやってきた。
私達は、御者をクルタさんとハウエルさんにお願いして、私とリステル、ルーリ、ハルル、それにスピルネさんの五人で、衛兵の詰め所について行くことになった。
タルフリーンには、
詰め所に着くと、サフィーアさんともう一人幼い少女が出迎えてくれた。
「わざわざ来てもらってすまんのう。本当はこちらから出向くのが礼儀なのじゃが、リンネも事情聴取という仕事があるからの」
そう言って頭を下げるサフィーアさん。
「いえ、気にしないでください。それよりも、体調の方は大丈夫ですか?」
そういえば、サフィーアさんって無表情じゃないんだよね。
今も笑顔で普通に話しているし。
喋り方は、王女様みたいだけど……。
「うむ。魔力の消耗しすぎだっただけだからの。一晩眠れば元通りじゃ。ほれエメラーダ。この者たちが、昨晩助けてくれたのじゃ」
「そうっすか! 私はエメラーダと言うっす! 助けてくださってありがとうございます!」
元気いっぱいに話している緑髪の少女は、昨日サフィーアさんの横で倒れていた人だったようだ。
「エメラ! 無事でよかった!」
エメラーダさんに飛びつくクルタさん。
そう言えば、エメラーダさんと友達って言ってたっけ。
「クルタ! 会うのは久しぶりっすね。 元気してたっすか? まさかタルフリーンに来ているとは思わなかったっす」
「元気してたっすよ! 攫われそうになったと聞いて、気が気じゃなかったっす! あだだだだだ! ハウエルストップ! お尻つねらないでください!」
「クルタ! 口調が戻ってますよ!」
ハウエルさんに怒られているクルタさん。
……。
もしかしてエメラーダさんの口調って、クルタさんの喋り方がうつったんじゃないだろうか?
確か、クルタさんのお友達の
エメラーダさんの口調は、砕けた喋り方をするクルタさんそっくりだった。
「ふむふむ。それでは皆さんは、逃げているサフィーア様を偶然見つけて、追いかけて行った結果、あの六人と遭遇したと言う事ですね?」
リンネさんの事情聴取は進む。
この話は、事前にスピルネさんが
「結局あの六人は何だったんですか?」
「人攫いなのは間違いないのですが、どうも雇われただけのようですね。攫った後の事は、知らないみたいです……。今回の事で、助かったのはサフィーア様とエメラーダ様の二人と、街の少女三名です」
苦虫を嚙み潰したような顔をするリンネさん。
「現在、少女七名と、
リンネさんが頭を下げてお礼を言う。
「瑪瑙が偶然見つけていなかったら、結構悲惨なことになっていたんだね」
リステルの言葉に、
「妾も攫われていただろうからのう。本当に良く助けに来てくれたものじゃ」
うんうんと頷くサフィーアさん。
「聴取はこれで終わりです。わざわざご足労いただき、ありがとうございました。ご協力感謝いたします」
リンネさんにそう言われて、聴取を終えた私達は衛兵詰め所から出た。
詰め所を出て、馬車へ戻ろうとした時に、
「お前さん達は、これから何か用でもあるのかの?」
と、サフィーアさんが聞いてきた。
「これと言った予定はありませんよ。元々タルフリーンで、クルタさんのお友達の
リステルが答えてくれる。
「メノウに渡したペンダントがあれば、テインハレスに来ても問題はないじゃろうが、安全を考えると来ない方が得策じゃの。ふむ……。妾の住まいが近くにある。そこへ行こう。礼もしたいが、話したいこともあるのでな」
そういうわけで、サフィーアさんのお宅へ行くことなった。
御者はハウエルさん。
その横にスピルネさんが座り、道案内をする。
馬車の中は、六人乗りだったんだけど、ハルルが私の膝に乗ることで、七人みんな乗り込んだ。
「クルタは美人になったっすねー。人間はあっという間に成長してしまうっすね」
エメラーダさんは、しみじみと話している。
やっぱり、スピルネさんに比べると、普通の幼い少女に見える。
「そう言うエメラは相変わらず可愛らしいままですね。……喋り方は、完全に昔の私の喋り方がうつってしまったままみたいですが」
あ、やっぱりエメラーダさんの喋り方は、クルタさんの喋り方がうつったせいなのね……。
「ほう。お前さんがエメラーダの友人じゃったか。エメラーダがいつの間にか変な喋り方をするようになったのもお前さんのせいじゃったとはな!」
サフィーアさんは、鈴を転がすような声で笑っている。
「うう。申し訳ありません……」
うなだれるクルタさん。
「かまわんかまわん! エメラーダも表情豊かに喋るようになったのだ。喜びこそすれ、咎めるようなことはせんよ」
「あの時はクルタも幼かったっすからね! あっという間に抜かれてしまったっすが!」
エメラーダさんは元気に笑う。
そんな賑やかな会話が続いていた時、コンコンっとノック音が響き、のぞき窓が開かれた。
「皆様、サフィーア様のお屋敷に到着いたしました」
スピルネさんがそう言った後、馬車が止まった。
お屋敷に入ると、
『お帰りなさいませ、サフィーア様』
と、メイド服を着た幼い少女達が十人程並んでサフィーアさんを出迎え、一斉に頭を下げた。
笑顔一つ浮かべていないその姿は、本当にお人形さんみたいだった。
「皆様、客室へ案内いたします」
スピルネさんが私達を先導する。
「スピルネは口数は多いのじゃが、まだまだ無表情なのが欠点でな。不快な思いはせなんだかの?」
サフィーアさんが苦笑し、話しかけてくる。
「少し戸惑いましたが、
「……精進いたします。客室へ到着いたしました。皆様どうぞ中へ」
そう言って、客室に入り席に着く。
すると、ささっと静かに飲み物が机に運ばれる。
「さて改めて、妾の名前はサフィーアと言う。タルフリーンとテインハレスを行き来し、主にタルフリーンで生活しておる
そう言って、深々とサフィーアさんとエメラーダさんが頭を下げる。
「咄嗟の出来事だったので、メノウと言う名前は覚えたのじゃが、三人の名前は聞きそびれてしまった。スピルネから名前は
そう言われたので、私達は一通り自己紹介をする。
ハウエルさんとクルタさんも自己紹介をした。
クルタさんが挨拶をしているときに、エメラーダさんが嬉しそうに手を振っていて、可愛らしかった。
「ふむ。メノウ達に聞きたいのじゃが、リンネが言っていた風竜殺しの英雄とはお前さん達のことであっているのかの?」
「合っていますよ。先日、首都ハルモニカで叙勲をされたばかりです」
そう言って、私達四人は緑竜勲章を取り出して見せた。
「噂は聞いていたが、本当に四人の少女だったとは。しかし、その英雄達が、妾達の窮地を救ってくれたというのだから、不思議なことじゃな……」
微笑みを浮かべながら話すサフィーアさん。
「この人たちの御者をしているのが、私の友達のクルタということも、何か運命を感じるっす!」
「そう言えば、サフィーアさんは、私達に何かお話したいことがあると言ってませんでしたっけ?」
私は馬車に乗る前にサフィーアさんが言っていたことを思い出した。
「うーむ。そうなのじゃがな。思ったよりお前さん達が若者なので、頼みづらいのじゃよ……」
困った顔を浮かべているサフィーアさん。
「サフィーア様。とりあえず話すだけ話してみる方が良くないっすか? 断られたら仕方ないってことで」
エメラーダさんがサフィーアさんの後押しをする。
「そうじゃの。エメラーダの言う通りじゃの……」
そう言って咳払いをして、
「攫われた者たちの救出を手伝って欲しいのじゃ」
おっと?
とんでもないことを言い出したぞ?
「衛兵であるリンネさんに任せてはおけないのでしょうか?」
ルーリが手を上げて発言をする。
「残念ながら、リンネ達は連れ去られた方向が昨晩でようやくわかった程度なのじゃ」
「その言い方だと、サフィーアさんは捕まっている場所を知っていると言っている感じなんですが?」
リステルが少し眉をひそめて聞き返す。
「正確な場所はわからんが、連れ去られた方向がわかったからの。あれから一晩かけて、仲間を向かわせて、おおよその場所は掴んだのじゃ」
サフィーアさんが言うには、東門から出て最初の宿場町のあたりから
ただ、このことをリンネさんに伝えることはできないらしい。
諜報活動などが容易に行えてしまい、悪用を考えるとキリがないらしい。
この能力がハルモニカ王国に知れ渡ると、利用しようとする輩が出てくることになり、命の危険も高くなる。
下手をすると昔のように、奴隷として扱われる可能性まで出てくるのだそうだ。
故に、今回の事は秘密裏に行動を起こしたいらしい。
ただ、
そんな時に、タイミングよく私達が現れ、連れ去られた方向もわかった。
そこで、私の
「でも、私は声は聞こえますが、こちらから呼びかけることはできませんよ?」
「うむ。わかっておる。そこで、妾もついて行こうと思っておるのじゃ」
「敵の人数もわからない。危険」
ハルルがはっきりと言う。
「人数はそう多くは無いと聞いている。目的は人身売買じゃ。オークションが数日後に開かれることになっておるらしい」
……相手の情報が筒抜けだった。
なんでも、
確かに、簡単に相手の情報は盗めてしまえるようだ。
「そのままの情報をリンネさんに伝えたらどうなんですか?」
私は疑問に思ったことをそのまま口にする。
「どちらにせよ、
複雑そうな顔を浮かべているサフィーアさん。
「無理を言っているのは承知しておる。だが、今ならまだ間に合うのじゃ。攫われた他の少女達も無事だそうじゃ。頼む。この通りじゃ」
そう言って、深く頭を下げるサフィーアさん。
……私達はどうしたらいいのだろうか?
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