君に逢いたい

どうでもいいことじゃないかとは言いきれない

歌詞の言い回しが嫌いだなんていかにもだから

音がよければいい僕はルフランの切れ味を気にしている


あじさいのグラデーションは黄緑からの空色が好き

ピンクや紫もいいけれどここいらの土では無理だと話す

なんでという質問はビニール傘越しの景色に流れた


ビジューは君のまわりのあらゆるところに存在していて

いつでも都合よく引き立て役に徹しているので

よぎるのはシャーデンフロイデとは真逆の思考


僕たちは素直じゃないとかそういう間柄でも

恋愛という性愛を飾ったまやかしでもないのだと

指先の月を食んでは確認しながら咽び合った


だいたいのことは理解できているという理想

それが大きな奢りであることさえも判ったうえで

僕は君を自分の骨すべてで囲い取りたいと願った


いつかの傘がうつくしい山荷葉ではないように

歪んだ愛情は綻びながら現実を突きつけてくる

つないだ指の感覚ももう熱を残してはいない


まぼろしい日日が次次と胸から溢れ出てしまう

謎が謎のまま招く望まぬディスイリュージョン


もうたくさんなんだよ

君に逢いたい





20210613

深夜の二時間作詩 第114回「君に逢いたい」で終わる作品

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