写真

気づけばカメラばかりを覗いていて

直接眺める時間が減った

写真もフィルタで加工していて

ありのままを残すことが減った


ぼくの脳裏はきみとさえ100%は共有できない

写真はそのうちのいくらかを引っ張り出せるものだから

視認してもらえるものだから

どうしても残しておきたくなるんだ

消えないように自分のためにも


ガラスを組んでいくような詩も

からだを震わせる音楽も

記録媒体があるのだから

写真も当然あっていい


その場にあった空気までは

そのとき抱いた感情までは

すべては具現化できないけれど

閉じ込められはしないけれども


結晶化した一瞬がいつまでも光っている

傷や記憶として抱え続けるものもある

分ち合いたい人がいるから

取っておきたいと願うんだろう

たとえ喜ばれないものだとしても


きみの写真も見せてほしい

いつか思い出を共有できたなら

一緒に写ることができたなら

ぼくは忘れないだろう





20210531

深夜の二時間作詩 第112回『写真』

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