Mother

母と呼ぶにはあまりに脆く

親と呼ぶにも不安定がすぎた

いつ気づいたのかは思い出せない

互いに歳を重ねたからだとは思う


地球上のあらゆる生けるものについてを

ちっぽけなわたしが知る術はないが

母についてなら自ずと感じるものがある

推量より断定に近いなにかが


母は母であるまえに人間であるという

長く生きてきた人間であるのだという

ただの肖像や偶像ではないのだという

その人生に気づかされることが増えた


やがてこの繋がりを失うときには

わたしはなにを思うのだろうな

母もわたしを思うだろうか

胸の深部まで光は届かぬだろうが


他人だけれど他人ではない

希少な関係性を引き継ぐ選択を

自分に見出せなかったことについては

悲観も後悔もないがやや寂しくはあるよ


カーネーションよりも赤い血で

永久につながれているこの関係は

なによりも尊いものだと思うよ

わたしのレーゾンデートル

母よ




20210509

深夜の二時間作詩 第109回『Mother』

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