第5話 自分のやるべきことがみつかりました

『愛に惑う魔道者』には隠し要素として後日談のエピソードがある。

いわゆるハッピーエンドのその先の物語が綴られているのだ。

それは完全クリアした人だけが見ることができるオマケイベントだ。

カゲナの後日談はヒロインはいつの間にか彼しか傍におらず、溺愛され、また彼女もカゲナに依存するようになっていくというだけの後日談。

この世界に来る前の彼女がクリアした時は、これはハッピーエンドなのか?と思っていた。

しかし今のミツカにとってはこの上ないほどのハッピーエンドだ。

なぜならそのカゲナの後日談にはミツカの話題が少しだけでてくる。

ミツカがヒロインに婚約者の座を譲ることを快諾した後、カゲナから別の形での契約を提案された。

カゲナにとってもミツカから得られる利益は捨てがたいものだった。

ミツカにとってもカゲナからの利益がなくなるのは大きな痛手になる。

二人の関係は完全なる利害の一致。

ただ互いに利益をえるだけのもの。

ミツカはその提案を承諾し、互いの利益の為だけにカゲナとの契約は続いていく。

その時ミツカがカゲナから提案された契約内容。

それはミツカのもとへカゲナの従者が婿入りするということだった。

彼女の本当の推しキャラであるカゲナのイケメン従者のケイトが。

イケメンでしっかりとキャラが作り込まれておりながら恋愛対象ではなかったケイトが。

イケメンでちゃんと名前もあってきちんとストーリーにたくさん登場するのに恋愛対象外キャラだったケイトが。

ミツカのもとに婿入りをする契約。

もちろんストーリーでは、それすらも政略結婚であり、ミツカからはケイトに対して一切の情はないのだが。

今のミツカにとっては違う。

これは好都合。

鴨が葱を背負ってきた状態。

このチャンスを掴まない手はない。

そのためにも、申し訳はないがヒロインには何が何でもカゲナとエンディングをむかえてもらいます。

ミツカは心に強い決意を宿し、ケイトを見つめて感嘆の息を漏らした。

けれどすぐにため息を吐いたように見せる。

そして静かに微笑んだ。

決してカゲナに自身の決意を悟られることがないように、あえて二人に一切の情をもたない『愛に惑う魔道者』のミツカを演じるために。





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