第3話 この世界についてゆっくりと把握しました

この世界に来てから体感だがおそらく3時間くらい経ったと思う。

時計はあるのだがちょうど壊れているらしく今のところ美しい飾りの役割しか果たしてくれない。

用意された着物に着替え、朝ごはんも食べて、屋敷の中や庭も周りを見ながら歩いて色んな人とも会話した。

時間がある程度経過したことでまた冷静さを取り戻したミツカの頭はこの世界と自分のことを少しずつ理解してきている。

まずこの世界で自分はミツカという名前の姫だということ。

ここが『愛に惑う魔道者』という乙女ゲームの中の世界だということ。

ただその乙女ゲームをプレイしたがミツカという名前は聞き覚えがあるがしっかりとはわからないということ。

それからゲームの世界に迷い込んだけれど最近主流の転生というわけじゃないこと。

これはなにか明確に証拠があるわけではないがなんとなくわかるという感覚だ。

転生したのではなくこの世界に迷い込んだことでミツカというキャラになってしまった。

おそらく自身はまだ生きていて元のいた世界では時間はほとんど経っていない。

そしてミツカになってしまった、といってもこの世界にいた今までのミツカが消えたわけでもない。

たぶんミツカという姫の存在はもともと霞や朧のようにぼんやりとしたもので泡沫のようにいつでも消えてしまいそうな危ういものだったんだろう。

自身がミツカになったことでミツカという存在が安定して確固たるものになった。

何故そんな風に思うのかはわからないが確かなことだと思う。

そして最後に自身はミツカに順応していること、元の世界のいろいろなことがこの世界のものに変換されているということ。

たとえば文字を書けばひらがなで“みつか”と書いてもこの世界のミツカの文字に変換される。

こちらの文字も日本語に変換されるので本も難なく読むことができる。

言語も最初はみんな日本語で喋っていると思ったけれどこの世界の言語は全て自動で翻訳されている。

相手の言葉はミツカにわかるように日本語に、ミツカの言葉は相手にわかるようにこちらの言語に翻訳される。

常識や礼儀もこちらの世界のものに変換されているので恥はある程度かかないだろう。

得意分野や好きな事も全てこちらの世界のものに変換されている。

乙女ゲームはこの世界にはないらしい。

ミツカは少しがっかりした。

乙女ゲームはこの世界の主流で貴族や王族も嗜むテーブルゲームに変換されミツカはそのテーブルゲームが得意となっている。

乙女ゲーム以外のゲームはあまり得意ではなかったが遊戯が得意ということで反映されたらしい。

遊んだことのないテーブルゲームのルールやコツが息をするのように簡単にわかるのは不思議な心地だと思った。

他にも元の世界の事はこちらの世界の事にほとんど代替されている。

つまりミツカにとって今のところ生きていくにあたって不便な事はないということが理解できていた。

何故ここに来てどうやって元の世界に帰るかなどは全くわかってはいないけれど、ミツカは姫なので衣食住は約束され生活に困ることはない。

楽観的かもしれないが当面の問題は解決していると言ってもいいだろう。





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