第12話 間話:勇者②

 そして1週間後、僕らは前と同じ馬車に乗り、城へと出向いた。

 城に着いて、少しするとある一人のメイドがやってきた。


「勇者御一行様、こちらでございます」


 そう言われて案内された所は地下だった。

 地下に入ってさらに奥に行くと、部屋がありそこから数人の気配がとれた。


「こちらの部屋にお入りください」


「分かった」


 そして僕らが部屋の中に入ると、執事のセバスの他に数人見知らぬ顔が見えた。


「その人たちが今回僕らと同行する人たちですか?」


「はい、そうです。右から順にこの調査団のリーダーのジョン、そして団員のべイン、ルーズ、エリトリアンでございます。今回の悪魔の世界の地形や植物などの調査の為の人員でございます。尚、一応彼らは自衛程度の戦闘力は持っていますので、彼らの心配はあまりせずとも宜しいかと」


「わかりました。それでは早速行きましょうか」


「そうですね。おい、ゲートの魔術を起動させろ」


 セバスは後ろにいた部下にそう言った後、地面に描いてあった術式が光出し、僕らの目の前に黒い穴みたいなものが出来上がった。


「それでは勇者御一行様、お気をつけて」


「はい、任せてください。絶対に帰ってきます」


 そう言って、僕ら勇者パーティと調査団の4人は悪魔の世界へと足を踏み入れた。



 ***



 そこは圧巻の一言だった。

 地面から植物、さらには空の色まで何もかもが違う。

 そうか、本当に僕らとは違う世界なんだ。

 まず初めに元の世界に戻れるようにポータルを設置する。

 なんでも、この世界から僕らの世界に戻るために使う魔力はあまり必要ないんだと。なので、この設置型ポータルでも事足りるんだとか。


「それでは早速調査を始める前に拠点を作りましょう。勇者パーティの皆様には護衛を頼みたい。貴方達の拠点も我々が作りますが故」


「わかりました、お任せください。拠点作りの方はお願いします」


 ジョンがそう言って行動を始め、他の3人も手を動かし始めた。

 僕らは周囲を警戒しながら拠点ができるのを待っていると、それはやってきた。


「ジョンさん!敵襲です!イリスとフィリスの後ろに隠れて!」


「わ、分かりました」


「ゴウ!カグヤ!敵性感知のスキルには三体感知している!ゴウは左を、カグヤは右を、僕は正面をやる!」


「おう!分かったぜ!」


「分かったわ!」


 やってきたのは、文献通りならば下級の悪魔だろう。

 こいつなら簡単に倒せる。


「おりゃあ!!」


 僕は聖剣グラジオンをその悪魔に向かって振り下ろした。


 ガキン!!


「な!?」


 しかし、そいつは両腕でクロスしながら防御したのだ。


「クソっ……ならばっ!」


 次に僕は聖剣に魔力を込めて、自分が持っているスキルのうちの一つを発動させた。


「エアスラッシュ!」


 風の魔術との合わせ技。使っているうちにスキルと化したその技を悪魔に叩き込んでやった。

 流石にこれは大丈夫だったのだろう、先ほどと同じように悪魔は防御の体制を取ったが、その腕ごと体を切り裂いた。


「ギ、ギャアアアアアッ!!!!」


 そいつの断末魔を聞いた後、体は灰となって消失した。


「こっちは片付けたぞ。ゴウ達は?」


「おう!今終わったところだ!」


「私はもう少しです!はっ!」


 最後にカグヤがトドメをさして戦闘は終わった。


「二人とも、お疲れ様。手応えはどんな感じだった?」


 僕は二人に質問をした。最初に答えたのはゴウだった。


「そうだな、強さで言ったらランク3くらいなんじゃねえか?俺はそう感じたぜ」


「私が思ったのは個体によって差はあるのかもしれないけど、下級の悪魔でもランク4相当のやつはいるかと思うよ」


「やっぱりそうか」


 ランク3の魔獣、いや悪魔。1対1だと多少手こずるが問題ないレベルか。


「分かった。それじゃあ戦闘が終わり次第、仲間の手助けに向かう方針で行こう」


「「了解」」


 そして僕たちは残ったみんなの元へ戻っていった。



 ***



《報告いたします、団長。下級悪魔まじゅう数体放った結果、強さでいうならば我らの兵団の末端レベルかと推測いたします》


《分かった。引き続き監視及び随時報告を頼む》


《了解》



 ***



 あの戦闘の後襲撃は何回かあったが、一体か、多くて二体程度だった。


「皆さん、拠点と夕食が完成しました。こちらに来て下さい」


「はい、分かりました」


 僕たちは彼らの場所に戻ると、そこにはいくつかのテントと、机に並べられている料理があった。

 なんでも、ジョンたちが拠点を作っている間に、なんとイリスとフィリスが夕食を作ったというのだ。


「私たちも助かりましたよ。まさかイリスさんとフィリスさんが料理作るなんて言い出した時は驚きましたけど。お二人とも、ありがとうございます」


 ジョンがお礼を言った後に他の3人も彼女らにお礼を言った。


「いいえ、私たちはできる事をしたまでですよ。護衛といっても、彼ら3人がやってくれたおかげでする必要がなくなっただけですし」


「そうですよ。それに、夕食を作っている途中でも守れるようにしていましたから」


 イリスは謙遜をし、それに乗っかるようにフィリスも言った。


「それでもですよ。ありがとうございます」


 ジョンはさらにお礼を言った後、ご飯にありつけた。

 こうして初日の夜は終わった。



 ***



 夜の護衛を交代しながら行い、次の日を迎えた。

 そして朝食を食べた後、ジョンが今日のスケジュールを言った。


「それでは早速行動を開始致しましょう。まずは私とルーズで調査をして、昼頃になってからベインとエリトリアンが調査をしましょう。その間の護衛も二つに分けて行って下さい。それでは準備が出来次第、調査を始めましょう」


 この世界にも太陽みたいなものが存在しているので、ある程度の時間はわかる。

 そして太陽が出始めてから少し経って、ジョンとルーズは調査のために動き出した。

 ジョンとルーズに護衛はゴウとフィリスの二人だ。

 バランスを考えて、ゴウとフィリス、僕とイリスとカグヤのグループで別れた。皆で話し合った結果こうなった。


 昼頃になってゴウ達が帰ってきた。そしてみんなで昼食を食べて後半組である僕たちは行動を開始した。


 そしてその間も護衛として周りを警戒していたが昨日とは違い、一体も下級悪魔が出なかった。

 そして何事もなく調査が終わり、2日目を終えた。


 そして3日目最終日、先に調査団には帰還用の設置ポータルに戻ってもらって、僕らは魔王討伐へと向かった。

 彼らには今日中に帰るように言って、そして僕らは魔王を倒すまで帰らないと伝言を頼んだ。


「よし、皆行くぞ!」


 こうして僕らは魔王の元に向かった。

 この後に起こることなんて何も知るわけでもなく、僕らは行ってしまったんだ。

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