第5話 悪魔の襲来と彼女の決意
次の日。
僕は学校に行った。
昨日のことがあったけど、僕は学校に行った。
教室の中に入ると、皆んなから睨むような、白い視線を浴びた。
特にクランからの視線が強く、殺意がいっぱいだった。
でも僕に噛み付いてこないと言うことは、実家の方で何かあったらしいと予想する。まあどうでもいいんだけど。
「イリス、おはよう」
「おはよう、アル。(よくこんな状況で来れたね)」
「(ああ、迷ったんだけどね。でも学校に来なかったら僕が犯人だって言ってるようなもんだと思ったから)」
イリスに挨拶をしたら小声で早速尋ねられた。
そして、こんな助言ももらった。
「(気をつけてね。さっき、アルくんが来る前に何か計画していた感じだから)」
「(了解。ありがと)」
朝にこんな会話があり、それから何事もなく昼を迎え、下校時間になった。
「アルくん、一緒に帰ろう」
「うん、いいよ」
そして、イリスと一緒に家に帰った。クラン達は何もして来なかった。
「ただいま」
「お帰りなさい」
僕は家に帰ったらすぐに自分の部屋に行った。
ここまでは何でもないいつものことだ。
唯一変わっていたところはクラスメイトの視線くらいだろうか。
そして、丁度夕方になり、夕日が出始めた時、それは起こった。
ドカァァァァァン!!!!
「うおっ!?また貴族街で爆発かよ。でも今度はかなり近いな」
昨日みたく、同じ方角から爆発音が鳴り響いた。
僕はまた昨日と同じかと思い、術式の開発を再開した。
「ただいま」
「あら、父さん。お帰りなさい」
お、丁度父さんも帰ってきたみたいだ。
今日はこれくらいにしようかな。
「アル!ご飯できたわよ!」
「はーい!今行く!」
そう言って、部屋を出て、階段を降りようとしたその時、
ドカァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!
僕の家の一階のところで爆発が起きた。
僕は突然の衝撃でバランスを崩した。それと同時に僕の家が崩壊し始め、僕はそこで頭に強い衝撃を受けて、意識を失った。
***
目が覚めると、目の前は瓦礫で埋め尽くされていた。
幸い、僕は瓦礫の下敷きになるようなことは無かった。
なぜなら、父さんが魔術を使って僕を守ってくれたからだ。
「父さん!母さん!」
僕に向かって手を伸ばしている父さんの元に駆けつけた。
すぐそばには母さんもいた。
2人は瓦礫の下敷きになっていた。
「父さん、母さん、今助けるから」
「無理だ。もう間に合わない。もうじき俺たちは死ぬ。早く逃げろ」
「そうよ。うっ……。私たちはもう長くは持たないわ。早く逃げなさい。ここら一帯が崩落する前に」
「やだよ!すぐに助けるから!」
「アル!!」
「っ!?」
「……わかってるだろう。この出血量じゃ、俺たちは助からない」
その言葉の通り、2人の周りには夥しい量の血があった。
それは赤黒くて、たくさんあって、一度見た光景に似ていた。
「……嫌だよ。父さん達と離れたくない」
「我儘を言うな。お前を助けるためにお前に魔術をかけたんだ。お前に生きていて欲しいから、助けたんだ。お前の夢は、っ……貴方様の夢はこんなところで終わっていいはずがないのです。前世でアリシア様とお考えなさっていたそれは、貴方様のその計画は、その夢は、その願いは、私たちの夢でもありました。だから生きてください。我々、異人種達のために」
「っ!?」
何故?何故それを知っている?何故僕が転生者だと、シン・ユグドラシルだと知っていた?
それに、計画って何?
「どういうこと?何故それを知っているの?それに計画って…」
「我々は、…うっ!、ゴホッ!、……貴方様が転生されるとアリシア様から聞いておりました。……その転生先をこの国の女王陛下がこの都市の人間に設定したとも。ですので、我々はその神聖樹にあった転生術式に干渉して、転生先を我々に移した、と言うわけです」
「……は?え?女王陛下?どう言うこと?」
「私たちはもう長くは持ちません。ですので手短に話します。……もうすぐここに悪魔がやってきます。その悪魔と戦ってください。きっと勝てないでしょうから。でもそれでいいのです。その悪魔と戦って、前世での勘を取り戻してください。そして、その悪魔と一緒に行ってください」
「……話の流れが全くわからない」
「ええ、でしょうね。ですが、もうすぐわかりますよ…アリシア様と出会えれば…ね」
「……僕はその来る悪魔と戦えばいいんだね?」
「……はい。それではよろしくお願いします。貴方様の父親に少しだけどなれてよかった。後の人生、自分の思うように生きてください……っ!」
そう言った後、父さんはすぐに息を引き取った。
母さんはまだ少し息があるようだ。
「……母さん、今までありがとう」
「……ふふっ、貴方様に母さんなんて呼ばれるのは、今更ですが恥ずかしいですね。……貴方様は立派な私たちの息子です。だから、頑張ってください」
そして、母さんも息を引き取った。
2人とも満足そうな笑みを浮かべて。
***
それから僕は、父さんと母さんを瓦礫から出して、火葬した。
そして、僕の部屋だったところからカバンを運よく見つけ、2人の骨をしまった。
どこかに、いや、この都市に今度埋めに来よう。多分2人にとってはそのほうが良さそうだ。
「……何から何まで分からない。でも、転生した理由はわかったね。まさか人為的にできるなんて」
「そうだよな。まさかできるなんてな。この悪魔さんもびっくりだぜ」
そう聞こえて、振り返ると、そこには悪魔がいた。
それは男で、かなり筋肉がついていて、そしてなんと言ってもこの世界では悪魔の代名詞でもある羽と角。しかも内包している魔力がものすごい。
その彼が空を飛びながら、僕を見下していた。
「へえ、お前がアリシア様が言っていた餓鬼だな。悪いけど、一緒に来てもらうぜ。そこにいた2人から話は聞いているだろ?」
「ええ、聞きましたとも。そして、抵抗してもいいとも」
「おうおう!威勢があっていいなあ!そんじゃあ俺と一緒に1000年のブランクを取り戻そうぜ!」
そう言ってすぐに悪魔は僕の方へと飛んできた。
「おらよっと!」
そして、シンプルな右ストレート。
僕はすぐに身体強化の魔術を自分に掛けて右に避けたが、目で追えるギリギリの速さだったため、反応が少し遅れ、彼の拳が左腕に少し掠った。しかし、彼の攻撃の威力が強すぎて、掠っただけで僕は吹っ飛んだ。
体が壁に当たる際に受け身をとって、ダメージを抑えられたが、彼のパンチの威力が凄すぎてかなり驚いている。
周りの建物は僕の家が崩壊した時に巻き込まれた形でほとんど壊れていた。
さらに残っていた建物は彼のパンチの余波と僕が吹っ飛んだせいでさらに壊れてしまった。
後で分かったことだが、この時周りの家には住民がいなかったらしい。
何ともいいタイミングで襲ってきたものだ。
「おらおら、次行くぜ?」
そう言った瞬間、僕の左にいた。
「オラっ!」
僕は条件反射で咄嗟にガードしたが、周りの瓦礫を巻き込んでまたもや吹っ飛んだ。
(腕が痺れてる…不味いな)
術式を使う際、手のひらですることが多いため、無詠唱を使う魔術師は腕がかなり大事だった。
なので、片腕でも使い辛くなるのはかなりキツかった。
「まだまだ続くぞ!どれだけ耐えれるかなっと!」
そう言って彼はすぐに僕に向かってきた。
一直線でこっちにきている。
移動場所が分かれば対処の仕様はある。
「
「うおっ!」
僕は土属性の初級魔術である
しかし僕は初級程度の魔術では彼を拘束できないのは分かっていた。
だから、通常使用する際の魔力量よりもかなり多めに込めて使った。
数値で表すと、約20倍。これは僕の魔力値が多いからこそできる力技だった。
よし、しっかりと捕まってくれたようだ。
これなら……
「ふん!」
彼が一息入れて全身に力を入れた瞬間、
嘘だろ。あの硬度は普通誰も解けないのに。
「この際だから教えてやるよ。俺の二つ名はアビリティ名と同じ、
「腕の麻痺、いやこれは触れたところへの部分的な麻痺の付与。それに
「おお、さすが1000年前の大英雄だな。すぐに分かるとは。でも分かったからと言ってどう対処する?言っておくけど、
「ちっ……魔術の効果が薄いと思ったら、威力減少もあるのか。とことん魔術師に対しては強いね。でも
「お?今のでも分かっちゃうのか。マジで凄えな。でもどうするんだ?お得意の魔術は効かねえよ?」
そう。彼の言う通り、魔術は恐らく、いや、効いても精々3割程度にまで抑えられるだろう。本当にこう言う相手は苦手だ。思わず舌打ちが出てしまった。どうすればいい?
「おっと、時間切れだ。考えすぎは良くないぜ?後でいくらでも答え合わせに付き合ってやるから今は寝な」
「……え?」
その次の瞬間、僕はまた意識を失った。
***
まただ。またあの爆発音。しかも家からかなり近い。
私はアルくんと一緒に帰った後、ずっと家にいた。
すると、昨日と同じように爆発音が聞こえた。
でも、さっきの爆発音はかなり近かった気がする。
丁度、方角的にはアルくんの家……。
「っ!?」
私は何か嫌な予感がして、家を飛び出した。
そして、アルくんの家に着いた時、そこには瓦礫しかなく、アルくんの姿はなかった。
「……っ!?う、嘘…」
その時、私の視界に何かが映った。
誰かが、アルくんを担いでどこかに行こうとしているのだ。
「……え?アルくん?」
「お?見つかってしまったようだ。まあいっか」
「ア、アルくんをどこに連れてくの!?」
「ん?まだお前は知る必要はない。いずれわかるぜ。『賢者』サマ」
「っ!?」
どうして!?どうして私のアビリティを知ってるの!?
「ど、どうして……!?」
「ん?だって、俺は悪魔だからな。だからこのように空を飛んでるってわけだ。分かったか?」
……悪魔?なんで?悪魔は遠い昔に滅んだはずじゃなかったの!?
「なんで!?滅んだはずなのに……」
「そんなこと、お前には知る必要はねえよ……。んじゃあな」
「ま、待って!アルくんを返して!」
私の声に振り向かず、悪魔は去っていった。
***
それからと言うもの、私はしばらくの間、悲しみに暮れていた。泣き続けた。
そして、街では私と同じように悪魔を見た人がいると噂されていていた。
悪魔。その単語を聞いて、街の人々は様々な反応に分かれた。
嘘だと一蹴する人。本当だと信じて恐怖する人。
でも、その人達は次第にとある噂が本当だと信じ始めた。
それは、勇者であるクランが広めた噂、いや、タチの悪いデマだ。
悪魔はアル・ローダスが呼び出したものだと。
その悪魔を使役して、この都市を破壊させたということだと。
そして、バレるかもしれないと思ったアルはその悪魔と一緒に逃げたということだと。
この噂はすぐに広がり、冒険者ギルドもアル・ローダスを指名手配犯とした。
勇者が言ったことなのだ。それは本当だと、人々は勝手に決めつけた。
しかも、カグヤに暴行したこともその噂に拍車をかけることとなった。
私は許せなかった。何も知らないくせに……
その時、私の中にある二つの欲望が生まれた。
アルくんを助けるということと、この街のアルくんの居場所を意図的に無くしたクランとその取り巻き達を絶望に叩き落とすということ。
おそらくクランは自分が何をしたのか分かっていない。昔からアルくんのことは敵視していたし、きっとアルくんの強さに無意識に嫉妬したのだろう。あいつ、そういうの鈍感だから。
だからアルくんのことは絶対に私が助ける。
時が来たら、クランを絶望に叩き落として、現実を見させてあげて、アルくんの居場所を作る。
もし連れ去られた場所でアルくんの居場所がもう作られていたら私は彼の元に行く。この国のことなんて知ったことじゃあない。
そして、アルくんを否定した奴ら全員も後悔させるんだ。
もう二度と離さないように。
そのために、私は努力する。
待っててね、アルくん。すぐに助けに行くから。
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