三度目の人生、悪魔と一緒に異世界計画
赤眼黒目
第1話 色褪せたプロローグ
「我、この地を見、聞き、知り、そして永久永劫護り賜う。我、この地を潤し、風を生み出し、命を育て、未来永劫繋ぎ賜う。我が身の血、肉、魔力の全てを注ぎ、ここに将来永劫残り続け賜う。我を用いてこの地を蘇らせろ。神聖樹化」
呪文が終わったと同時に、自分の体が変化を始めた。
体が、魔力が、意識が、その全てがどんどん薄くなっていく。
存在が薄くなっていく僕の周りにはガイルとアリシアしかいない。
彼らは僕にとって、唯一無二の親友だ。
「本当に消えちまうんだな……シン」
「ああ。今も少しずつ消えていくのを感じてるよ」
「まあこれはお前自身が決めたことだから何も言わねえけどよ。俺は悲しいぜ、親友をこんな早く無くすなんて」
「それについては本当に申し訳ないと思ってるよ。でも、しょうがないだろ?」
そう、これはしょうがない事なのだ。上司のあの姫がもっとマシだったらアリシアの人格が変わる事は無かったし、僕の命もここで散らすことなんて無かった。
「というかガイル、このことはあいつにはバレてないよね?」
「ああ、問題はない」
その時だった。僕が発動した神聖樹の魔術が最後の仕上げを始めたのだ。
僕の足元から少しずつ木に変わっていくのがわかる。
「アリシア」
「はい」
「今までありがとう」
「……はい」
アリシアは泣き始めた。
最初泣けなかった時に比べたらかなり良くなった。今の人格になってから感情が生まれたのは嬉しかった。
でも今の彼女は僕が今まで共に戦ってきた彼女とは違う。
元々あった彼女の人格は傷つき、心の深いところで眠っているんだと今の彼女が言っていた。
これから少しずつ治っていくといいんだけど、多分無理なんだろうな。
自分でも酷いと思うんだけど、これから彼女にはあいつではなく、僕からの任務、僕が考えた計画を代わりにやってもらうのだから。
「アリシア、ごめんな」
「気にしないでください。おそらく遂行しているうちに私の中にいる彼女も治ると思いますから」
「結局仕事をしてるから無理だと思うんだけど……」
「でも、あの屑からの命令じゃないので問題ありません」
「そう言うものなのかな?」
「はい。かなり変わってきます。なのでシン様はゆっくりとお休みください。私よりもシン様の方が負担は大きかったでしょう?」
「そんな事はないよ」
そう言っていると、もうすぐで僕が消えるという事が感じられた。
「僕はどうやらここまでみたいだ。ガイル、アリシア、じゃあね」
「おう、またな…………シン」
「今まで……ありが…とう…ございました……シン様」
そして、僕は消えて、僕がいたところに大きな一本の木が生えたのだった。
***
それから僕は神聖樹の中で悠久の時を過ごした。
と言っても1000年くらいだけどね。
エリはこの1000年くらいもの間、1年に1回は必ず僕のところに来てくれていた。
エリは長命種のエルフなのだ。それも平均寿命1200年の。
ガイルも一応長命種のドワーフだ。でもエリよりも少なく、僕が神聖樹になってから500年経った辺りで亡くなってしまった。
ちなみに僕は普通の人族。寿命は100年くらいと2人と比べてかなり少ない。
でもまあ、『転生』していたから、実際の寿命は分からない。
なぜ、寿命が分からないのか。
それは、この世界にある言い伝えによると、転生した者の寿命は長いとされている。
何でも遥か昔、人族の中で100年以上、いや、200年以上生きた者がいたとか何とか。それも数人。
調べてみると、それら全員が前世の記憶を持っていたという。
もちろん、その者たちはエルフなど、長命種とのハーフではない。
その当時はハーフは忌み嫌われていたからだ。今では違うけど。
だから、前世の記憶を持っている、ただそれだけで、寿命は長くなる。
理由はわからない。
そして、僕は1000年の間、何をしていたかというと、新しい魔術の開発に勤しんでいた。要は暇だった。
身体がないから何もできない。でも自分は神聖樹の言わば精神だから、神聖樹の魔力は使える。
しかし、1000年経ったある時、それは起こった。
神聖樹が成長しきったから、成長するまで必要だった精神である僕を必要としなくなったのだ。
そして、神聖樹は僕、シン・ユグドラシアルという存在を切り離し、どこかに飛ばした。
その日、神聖樹は光り輝いた。
これほどかと言うほどに。
そして僕の意識、魂は新しい体に入ったようだ。
ここまでが今覚えている前世での記憶だ。
新しい体に入って、意識が戻った時に最初に目にしたのは、知らない天井だった。
それと同時に、前世での出来事が先ほどの記憶と使っていた術式以外、何も思い出せなくなっていた。
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初投稿です。
何か至らない点や、改善した方がいい点などあったらください。
これからよろしくお願いします。
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