第33話 ダンジョン

 宿屋。

 四人は座った。

 大地の口が開く。


「明後日、街を出てダンジョンに向かう。武器を作る為、金属を採りに行く。魔王と戦うためには武器が必要だからな」


 翠が大地に質問した。


「日数はどのぐらいでしょうか?」

「街を出てからダンジョンの最下層まで一五日ほどだ。そうそう俺はダンジョン内ではサポートに徹するつもりだ」

「えっ」


 誰かの声がもれた。

 大地は三人に視線を向けた。


「翠たちは実戦を積み強くなってもらいたい。話は以上だ。各自支度をしてくれ」


 大地たちはそれぞれ支度を始めた。 


                  *** 


 大地たちは荷物を背負いダンジョンに入った。

 翠が先頭を歩きその後ろを琴音たちが歩く。

 襲い掛かる魔物を翠が拳で粉砕する。

 壁の隙間から風が吹く度に砂が舞う。

 砂の上を翠たちは歩き続けた。



 中層。

 魔法を使った。


「ライト」


 大地の掌から光の玉が浮かび上がり辺りを照らした。

 地面からは苔が生え濡れていた。

 翠たちは慎重に歩く。

 一時間が経過する。

 目の前に広がる水溜り。

 翠は気にせず踏み入れた。

 足から変な感触が伝わった。


「きゃっ」 


 翠は悲鳴を上げた。

 足はゼリーの様なものに掴まれていた。


「離して」


 翠は足を上げゼリーな様なものから逃れようとした。

 足は上がらなかった。


「翠さん。今、助けます」


 琴音は白音を召喚した。


「お願い」

「分かった」


 白音は笑い飛んでゼリーな様なものの横まで移動した。


「行くね」


 白音は風の刃を作り出す。

 風の刃はゼリーな様な物を切断した。

 ゼリーな様な物の掴んでいたものが翠から離れる。

 翠は足を上げ水溜りから距離を取った。

 ゼリーな様な物は消滅した。

 大地は魔法を発動した。


「クリーン」


 翠の服の汚れが取れてゆく。


 ……


 大地は翠に声をかけた。


「大丈夫か?」

 

 翠は振り向いた。


「はい。何とか」


 翠は前を向いた。

 翠たちは歩き出した。



 下層。


「広い……です」


 翠の口から声がもれた。

 翠たちの目の前には大空洞があった。

 大地は奥に緑色の鉱石を見つけ指した。


「たぶん、あれが俺が求めていた物だ」


 大地たちは緑色の鉱石に近づいた。

 

(間違いない)


 大地は荷物を地面に置きハンマーを取り出し後ろを向いた。


「採取する。翠たちは付近の魔物を頼む」

「それじゃあ、行ってくるね」


 リーンたちは移動した。

 大地は緑色の鉱石の採取に取り掛かった。

 翠たちの瞳に魔物が映る。

 翠は魔物を殴り吹き飛ばした。

 魔物は横向きに倒れた。

 翠は横を向く。

 大地は採取していた。


(大地の近くに魔物はいない)


 翠は前を向いた途端、地面が揺れた。


(地震?)


 地震の揺れが強くなる。


「「「きゃっ」」」


 翠、琴音、リーンは悲鳴を上げしゃがんだ。

 ジュバ。

 音が響く。

 大地たちは振り向き視線を向けた。

 大空洞から巨大生物が現れた。


(何あれ?)


 巨大生物は一〇本の触手を動かす。


(気持ち悪い)


 誰かが思った。

 翠、琴音、リーンに触手が襲い掛かる。


「はっ」


 琴音は弓矢を放った。

 触手に弓矢が当たり緑色の液体が出る。

 触手が後退してゆく。

 リーンが魔法を唱えた。


「ウイング」


 翠の背中から左右に翼が生えた。

 リーンは言った。


「すい、今なら翼で飛べるわ。巨大生物に攻撃して」

「分かりました」


 翠は巨大生物に低空飛行で接近する。

 触手をかわし翠は拳を放った。

 緑色の液体が飛び散る。

 翠にかかった。


(気持ち悪い……けど)


 翠の瞳が鋭くなり巨大生物を殴る。

 殴る。

 拳の跡が巨大生物に残る。

 翠の視界に触手が映る。

 翠は触手と巨大生物から距離を取った。

 翠の背後から迫る触手が二本。


「翠さん!」


 琴音は声と同時に弓矢を放った。

 弓矢が一本の触手を貫いた。

 もう一本の触手が翠に絡みついた。


「嫌、離れて!」


 力を入れた。

 触手は全く動かない。

 締め付ける。


「痛い」


 翠は触手の締め付けに耐えた。

 琴音は思う。


(翠さん。今、助けるね)


「白音、翠さんを助けてあげて」

「助けるだけで良いの? 私なら倒すこと出来るけど」

「本当?」

「本当よ。ちょっと体かりるけど良いよね」

「ええ、良いわ」


 白音は琴音の体内に入ってゆく。

 琴音が光り出す。


「意識かりるね」


 白音が言うと琴音の腕が動き出す。


(何か変な感じ。私じゃないみたい)


 琴音は思った。

 白音はリーンに言った。


「リーン。ウイング私にもかけて」

「分かった」


 リーンは魔法を使う。


「ウイング」


 琴音の背中から左右に翼が生えた。

 白音は翼を羽ばたき翠のもとに向かった。

 飛びながら絡みついている触手の根元に風の刃を放った。

 風の刃が触手の根元を切り裂く。

 翠は触手から脱出し琴音にお礼を言った。


「琴音先生、ありがとうございます」

「いや良いって。今は白音だよ。琴音に体ちょっと借りてるの。翠は下がっていて魔法使うから」


 翠は巨大生物と琴音から離れた。

 琴音は手のひらを巨大生物に向けた。

 緑色の渦を巻いた玉が出る。

 渦を巻いた玉は巨大生物に向かって行く。

 巨大生物のお腹付近で渦を巻いた玉は刃が纏う竜巻に変わって行く。

 巨大生物は切り裂かれ緑色の液体が飛び散った。

 


 採取を終え大地たちは花の都フェアリーに戻った。

 


 

 

 



 

 

 

 

 

  

 


 

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