第31話 女神の愛

 琴音の体内から白い光が放出された。

 白い光が集まり琴音の姿に変わってゆく。

 白い光の琴音は琴音を見た。


「おはよう、琴音。私、精霊琴音よろしくね」


 ローズが笑う。


「精霊召喚成功だ。よくやったな。ことね、精霊に名前を付けてやると良いぜ。同じ名じゃ不便だろ」

「そうですね」


 ……

 

 琴音は精霊琴音に視線を向けた。


「貴女の名前、白音でどうですか?」

「白音か。……うん、白音で良いよ」

 

 白音は笑い円を描くように飛んだ。

 ローズの口が開く。


「明日、街の外の平原に行くよ」

「分かりました」


 琴音は返事をした。



 日が沈み琴音は宿屋に戻った。

 琴音は扉を開けた。


「ただいま」


「「「おかえりなさい」」」


 琴音を翠、リーン、大地が出迎えた。

 琴音は部屋に入り扉を閉めた。

 全員椅子に座った。


「琴音先生。精霊はどうなりましたか?」

「呼び出せるようになったわ」


 琴音が翠の質問に答えた。

 大地は琴音の方へ向く。


「良かったな」


 琴音は笑った。


「はい」


 大地は思う。


(さて魔王と戦うためまずは三人の防具を手に入れるか)

 

 大地は翠とリーンを見た。


「翠、リーン。すまんが二人の特訓に暫く付き合えん。明日、出かける。魔王と戦うために必要な物を手に入れてくる」

 

(はあ)


 翠とリーンは下を向き心の中でため息を吐いた。


              ***

 

 日が明け大地は街の外で素材を集め出す。

 その間、翠たちは特訓し汗を流した。


 

 数日後。

 翠たちは夕飯を食べていた。

 翠、琴音、リーンは空席に視線がいく。


「「「はあ」」」


 三人はため息を吐いた。


(会いたい)


 翠、琴音、リーンは同時に同じ事を思った。

 ガタっと音が鳴る。

 先ほどまで居なかった美しい女性が空席に座っていた。


「ここが大地の席なのね」


 美しい声が翠たちの耳に入る。

 翠は尋ねた。


「貴女、誰ですか?」

「私は女神! ちょっと言いたい事があってね」


 女神は立ち上がった。

 翠たちは息を飲む。


 ……


「大地の事は忘れなさい」


 翠、琴音、リーンは立ち上がり女神を見る。


「「「嫌です」」」

 

「そう言うと思ったわ。大地の事は忘れるわ。私が貴女たちの記憶から消すの」


 女神が言い終わると同時に翠、琴音、リーンは立ち上がった。


「ふざけないで!」


 翠の声が部屋に響く。


「怒鳴らないでくれる」


 女神は笑った。 


「あはは。抵抗しない方が身のためよ」


 直感が危険だと翠たちに知らせる。

 翠の体が動く。

 翠は拳を放った。

 空を切った。

 拳を放った場所には女神は居なかった。



「無駄よ。住んでいる次元が違うもの」


 翠たちは振り向いた。

 女神が居た。

 琴音は大声を上げた。


「貴女は本当に女神なのですか? どうして記憶を消すなんて酷い事が出来るんですか?」


「ええ女神よ。愛する人にキスができないつらさが想像できる」


 女神は涙を流した。


「できないよね。どうして女神は好きな人間にキスしてはいけないの。どうして人間を恋人にしてはいけないの。だから私は私の好きな人と恋仲になる女が嫌い。そろそそ記憶消すね」


 女神は右手を翠たちに向けた。

 右手が光り出す。

 翠たちは目を閉じた。


 ……


 扉が開く。

 女神の瞳に大地が映った。

 光りが消えてゆく。


「残念。時間切れね。大地、魔王退治頑張ってね」


 女神は姿を消しこの場から居なくなった。

 琴音は大地に先程までの出来事を話した。


 

 日が暮れ大地たちは食事を取った。

 翠たちは大地の側で体を休めた。

 



  

 




 


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