第27話 悪夢と安らぎ

 翠、琴音、リーンは燃やされる。


 大地は翠、琴音、リーンと目が合った。


「「「    」」」


 炎の音で翠、琴音、リーンの声が大地には聞こえなかった。

 大地はここで目を覚ました。


(うっ。何だあの夢は)

 

 大地は起き上がった。

 汗で濡れた感触が伝わり下を向いた。


(濡れている。体を拭いて着替えるか)


 ベッド降り大地はタオルと着替えを持ち洗面所に向かった。

 大地は扉を開けた。

 洗面所に居た琴音の目が合った。

 大地の口が開く。


「悪いな、使用中か?」

「いえ、水飲み終わりましたから」


 琴音の視線が下を向く。

 大地の濡れたシャツが目に入った。


(汗ね。きっと。体、拭いてあげたい)


「良かったら体拭いてあげましょうか?」

 

 大地の脳裏に琴音が燃やされるシーンが過ぎる。

 大地に恐怖が襲う。

 大地は冷や汗を掻いた。

 大地は独りになるのが怖かった。

 

「お願いする」


 琴音は大地を見た。


(大地君。断ると思った。なにかあった? ……ううん、今は拭いてあげなきゃ)


「風呂から椅子取ってくるから待っていて」


 琴音は浴室に入って行った。


 

 琴音が持ってきた風呂椅子に大地は背を向け座った。


(大地君。すごい汗)


 琴音は大地の体をタオルで拭く。

 ゆっくりと時間が流れてゆく。


 

 琴音は大地の体を拭き終わり立ち上がった。

 大地は琴音の方を向く。


「ありがとう」


 大地の弱弱しい声が琴音の耳に入ってゆく。

 琴音は振り向いた。


「私は心配です。貴方の事が。ですので今日は側に居ます」

  

 大地は新しいシャツに着替えた。

  

 

 大地と琴音は同じベッドで横になった。

 琴音は微笑み大地に視線を送った。

 大地の右手を包むように琴音は両手で握った。


「おやすみなさい」


 大地は琴音の声と共に目を閉じた。

 先程まであった恐怖が嘘のように無くなっていた。

 大地は眠りについた。

 琴音も手を握ったまま眠りについた。



 大地は夢を見る。

 穏やかな日々を翠、琴音、リーンと暮らす夢。

 大地は翠、琴音、リーンの事を好きになっていた。



 

 

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