第18話 備え

 数週間前の水の都アクアは美しく人々の笑い声に溢れていた。

 現在の水の都アクアは笑い声が減り兵士が多く滞在している街になった。

 逃げ出した住民の家や国が買い取った家を兵士の住居にした。

 大地はというと食料を売ったお金と自身のお金で空き小屋を二つ購入した。

 小屋を一つ馬小屋に改築中であった。

 大地は改築が終わるまで馬車をサハラ国の王都の馬小屋に預けた。

 


 サハラ国から戻った大地は購入した小屋の掃除の手伝いをした。

 六畳ほど広さ四人で暮らすには狭い部屋。

 何もない部屋。

 翠がカーテンを取り付け、リーンが壁紙を貼り付け、大地と琴音が床を拭く。

 二人の距離が近づく。

 大地と琴音はお互いの手が見え動きを止めた。

 大地は顔を上げた。

 琴音と目が合った。

 顔が赤くなる二人。

 琴音が無意識に大地の手に触れた。


「琴音先生。何やっているんですか?」


 翠の声が聞こえ大地と琴音の鼓動が治まってゆく。


「あっ。ごめんなさい」


 琴音は手が触れている事に気づき、大地から手を離した。

 大地と琴音はお互いに距離を取った。

 顔を下に向け掃除を再開する。


 ……


 掃除が終わり四人は買い物に出かけた。


 ……


 布団や日常品を買い四人は小屋に戻り食事を済ませた。

 風呂に入り四人は眠りにつく。

 


 翌朝、翠、琴音、リーンは特訓を再開した。


              *** 


 翠たちが特訓を再開して一週間が過ぎた。

 改築が終わり小屋は馬小屋になった。

 大地はテレポートを使い馬車を馬小屋に運んだ。

 翠たちの様子を大地は見に行く。


 ……


 琴音は弓を引き矢を射る。

 矢が的に命中した。


「その調子だ」 


 大地は琴音を褒めた。

 琴音は振り向く。


(だいち君に褒められた……何かうれしい)


 琴音は自身の胸に触れた。

 呼吸を整え弓を引く。

 琴音は射る。

 的に命中。


「良いぞ、琴音。俺は翠とリーンを見に行く。その調子で頑張れ」


 琴音から笑みが零れた。

 大地は翠とリーンの様子を見に行った。


             ***


 翠はリーンと組手をしていた。

 大地は翠とリーンの動きを観察した。


(翠とリーン、動きが良いな)


 動く度に翠とリーンの胸が上下左右に揺れる。

 大地の瞳に翠とリーンの胸が映った。


(見ちゃいけない……)


 指輪が光るまで大地の視線は二人の胸に釘付けだった。

 大地の視線を翠とリーンは感じた。


(大地。おっぱい好きなのかな。……そうだ。あの服着てみようかな)

(だいちさん。おっぱい好きよね。今度あれ着て誘惑してみようかな)


 翠とリーンは同時に思った。

 


 夜になり大地は風呂に入った。

 翠とリーンはバニースーツへ着替える。


(翠さんとリーンさんには負けられない)


 琴音もバニースーツに着替える。

 バニースーツが胸に食い込んだ。


(これじゃあ、着れないわね)


 翠はリーンに視線を送る。


「リーン。ウエストが、がばがばで胸がきついです。新調できませんか?」

「私も駄目ね。新調より買った方が早いわ。ただブレーヌに行かないと買えないのよ」


「そうですか。残念です」


 翠とリーンと琴音はバニースーツを脱ぎ始めた。


「なぜバニースーツを?」

「誘惑かな」


 翠の質問にリーンは答えた。

 リーンは翠に視線を送る。

「すいは?」

「私も似た理由です」


 翠は琴音を見た。


「琴音先生も同じですか?」

「ええ、同じよ」


 三人は寝間着に着替えバニースーツを畳み袋に入れた。

 コンコンとノックの音が聞こえる。


「どうぞ」


 リーンの声と共に扉が開いた。

 寝間着姿の大地が部屋に入って来た。

 大地は座る。


「ちょっと良いか」


 翠たちは大地に体を向け座った。 


「魔王軍が攻めて来るのは三週間後になるだろう。各々、準備してくれ。明日に備えて寝る。おやすみ」


 大地は立ち上がり布団に入り眠りについた。


 

 

 


 


 

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