第17話 水の都へ

 大地は貴族の目の前に輝く牙と一〇万金貨をテーブルの上に置いた。


「うむ、じいや。この金貨を秤に置き問題なければ金庫に入れろ」

「畏まりました」


 執事はお辞儀をし一〇万金貨を秤に乗せた。


「どうやら本物のようです。金庫に入れてきます」


 執事は一〇万金貨を金庫へ運んだ。

 貴族の口が開く。


「冒険者よ、ご苦労だった。約束通り白い弓は譲る。持ってゆけ」


 大地は白い弓を手に入れ貴族の屋敷を後にした。


          ***


 宿屋で大地は琴音に白い弓を渡した。

 大地は話し出す。


「明日、ここを出る。水の都アクアに行き魔王軍などの情報を集める」


 大地はポケットから地図を出し地図を開く。


「西の大陸から一番近いのが水の都だ。魔王軍との戦闘が予想される」


 琴音は大地を見る


「私たちも戦うのでしょうか?」

「戦う事になる」

「そうですよね」


(私が強くなって翠さんを守らなきゃ)


「三人とも明日に備えて支度しろ。宿屋でなければ自由にして良いぞ」


 大地は立ち上がり部屋の隅で支度を始めた。


           ***

 

 大地たちは食料調達のためノースと言う村に立ち寄った。

 リーンは言う。


「だいちさん。今日は宿屋に泊まりません?」


 大地の視界に星が映った。


「そうだな、明日ノース村を出るとしよう。宿屋を探すか」


 大地たちは馬小屋に馬車を預け歩き出した。

 

 宿屋は。

 人里離れた場所にあった。

 年月が経過していた。

 

 大地が宿屋の扉を開けると花の香りがした。

 前歯が一本抜けたおばあさんが大地たちを出迎える。


「いらっしゃいませ。何部屋になりましょう?」

「一部屋、一泊」


 おばあさんが大地を見た。


「お一人銅貨五枚となりますのじゃ」


 大地が全員分支払うとおばあさんが部屋まで案内した。

 部屋に大地たちは入ってゆく。


「ごゆるりと」


 おばあさんは扉を閉めた。

 

「ふあ~」


 大地は欠伸をした。


「先に寝る」


 大地は布団に入り眠りについた。



 数分経過する。

 翠、琴音、リーンの顔は酔った様に顔が赤くなっていた。


「ふふふ。だいちさん、寝てる」


 リーンは大地と同じ布団に入る。


「えい」


 リーンは横向きになり大地の右腕に抱き着いた。

 翠は頬を膨らませる。


「ずるいです」 


 翠も大地と同じ布団に入り左腕に抱き着いた。


「大地……」


 翠とリーンは大地を見つめる。

 鼓動が速くなる。


(好き)


 翠とリーンは同時に思い唇が大地の頬に触れた。


(うらやましい)


 琴音はそう思った。


(何を考えているの、私)


 琴音は首を横に振る。

 誰も居ない布団に琴音は入った。

 三人は瞳を瞑る。

 夢を見た。

 大地とキスをする夢と大地が側から居なくなる夢を。

 


 翠、琴音、リーンは目を覚ました。

 それぞれ洗面所に向かい水で顔を洗う。

 琴音は大地の事が好きだと自覚する。

 大地の事を改めて好きである事を自覚した翠とリーン。

 


 大地と琴音たちは食料を大量に買い馬車に積みノースを後にした。


 


 

 

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