第13話 サンジャオ

 サンジャオ。

 上空から見ると三角形に見える王都。


 城があり王や貴族が住む地区。

 ロビンとカレンの石像が立つ商業地区。

 住民が住む地区。

 三つに分かれている。

 

 大地たちはサンジャオに到着した頃、魔王ダークの配下二人に国が一つ滅ぼされた。

 

 一人はアメンボが巨大化したような姿。

 もう一人は強大なツノがある二足歩行の獣。

 その配下二人は部下を連れ東へ向かった。


         ***


 宿屋。

 大地たちは部屋で寛いでいた。

 それは突然だった。

 リーンは座っていた大地に正面から抱き着いた。


「ねえ、だいちさん。私と一緒にお風呂入らない?」


 リーンの胸の感触と甘い匂いが大地に伝わる。

 鼓動が高鳴る大地。

 大地は翠と琴音と目が合った。

 二人は口が開いたまま固まっていた。

 高鳴る鼓動をを抑え大地はリーンに向けて言った。


「なぜ?」


 リーンの鼓動が大地へ伝わる。


「お礼。山賊から助けてもらった」


 ……


(お礼?)


 そう大地が思った時だった。

 固まっていた翠と琴音が動き出す。


「あの、リーンさん。お風呂って事は裸ですか?」


 翠の声が部屋に響く。

 リーンは振り向き平然と答えた。


「そうよ」


 翠はリーンに近づいた。


「駄目ですよ、そんなの。せめて水着きてください。それと……私も一緒に監視のため入ります」

 

 琴音は翠とリーンの会話に割り込んだ。


「翠さん、待ちなさい。監視というのなら私も入ります」


 翠とリーンは琴音に視線を向けた。


 ……


 大地は展開についていけなかった。


             ***


 扉の外から声が聞こえる。

 大地の鼓動が速くなった。

 大地は扉に背を向けて風呂椅子に座った。

 浴室の扉が開く。

 三人が浴室に入ってくる。

 琴音が扉を閉めた。

 音が聞こえ大地は下を向いた。

 リーンが大地に声をかけた。


「だいちさん。こっち向いてください。でないといたずらしちゃいますよ」


 ……


 大地はリーンたち方へ向き座った。

 三人の水着姿が瞳に映り大地の鼓動が大きくなる。

 大きくなる度に指輪が光り冷静さを保つ。


「三人とも似合っている」


 大地は口にした。

 何とも言えない空気が流れた。

 真っ先にリーンの口が開く。


「じゃあ、背中洗うね」


 翠の口が開く。


「待ってください。私も洗います」


 翠は琴音に視線を向けた。


「琴音先生は湯船でも浸かってください」

「そうね」


 琴音は湯船に浸かった。

 翠とリーンは大地の背後に回り背中を石けんの泡が付いた白い布で洗い始めた。

 翠とリーンを琴音は見守った。

 硬直する大地。


(琴音の視線が痛い)


 ……


「背中、洗い終わったよ。次、前洗うね」


 リーンの声が聞こえ大地は前を向き風呂椅子に座り直した。

 二人の顔が大地の瞳に映る。

 翠とリーンは顔が紅くなっていた。


「洗います」


 翠の声と共に翠とリーンの顔と胸が大地に近づく。

 大地の顔が紅くなる。


(近い)


 翠とリーンは大地の体を洗い始めた。

 二人の鼓動が速くなる。

 翠とリーンが動く度に大きな胸がプリンの様に揺れた。

 大地は視界に二人の胸が入らないようにやや上を向いた。

 翠とリーンの様子を見て琴音は思った。


(二人とも真剣)


 琴音は心に痛みを感じた。


(なにこれ? ……疎外感?)


 琴音は首を横に振る。


(ううん。そんなはずは)


 琴音は自身の胸に手が触れた。


(でも……)


 琴音の心に小さな穴が開いた。


「お湯かけます」


 翠は大地にお湯をかけた。 

 リーンは微笑む。


「ふふ。洗い終わったわ。だいちさん。私の体洗ってみる?」


 大地はどきっとした。

 翠の口が開く。


「リーンさん。お礼じゃなかったのですか?」


 リーンは微笑んだまま答えた。


「そうよ」


 リーンは大地を見つめる。


「だいちさん。今度、私の体、洗ってね」


 リーンは琴音と入れ替わるように湯船に浸かった。

 先に上がる大地。

 大地は寝間着に着替えベッドの上で瞳を閉じた。



 深夜。

 琴音は目を覚ました。


(眠れない)


 起き上がると琴音の視界に大地の寝顔が映った。

 琴音はどきどきした気持ちで満たされる。

 無意識に大地の側へ歩き出した。

 琴音の瞳が大地の唇を捕らえた。

 琴音は顔を大地の唇へ近づけた。

 少しでも動いたらキスができるところまで迫った。

 琴音の動きが止まった。

 琴音は自身の声が聴こえた。


(ねえキスしないの? 好きなんでしょ?)


 琴音は否定する。


(私は……)


 琴音自身の声が琴音を否定する。


(嘘はだめよ。私には分かるの。私だもの。今、キスして確かめると良いよ。自分の気持ち。じゃあ、またね)


 ……


 琴音は大地を見つめる。


 ……


 心の中で琴音は首を横に振った。


(できない。キスなんて)


 琴音の顔が大地からゆっくり離れてゆく。

 琴音はベッドに戻り瞳を閉じた。



 日が明け大地たちは神具の手がかりを探し出した。


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