第10話 山賊
テレポート先はブレーヌのキャロットだった。
大地はリーンに声をかけた。
「リーン。三人と更衣室に」
「そうね。こんな格好じゃ歩けないしとりあえず三人と更衣室に行って着替えてくる」
リーンは大地に視線を向けた。
真っ白な世界が広がる。
大地が背を向けていた。
リーンの鼓動が鳴る。
(会えなくなる。だいちさんと……何か言わなきゃ)
リーンの視界が晴れる。
「だいちさん。話したい事があるから着替え終わったらキャロット前で会いましょ」
「分かった。着替え終わったら三人とここで待っていてくれ。ただ、山賊のお頭倒してくるから遅くなる」
大地はリーンと三人の女性がキャロットに入るのを見送った後、山賊の住み家へ戻った。
***
「奴隷が居る方だ。急げ!」
声と共に近づく足音。
大地はゆっくりと歩き出す。
正面から近づいてくる山賊を殴る。
殴る。
殴る。
大地は次々に山賊たちを殴り倒し奥へ進む。
(山賊のお頭はどうするか。殺してしまうか)
大地から黒いものが湧き出た。
即座に否定する大地。
(駄目だな。殺しては)
大地から黒いものが消えた。
……
「おい! てめえだな。侵入者は」
巨大な斧を持った山賊の頭が大地の前に現れた。
大地は見上げた。
(やるか)
山賊の頭は笑う。
「俺とやるきか。チビが」
大地は山賊のお頭に近づく。
山賊のお頭の間合いに入った。
「くたばれ」
山賊のお頭は怒号を上げ巨大な斧を振り下ろした。
大地が山賊のお頭の視界から消えた。
巨大な斧は空を切り地面にめり込む。
背後から大地が現れ山賊の頭の背中に一撃を加えた。
激痛と共に山賊のお頭は片足の膝を地面についた。
振り向き山賊のお頭は大地を睨みつける。
「てめえ」
大地は無言で拳を放つ。
山賊のお頭は脳が揺れ倒れた。
……
(さて行くか)
大地は山賊の住み家を探索した。
***
リーンたちは着替え終わり大地を待っていた。
光りが現れる。
大地はリーンに話しかけた。
「待たせた」
大地の顔を見ると鼓動が速くなる、リーンは大地に恋をしていた。
「三人はキャロットで働く事になりました。私……」
リーンは心の中で深呼吸をした。
(すーはー)
夕日がリーンを照らす。
「私は貴方の側にいたい。一緒に連れ行って」
大地が言葉を発するまで数秒間があった。
リーンにはとても長く感じた。
直感がささやく、リーンを連れてゆけと、大地は自身の直感を信じる事にした。
「分かった。ただ俺の……旅の目的を知ってもなお、ついていきたいと言うのなら構わない」
リーンは両手で胸に触れた。
「旅の目的を聞いてからですね。ただ引き継ぎに三日ほどかかりますので待ってもらえますか?」
大地は返事をした。
「構わない」
……
大地は三人の女性に視線を向ける。
「お前たちはこれから自由に生きろ」
大地は三人の女性に命令した。
リーンに視線を向ける大地。
「リーン。魔法使うから魔法陣に入って」
「はい」
リーンは返事をし大地の命令通り魔法陣に入った。
大地も魔法陣に入り魔法を使った。
二人は光りに包まれ消えた。
三人の女性は大地とリーンを見送った後、キャロットに入った。
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