第8話 アルブル1

 夕暮れ。

 大地、翠、琴音は町アルブルに立ち寄った。

 


 宿屋。

 部屋に入ると大地たちは座った。


「ここは一週間滞在する予定だ。明日は町を見て回りながら買い出しだな。明後日

からトレーニング再開だ。今日は部屋の中なら自由にして良い。俺は少し休む」


 大地は翠と琴音に報告をしベッドで横になった。

 


 浴室。

 翠は独り湯船に浸かっていた。


(買い出しか。服、買いたい。あいつはどんな服が好きなのだろう)


 翠は首を振った。


(なんであいつの事を)


 翠は大地に助けてもらった事を思い出した。

 鼓動が速くなる。


(でもかっこ良かった)


 ……


(いけないいけない。意識してはだめ)


 翠はお湯を顔にかけた。



 翠と琴音眠りについた頃。

 大地は目を覚ました。

 部屋を出て鍵を閉め宿屋を出る。

 魔法陣を張り魔法を発動した。

 光りに包まれ大地は移動した。



 キャロットの裏側に光りと共に大地は現れた。

 大地は扉を開け裏からキャロットに入る。

 店内を歩く。

 大地は店長の部屋の前で立ち止まった。

 扉をノックする。


「どうぞ」

 部屋から声が聞こえ大地は扉を開け部屋に入った。


 机越しの椅子に座っているのはバニースーツを着たレジーナだった。

 レジーナは真剣な表情で大地を見る。


「大地。ここに来たということは」

「レジーナ。すまない。約束の期間、働かせる事ができない。翠と琴音は辞める」


 大地は頭を下げた。


「頭上げな」


 レジーナの声が聞こえ大地は頭を上げた。


「良いさ。うちで働く奴は何かしらの事情がある。二人の給料をやる」


 レジーナは鍵を使い机の引き戸を開けお金を取り出した。


 引き戸を閉め取り出したお金を机に置く。


「違約金、制服代を引いた金、銀貨一枚だ。バニースーツ一式はリーンに言って持っていきな」


 レジーナは笑う。


「お前は男だ。この先、翠と琴音は必要になるだろうよ。この時間ならリーンは更衣室だ。行きな」


「ありがとう。二人分の給料頂く」


 大地はレジーナからお金を受け取り部屋を出た。



 更衣室前。

 大地は声を出した。


「リーン居るか? レジーナがここにいると聞いたのだが」

「はーい。ちょっと待ってくださいね」


 更衣室から声が聞こえ大地は下がった。

 扉が開く。

 リーンの視界に大地が映る。


「大地さん。私に何かご用ですか?」


 大地は答えた。


「翠と琴音が辞める事になった。二人の制服頂けないか?」


 リーンは微笑む。


「ふふ。大地さんも男ですね。分かりました。二人の制服取ってきます。ここで待っていてください」


 リーンは扉を閉め更衣室の奥に行った。


 ……


 扉が開く。

 リーンが更衣室から出てきた。


「これが二人分のバニースーツ一式になります」


 リーンは大地に折りたたんだバニースーツ一式を二つ渡した。

 大地は受け取る。


「ありがとう。翠と琴音が世話になった」


 リーンは笑う。


「いえいえ。それじゃあ、またね。大地さん」


 大地は折りたたんだバニースーツ一式を布の袋に仕舞い、キャロットを後にした。



 大地は人目のつかない場所に移動する。

 魔法陣を張り魔法を発動した。



 宿屋に戻って来た大地は部屋に入り扉を閉めた。

 荷物を隅に置き翠と琴音が眠っているのを確認すると大地はベッドで眠りについた。


 

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