第7話 キャロット2

 キャロット。

 夜の部が始まるとウエイトレスはバニーガールとなった。

 お尻を振る者。

 胸元を見せる者。

 様々なバニーガールが居る中、翠と琴音はぎこちなかった。

 他のバニーガールと違い翠と琴音は名札の下に新人のシールが貼ってあった。

 翠と琴音の頬が赤い。


(恥ずかしいです)

(恥ずかしい)


 翠と琴音は恥ずかしさを我慢しながら働いた。


              ***


 一週間が過ぎ翠と琴音が仕事に慣れ始めた頃、大地は独りで鳥人を狩っていた。

 

 鳥人はで頭から脛まで羽毛が生え二足歩行で歩く鳥だ。

 大きさは人間の大人とだいたい同じである。


 大地が鳥人を狩り終わると女神の声が聴こえた。


『いつまでそんな雑魚狩っているの?』


 大地は瞑った。

 脳裏に女神の姿が見えた。

 女神は笑う。


『ふふふ。お金必要なのでしょう? 丁度そこから南に行くと洞窟を住み家にした山賊が居るからそこでお宝手に入るわ』


 女神は大地に向けて手を振った。


『貴方には期待しているのよ。じゃあまたね。愛してる』


 大地は瞳を開けた。

 悪寒が走る。


(急がないと。さっさと山賊の宝を手に入れてくるか)


 大地は山賊の住み家へ向かった。



 山賊の住み家入口。

 大地は入り口付近に魔法陣を張った。


(二人はそろそろ宿屋に着いた頃だな)


 大地は探知系の魔法を使った。

 瞳を閉じる大地。


(おかしい。宿屋に居ない)


 効果範囲を広げる。

 大地は二つの赤い点を見つけた。


(ここは……)


 直ぐ近くに白い点が見えた。

 大地は嫌な予感がした。


(まずいな。今すぐ行くべきだな)


「テレーポート」


 魔法を唱えると大地は光りに包まれた。


               *** 


 大地がテレーポートを唱える前。


 キャロット入口付近。

 仕事終え翠はいつも通り宿屋に行こうとしていた。

 琴音が翠に声をかけた。


「ねえ、翠さん。今がチャンスよ。私と一緒に逃げて奴隷解放の方法みつけましょ?」


 翠は答えない。



「痛いのは嫌じゃないの? 」


 翠に過ったのは初めて大地の命令を拒んだ時の痛みだった。

 翠は口にする。


「嫌です」


 琴音は翠に聞く。


「じゃあ、行きましょ。良い?」


 翠は思う。


(本当に逃げて大丈夫なの?)


 ……


「翠さん。このまま奴隷なのは嫌でしょ? お金なら多少ならあるから。きっと上手くいく」


 琴音に翠は視線を向ける。


(奴隷は嫌)


 そう思い翠は頷いた。


 琴音は翠の手を握る。


「行きましょ」


 翠と琴音は宿屋と反対側に歩き出した。

 


「へっへっへ」


 男は不気味に笑った。


(奴隷か。良いこと聞いたぜ)


 男は翠と琴音の後をつけた。


 

 翠と琴音は向かっている先は大地が泊まっている宿屋とは別の宿屋だった。

 すれ違う人が減ってゆく中、二人は歩く。

 二人を尾行仕手いた男は思う。


(そろそろ良いかな。楽しみだぜ)


 男の股間が膨れる。

 男は文字が記載された洋紙を胸ポケットから取り出す。


「スリープ」


 男の発言と共に洋紙が燃え魔法が発動した。

 翠と琴音に睡魔が襲う。


(急に眠気が)


 琴音はしゃがみ込んだ。


(眠い)


 翠も琴音とほぼ同時にしゃがみ込んだ。

 二人は横向き倒れ眠りについた。


(眠っているな)


 男は翠と琴音に近づき薄汚い小屋へ運び込んだ。

 


 男は翠と琴音の手足をローブで縛る。


(さて起こすか。反応がないと楽しめないからな)


 男は小屋に置いてあった目覚まし草を持ち出し翠の鼻へ近づけた。

 翠は目覚まし草の匂いで意識を徐々に取り戻す。

 翠の視界に小屋の内部がぼんやりと映る。


(ここは)


 男は目覚まし草を琴音にも嗅がせる。

 琴音も翠と同様意識を徐々に取り戻した。

 徐々に琴音の視界に男が映る。

 琴音は口にした。


「あなたは? それに……」


 木材の床や壁が見えた。

 男は笑う。


「へっへっへ。ここは街外れにある小屋だ。誰も助けに来ねえよ。おめえら奴隷なんだって」


 男は翠に近づきしゃがみ腰に忍ばさせていたナイフを取り出し翠の布の服を切り裂いた。


 翠の下着があらわになった。

 翠は男を睨んだ。

 男は翠へ視線を向け笑う。


「へっへっへ。怖い怖い。なかなか良いもの持っているじゃねえか」


 男は翠の胸を触ろうと左手を伸ばす。

 琴音は大声を出した。


「待ちなさい。その子には手を出さないで!」


 男は動きを止め琴音を見た。


「嫌だね。俺に命令するな」


 男は気が変わり左手を蒼髪へ伸ばし髪を掴んだ。

 引っ張り上半身を起こす。

 痛みが走る。


 翠は男へ視線を向けた。


「痛い。放して」


 男の顔が翠の顔に近づく。

 男は翠の頬を舐めた。

 翠は恐怖に襲われた。


(嫌。なんでこんな目に)


 男はささやいた。


「嫌だね」


 男の顔が翠から離れる。

 男は胸元へナイフを近づけた。


「この布も切るか邪魔だから」


 翠は恐怖で涙を流した。


(誰か助けて)


 白い光と共に大地が男の背後に現れた。


(うそ)


 翠は驚きが隠せない。

 男は翠の表情を見て振り向いた。 


「おまっ」


 男が言い終わる前に大地は近づき両腕を掴み力を入れた。


 男に激痛が走る。

 男の左手は蒼髪から離れた。

 痛みで右手が開きナイフが床に落ちる。

 大地は右手を離し男を殴った。

 脳が揺れ男は気を失った。

 大地は男を隅に運びローブで拘束した。

 翠と琴音の拘束を解く大地。

 翠と琴音は鼓動が速くなるのを感じた。

 三人は宿屋に向かった。

  


 宿屋。

 翠と琴音は着替え終わり大地の前に座った。

 大地も座り話し出す。


「翠と琴音が奴隷と知られこれから危険になる。この街、つまりブレーヌから出る。馬車を買いサハラ国に行く。馬車はサハラ国途中にある町アルブルに立ち寄り買う。一時間以内に翠と琴音は支度しろ。時間がない」


 翠と琴音は立ち上がり支度を始めた。



 

 


 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る