第6話 キャロット1

キャロット。

 人参の看板が目立つ店の前。

 翠と琴音は店の裏から入った。

 緑色でショートカットの女性リーンが翠と琴音に声をかけた。


「こんにちは。二人は今日から働く方よね?」


「「こんにちは。今日から働く事になりました。よろしくお願いいたします」」


「店長から聞いているわよ。私は副店長リーン。よろしくね」


 リーンは翠と琴音と握手した。


「二人とも店には慣れると思うわよ。……名前、聞いてなかったわね。教えれくれる?」


「私は翠と申します」

「私は琴音と申します。店長に挨拶したいのですがおられますか?」

「レジーナは夜の部から来ますので更衣室に行きましょう。レジーナは店長の名前ね」


 リーンが二人を更衣室の前まで案内する。


「店長からこれロッカーの鍵ね。夜の部の制服も入っているから間違わないでね」


 翠と琴音はリーンからロッカーの鍵を受け取った。


「そうそうロッカーにマニュアル書あるから読んでおいてね。挨拶などは覚えてね。三〇分ぐらいしたらまた迎えにくるからここにいてね。トイレはそこを右に曲がった所にあるから。じゃあね」


 リーンは笑顔で軽く右手を振り従業員専用のドアから出た。

 

 二人は更衣室に入りロッカーを開けた。

 二着の制服とマニュアル書が入っていた。

 翠は一着、手に取る。


(かわいい)


 翠が制服に懐いた第一印象だった。

 琴音も一着手に取る。


(これ……私が着るの。似合うと良いけど)


 翠と琴音は一度制服を戻し別の制服を手に取った。

 翠の表情が硬くなる。


(あいつ。これ知っていたの。はあ、男ってこういうのが好きなの)


 ……


 琴音は心の中でため息を吐いた。


(うーん。夜、着ないとだめなんだよね。お金が必要なのは……まあ……良いです。……はあ)


 翠と琴音はそっと制服をロッカーへ戻した。

 最初に手に取った制服に着替え始める翠と琴音。

 

                  ***


 ウエイトレスが歩く度に短いスカートから太ももが見え隠れする。

 翠と琴音はマニュアル通り動いた。

 時間が流れ客層が変わり女性客が減り男性客が増え始める。

 リーンが手を叩く。


「そろそろ時間。皆、夜の部の制服に着替えて」


 リーンが琴音に近づいた。


「琴音。レジーナは戻って来たから着替える前に翠を連れて挨拶してきて。レジーナは従業員専用扉から出て目の前にある扉を開けた部屋に居るから」


「分かりました」


 琴音は答え翠を連れて店長に挨拶へ向かった。

 

             ***


 ダークそれがこの世界の魔王の名であった。

 ダークはカマキリとアリを合わせたような姿をしていた。

 大きさは人の何倍もあった。

 魔王の他に女王と呼ばれる存在が居た。

 女王の役目は魔王と交尾し卵を産む事。

 死を迎えるまでに産む数は数百から数千個。

 女王が死ぬと新たな女王が生まれる。

 その繰り返し。

 魔王ダークと配下にとって人や獣は餌でしかなかった。


 

 

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