第5話 風呂

 獣や魔物の肉や皮などを大地は売り宿屋に向かって歩いていた。


(これからどうするか。そろそろ金稼がないとまずいな。結果を出さないと……)


 大地の脳に女神が映った。

 大地は寒気が走りブルリと震える。


(最悪。奴隷、植物人間の流れだな。強さとお金は必要だからな……)


 大地はここで思考を止めた。



 宿屋。

 翠と琴音は風呂に入っていた。

 琴音は泡が付いた布で体を洗い始めた。


「翠さん。どう? 辛くないですか?」

「辛くはないです。……ただ痛いのは嫌です」


 琴音は心から痛みを感じた。


「そう」


(そうよね。私も嫌だもの、痛いのは。早くなんとかしないと……だめね)



 ……


 琴音は頭を上げ首を横に振る。


(私まで暗くなってはだめ)


 桶にお湯を入れ琴音は泡を洗い流した。


(私に今できる事は……)


 琴音は翠の方へ体を向けた。


「翠さん。背中、洗ってあげたいの。こっちに来て」


 翠は湯船から上がり琴音に背を向けて座った。

 泡が付いた布を持ち翠の背中を洗う琴音。


(翠さんの背中、綺麗ね。大地君の魔法……私にできない)


 琴音が大地に懐いた感情は嫉妬だった。

 もう一つあった。


(大地君って何者なの。警戒はしないと)


 それは畏怖、琴音本人でも気付いていない。

 洗い終わるとお湯を琴音は翠に掛けた。


「翠さん。背中、綺麗になったわ」

「ありがとうございます。先生」


 翠は琴音にお礼を言った。


「どういたしまして。前は自分で洗って」


 琴音は立ち上がり湯船に浸かった。

 湯船に大きなものが二つ浮かぶ。

 翠は向きを変え座り直す。

 前を泡が付いた布で洗い始めた。


 ……


 琴音は立ち上がり翠に声をかけた。


「翠さん。先に上がりますね」


 琴音は浴室を後にした。


 翠は洗い終わり湯船に浸かった。

 琴音の同じように二つ浮かぶ。


「ふう」


 翠は息を吐いた。


(これからどうなるんだろう?)



 パジャマに着替え終わった二人は横に並んで大地の前に座った。


「二人には働いてもらう。仕事によっては制服が必要になる。サイズが知りたい。

それぞれ紙にサイズを明日の早朝までに書いてくれ。俺が書類と共に雇い主に渡す。明日の午前中はいつも通りトレーニングだ。ただ、俺は仕事先を見るける為、出かける。部屋から出なければ早朝まで自由時間だ。おやすみ」


 大地はベッドの上で眠りについた。

 翠と琴音は渋々紙にサイズを書いた。

 

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