第3話 特訓1

 早朝。

 翠と琴音はタフな格好で大地の前に座った。

 大地は翠と琴音に視線を向けた。


(まずは二人の能力を知らないと)


 左薬指にはめた指輪を使う。

 大地の指輪が青く光り出す。

 翠に視線を向けた。


(拳が得意と)


 続いて大地は琴音に視線を向けた。


(弓が得意と。さて始めるか)


「今日からフィジカルトレーニングを始める」

「まずは何を?」

「今日はストレッチ後、腕立てなどの筋トレだ。きついと思ったら止めて良い。

合図を送ったら始めろ。手を一回叩くのが合図だ」


 翠の質問に大地が答えた。


 ストレッチを終え翠と琴音は腕立ての姿勢になった。


「腕立てはじめ!」


 大地が合図を送った。


 翠と琴音は腕を曲げ始めると同時に胸が床に近づく。

 二人の胸はほぼ同時に床に着き変形する。

 腕を伸ばすと床から離れ胸の形が元に戻り始める。

 それを何度か繰り返した。

 


 一〇回が終わった。


(きつい)


 先に腕立てを止めたのは琴音だった。

 翠は一瞬琴音に視線を向けた。


(先生ではだめ。護ってくれない。自分が強くならないと)

 


 二〇回が終わった。


(疲れた。でももう少しなら)


 腕がぷるぷる震えた。

 大地の視界に入り翠を止めた。


「翠。止めて良いぞ」


 腕立てを止め仰向けに倒れた。

 琴音は翠に近づき手を伸ばす。


「凄いわ、翠さん。立てますか?」


 翠は琴音に視線を向けた。


「無理です。琴音先生」


 琴音は伸ばした手を引っ込めた。 


 大地は魔法を使う。


「クリーン」


 翠の衣服が一瞬で乾いた。

 続けて大地は琴音に同じ魔法を使った。


「クリーン」


 琴音の衣服が一瞬で乾く。

 二人は驚いた。

 

「クリーンは装備品を綺麗にする魔法だ。人などには効果がない。休憩後、朝食だ」

 

 大地は翠と琴音の体力回復を待った。

 


 朝食後。

 大地は二人を連れ公園に来た。


「ここで走り込みだ。公園の周りを二周。準備体操後、始める」


 大地が言い終わると翠と琴音は準備体操を始めた。

 大地は翠と琴音を観察した。


(翠の方が引き締まっているな)


 大地の視線が翠から琴音に移る。


(琴音は……)


 二の腕や太ももが揺れた。


(鍛えないとだめだな)


 大地は準備体操が終わるのを待った。



 準備運動が終わり三人は公園の出入口に移動した。

 大地は翠と琴音に視線を送る。


「合図を送ったらスタートだ」


 翠と琴音は頷いた。

 大地は手を叩く。

 パン。

 翠と琴音は走り出した。


 ……


 二人は角を曲がり大地の視界から消えた。


(さてやるか)


 大地は探知系の魔法を発動した。

 瞳を閉じる。

 二つの赤い点が脳裏に映し出された。


(他に人は)


 赤い点から離れた場所に白い点がいくつもでた。

 範囲を狭めた。

 離れた白い点が消えてゆく。


(これで良し)


 大地は白い点を観察していた。

 この世界の奴隷は物として扱われる。

 人に危害を加えた時より奴隷に危害を加えた時の方が罪が軽い。

 奴隷に危害を加える者も多い。

 その為大地は監視していた。



 二分二〇秒後。

 赤い点が一つ大地に近づいてきた。

 大地は目を開け横向きになった。

 翠が大地の前を通り過ぎた。

 三〇秒遅れで琴音が通り過ぎた。

 


 大地は目を閉じた。

 脳内に映ったのは翠と琴音の胸が上下にゆっくりと揺れるシーンだった。

 左小指の指輪が緑色に光り出す。

 大地は冷静さを取り戻し目を開け首を横に振った。


(何を考えているんだ俺は)


 ……


 大地は再び目を閉じた。

 今度は赤い点が映し出された。

 白い点も映し出され大地は監視した。



 二分後。

 翠がゴールした。

 翠は膝に手をつき肩で息をした。


「はあ、はあ」


 翠の服は汗で濡れていた。

 うっすらと下着が見える。

 大地は直ぐに魔法を使い翠の服を乾かした。



 三〇秒後。

 琴音がゴールした。

 琴音も翠と同じように肩で息をした。


「はあ、はあ。疲れました」


 魔法を使い大地は琴音の服を乾かした。

 服は乾き下着が見えなくなった。

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