第2話 女神
翌朝。
「俺の目的は翠と琴音と共に魔王を倒す事。で、二人とも女神にこの世界に召喚されたって事で良いんだな?」
「はい。私も翠さんも女神様に呼ばれて」
琴音が大地の質問に答えた。
「いくつか質問するが良いな?」
翠と琴音は頷く。
大地は質問する。
「女神が与えた神具はどうした?」
琴音が答える。
「二つとも売りました」
大地は売ったことは知っていた。
女神から聞かされていた。
大地に驚きはない。
続けて大地は質問した。
「なぜ売った?」
琴音は続けてはっきりと言った。
「大人として。教師として。危険な魔物と戦わせるわけにはいきません」
……
「二人の関係は教師と生徒でいいな?」
「はい」
「二人はこの世界で一ヶ月間何をしていた?」
「仕事をしてました」
琴音の返答を聞いた大地は思った。
(だから俺にあの女神は頼んだ訳か。神具は売り魔物すら戦わない二人の代わりに)
心の中で大地はため息をついた。
(はあ、面倒だがやるしかない。二人と共にというのは……女神の汚点を残さない為か。はあ)
……
大地は口にした。
「二人には俺が鍛えて強くなってもらう。金を稼ぎ神具を買い戻す。何か質問は?」
恐る恐る翠が手を上げた。
「お金を稼ぐ方法は魔物退治でしょうか? 買い戻すってことは神具のありかご存知なのですか?」
「魔物退治は俺がやる。翠と琴音には喫茶店が今のところ候補だ。神具についてはこれから調査だ。今日は買い物だ」
大地は翠と琴音を連れ洋服屋へ向かった。
***
天界。
(あー。腹が立つ。腹が立つ)
女神が片足を勢いよく下ろし地面を踏む。
地面がへこみヒールの跡が残った。
(何なの、あの二人。神具売るわ。魔王どころか魔物とも戦わないし。
見ていて不快よ)
脳裏に翠と琴音の姿が浮かび、胸が揺れた。
(それに何なの、あの胸は。私より大きいなんて許せない)
嫉妬深い女神の怒りは中々治まらなかった。
***
買い物を終え三人が向かったのは武器屋だった。
三人は武器屋に入った。
「いらっしゃいませ」
大地はテーブル越しに店員に声をかけた。
「連れの二人が売った武具を買いたいのだが?」
大地が尋ねると店員が困った表情になった。
「すでに売れてしまってここにはありませんよ」
大地は聞いた。
「そうか。勝った人の特徴教えてくれないか?」
「ただでは」
情報を渋る店員に金貨を一枚テーブルの大地は乗せた。
「この額でどうだ?」
「その額では……」
大地はさらに一枚乗せた。
「一枚追加だ。どうだ?」
店員は唾を飲み込んだ。
「……その額では……」
店員の言葉を聞いた瞬間、大地は金貨に手を伸ばす。
「そうか。他をあたるとしよう」
「分かりました。金貨二枚で構いません」
店員は話し出した。
「ターバンを被った男性でした。おそらくここから東のサハラ国の人でしょうね」
「そうか。サハラか……。ありがとう」
大地は礼を言い翠と琴音を連れて店を後にした。
もう一つの神具もすでに防具屋で買われていた。
夜。
「あの大地君。話があります」
大地に声をかけたのはパジャマを着た琴音だった。
大地は振り向いた。
「君付けはやめてくれないか。せめて、さん付けにしてくれ。話だったな。翠は寝ているし部屋の外で話すとしよう」
大地と琴音は部屋から出た。
琴音は立ったまま話し出した。
「あの私たちは魔物と戦う事になるんですよね?」
「そうだな」
大地が答えると琴音は大地の瞳を見る。
「私だけじゃだめですか? 魔物と戦うの。
翠さんを戦わせるのはやめて頂きたいです。
あの子は学生なんですよ本来なら楽しい時間を過ごしていたはずです」
大地は首を横に振った。
「無理だな。翠と琴音は魔王と戦う必要がある。これは女神が決めた事だ。俺の意思じゃない」
「意思じゃないって……」
琴音は言葉が続かなかった。
大地の口が開く。
「翠を戦わせないというのは女神をぶっ飛ばさない限り不可能だ。俺には無理だ。次元が違う。琴音、部屋に戻り寝ろ」
琴音は部屋に入った。
……
(女神……)
大地は天井を見上げた。
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