第1話 3人の異世界人

 奴隷契約。

 主と契約を結ぶことで主に逆らえなくなる魔法。

 その魔法を琴音と翠は売買が成立した直後、購入者によりかけられた。

 

 購入者は琴音と翠に布の服を着せ共に宿屋に向かった。

 

 宿屋一室。

 購入者は琴音と翠に向けて言った。


「二人とも座って良いぞ」


 二人は購入者が怖かった。

 大人しく床に横に並んで座った。

 購入者は荷物を置く。

 二人の前に座り購入者は質問した。


「俺の名前は大地。名前は?」


 翠は琴音を見た。

 琴音は頷く。

 翠から答えた。


「私は翠です」

「私は琴音です」


 二人の名前を聞いた瞬間に大地は思った。


(名前で分かるな、俺と同じ異世界人って)


 ……


 大地の口が動く。


「まずは翠、立って服を脱ぎ下着姿になるんだ」


 翠の顔が赤くなる。


「嫌です」


 翠は怒りで震えていた。

 翠のお腹が赤く光り出す。


「えっ」

 

 翠は驚き上着を捲った。

 おへその真上に紋章が浮かび出ていた。


「それは奴隷を示す紋章だな。主に逆らうと出る」


 大地は告げた。


 ……


「痛い。熱い」


 翠はお腹を両手で押さえ苦しみ出した。

 大地は言う。


「早く従った方が良い」


 翠は大地を睨んだ。


(っ。従わないといけないなんて……)


 翠のお腹の痛みが増す。


(痛い。痛い。痛い。痛いのは嫌)


 ……


 翠の瞳から涙が出る。


「従います」


 翠は意思を示すと痛みが和らいだ。


 ……


 翠はゆっくり服を脱ぎだした。


 琴音は翠に視線を向け小さな声で呟いた。


「翠さん」


 翠が下着姿になると傷やムチの跡が見えた。

 大地の左小指にはめた指輪が緑色光り出す。


(良し。彼女の姿を見ても何とも思わない。冷静なのは指輪のお陰だな)


 翠の頬が赤くなる。


「これで良い?」


 大地は立ち上り命令する。


「右側のベッドで仰向けになれ」


 ……


「わかりました」 


 翠はベッドの上で仰向けになった。

 それを見た大地は琴音に命令する。


「琴音と言ったな。俺が良いっていうまでは、その場から動くな良いな」

「はい……」


 琴音の返事を聞くと大地は翠の方へ歩き出した。



 翠は怯えていた。


(怖い。怖い)


 大地と目が合った。


(怖い)


 翠は目を瞑った。


「では治療する」


 大地は右手を翠のお腹へ伸ばした。

 右手が白色に光り出す。

 傷やムチの跡が徐々に小さくなる。

 翠は治療が終わるまで目を閉じていた。 

 


 治療を終え傷やムチの跡が無くなった。

 大地は命令した。


「治療は終わった。翠は琴音と代われ」

「はい」


 返事をすると翠はゆっくり目を開けた。

 自分の体が目に入った。


(うそ。治ってる。こいつ悪い奴じゃないの)



 琴音の治療後。


「二人とも風呂に入って良いぞ。その前に渡したいものがある」


 大地は布の袋をそれぞれ翠と琴音の前に一つずつ置いた。


「この中に翠と琴音の持ち物が入っている。好きなの着ろ。持っていって良い」


 二人は袋の中身を確認し必要な物を取り出し風呂に入った。

 翠と琴音は風呂に入っている間、終始無言だった。

 


 翠と琴音は風呂から上がりパジャマに着替え大地の前で座った。


「俺も風呂に入る。先に寝ていろ。二人で一つのベッドを使え。

トイレは自由に行って良い。部屋からは出るな、良いな」

 

 大地は着替えを持ち脱衣所に向かった。



 翠の口を開く。


「琴音先生。寝ましょう?」

「そうね」


 二人はベッドに入った。

 琴音は横向きになり口を開く。


「無事で良かった」


 翠は琴音に背を向けたまま言った。


「そう……ですね」


 翠と琴音に睡魔が襲い眠りについた。

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