ユニークスタイルマンズ

エリー.ファー

ユニークスタイルマンズ

 男がいる。

 一人いる。

 彼の名前はユニークスタイル。

 姓か名かは知らない。

 誰も知らない。

 忘れてしまった方がいい名前かもしれない。

 ユニークスタイル。


 七人殺して死刑にならなかったユニークスタイル。

 性別を知るものはいない。

 監禁した幼女が大人になるのが許せなくて、両足を切断したそうだ。

 切断すれば、少しずつその子の体を削れば、成長しないと思ったそうだ。

 ユニークスタイルは一人ではない。

 また現れる。


 四人の女性と二人の男性。

 計六人。

 二人一組にして、片方にもう片方の頭蓋骨にドリルで穴を空けるように指示したらしい。

 もちろん、生きたままの相手に向かってやるようにと。そんなことを言ったらしい。

 叫び声が聞こえても、頭蓋骨を削る音は低くて小さいから聞こえない。

 結局六人全員殺したユニークスタイル。

 彼のことを忘れようにも忘れられない。


 ユニークスタイルはニューヨークのボロアパートの一室に急に現れたらしい。

 父親も母親もいない。

 けれど。

 愛されていないことを知っている。

 殺しているのはたぶんコミュニケーションの一環で、死なない人がいるなら無限の命を持っている人がいるなら、きっと親友になれるだろう。

 殺す以外に他人に影響を与える術を持っていないからこういうことになる。

 でも。

 ユニークスタイルは困っていない。

 ユニークスタイルは怪我をしていないし、誰にも咎められたことがないし、悪いことだとも教えてもらっていない。


 ユニークスタイルのことを真似しようとする者が現れる。

 憧れたんだそうだ。

 すぐに消えてしまう。

 死ぬとか、殺されるとか、不幸になるとか。そんなことではない。

 消えてなくなる。

 ユニークスタイルの仕業だとみんな言っている。

 たぶん、事実だと思う。


 ユニークスタイルは夏場になると夜通し踊るようになる。

 足音と、風を切る音が響きだせば、ユニークスタイルは休業状態だ。

 誰も殺そうとしない。

 別に殺し以外で関わろうとしないユニークスタイル。

 いつも一人のユニークスタイル。


 ユニークスタイルのことをユニークマンと呼ぶ人がいる。

 意味は通じるからたぶん、問題はない。


 ユニークスタイルをユニークマンと呼ぶ人たちの中には、男だと思っている人がいる。

 おそらく、マンがついているからだ。

 ユニークだと思っている人はいない。

 殺してばかりだからだ。

 女性かもしれない。

 ユニークウーマンかもしれない。


 ユニークスタイルは歯止めをきかせられない。

 常にノンブレーキであるから問題ばかり引き起こす。

 子どもの頃からよくないことばかりしていたらしい。

 いずれ犯罪者になるだろうと思われていたそうだ。

 ユニークスタイルだって、ずっとそう思っていたに違いない。


 ユニークスタイルは服のブランドも立ち上げた。

 質の良いストリートファッションだそうだ。

 良いお値段だ。

 有名なモデルも来ていた。

 でも。

 そのモデルもユニークスタイルに殺された。


 ユニークスタイルが死んだ。

 そんな噂が駆け巡る。

 春のことだ。

 誰も平和になったなどと思わない。

 噂は噂であって、本当は生きているかもしれないのだ。

 町に人があふれかえる日はまだ遠いだろう。

 ユニークスタイルは、何を思っているのだろう。

 あぁ、本当に亡くなっていたら思うこともできないのか。


「ユニークスタイルとはなんだったのですか」

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