第2話 驚き

米大附属高等学校の校門の前には、道路を挟んで公園がある。


放課後、ハナコとミレイはそこへ向かった。


すると、ベンチで休んでいるブロンドで学ランのイケメンの姿があった。


「ガイ、こんなところにいたのね。」


「ミレイ!君も無事だったのか!」


ガイは再開の喜びのあまりミレイに抱きつこうとしたが、ミレイは涼しい顔で突き放した。


肩を落としたガイは、そばに立っているハナコに目が留まった。


「キミは今朝の――」


「ハナコです。よろしくお願いします。」


「ふ~ん。ハナコちゃんって言うんだ。よく見たら可愛いね。その艶やかな黒い髪、そして、綺麗にそろった前髪――」


ガイはハナコに近づき、ハナコのアゴを掴んだ。


急に距離を詰められたハナコはその手を払いのけ、反動で二歩後ろに下がった。


ハナコの顔には不快さが表れていた。


「な、なんなの急に………。」


「ふ。この俺様になびかないなんて。おもしれー女だ。」


ミレイはハナコに同情した。


「ハナコ、うちのバカがごめんね~。イケメンだろうと、初対面の人にいきなり迫られたら引くでしょうよ。」


「大丈夫。俺様の魅力は時間が経てばだんだん分かってくるはずだ。」


「うっせぇわ。そんなことよりこれからどうすんのよ。」


「ふ。決まってるだろ。この世界の女の子を俺様の虜に――」


「何バカなこと言ってるの。元の世界に戻る方法を探すんでしょ。」


「俺様は戻らなくても大丈夫だ。」


「だから!元の世界に――」


すると、ミレイのさっきまでの勢いが、だんだんと不安に変化した。


「――戻れなかったらどうしよう………。」


「そ………その時は――」


二人の話を聞いていたハナコが口を開いた。


「その時は、私の家に来てよ!」


「………いいの?」


「うん!うちのお父さんも許してくれると思う!」


「ありがとう!」


「………そういえば、二人ともこのあたりに来たのよね。何かヒントになるんじゃない?」


「なるほど………。もしかすると、この学校に何かヒントがあるかもしれないわ!」


ミレイの視線の先には、米大附属高等学校が仁王立ちしていた。


「決めた!私、米大高校に入る!」


「ええ!?」


「アンタも協力してよね。」


「ふ。俺様の魅力でこの学校中の女子を――」


「いや、そういうのいいから。」


こうして、ミレイとガイは米大高校に入学することにした。


また、二人が元の世界に戻れるまでハナコ宅で引き取ることについて、ハナコは両親に許可をとると、もちろんOKとのことだった。




あるある⑤ 同居生活




キーンコーンカーンコーン――


米大附属高等学校のチャイムが鳴り響く。


チャイムの大きな音とは対照的に、ハナコのクラスは静まり返っていた。


「さて、今日はみんなに編入生を紹介します。さあ、入って。」


ガラッ!


「失礼します。」


ブロンドの美女が黒板の前に現れ、教室はいっそう緊張感を増していた。


「今日からこの学校でお世話になります。ミレイと申します。よろしくお願いします。」


「それじゃ、ミレイさんはハナコさんと仲がいいそうなので、ハナコさんの隣の席に座ってください。ではホームルームは終わり。号令。」


クラス長が号令をかけ、休憩時間となった。


「………あの、ミレイさん?」


「何?」


「つかぬことを伺いますが………ガイくんはどうしたの?」


「ああ。」


ハナコはごくりとつばを飲み込む。


「編入試験で落ちたから来ないよ。あいつバカだから。」


「え!?」


「私のいた学校は転校生がやたら多かったから知らなかったなー。まさか試験があるとは。誰でも入学できるわけじゃなかったんだね。まあ、ガイは学校に来てないけど、この辺りで手がかりを探してもらってるから大丈夫だけどね。」


「………。」




あるある⑥ 転校生




学校のチャイムが昼休みを告げる。


「お昼だー!ハナコ、一緒にお弁当食べよう!」


「いいよ。」


「じゃあ、屋上行こ!」


「………え?」


「………え?」


「いや、屋上開いてないから。」


「………何で?」


「いや、危ないから。」


「………。」




あるある⑦ 屋上の開放




「あれ?」


「どうしたの?ミレイちゃん。」


「ハンカチ落としたかも。」


「え?じゃあ私のを――」


「これは生徒会の人たちに探してもらうしかないね。」


「………んー?」


「何か問題があったら生徒会の人たちに頼めば解決してくれるはず。」


「………いや、せめて先生に聞こうよ。しかも、ここの学校なら落とし物BOXがあるからそこにあるかも。」


「え!?生徒会は生徒の憧れで、キラキラしてて、いつも生徒の味方で――」


「そんな絵に描いたような正義のヒーローいないよ。生徒会は結構地味だよ?」


「………。」


結局、ミレイのハンカチはトイレの近くの落とし物BOXで見つかった。




あるある⑧ みんなの憧れ生徒会




「こっちの人はみんな髪が黒いわね。」


「そりゃあ………校則だからね。日本人だし。」


「私のいた学校だと髪の色がピンクとか緑とか赤とか白とか、もっとカラフルだったわ。私も金髪だし。」


「そういう人もたまにいるけど、少数だと思う。基本は黒ね。あとは栗色とか。」


「キャラの区別とか大変そう。」


「キャラの区別とかいうなし!」




あるある⑨ 髪の色がカラフル




「え?何?さっきから。漫画の話?」


「私のいた世界だと普通なの!屋上はいっつも開いててみんなでだべってるの!!生徒会はみんなの憧れの的なの!!」


「じゃあ、朝寝坊したときに食パンを口に咥えて走る人もいるわけ?」


「あーそれはない。」


「なんでよ!?この流れならあるんじゃないの!?」


「っていうか時間ないなら朝食抜いたらいいじゃない?パン咥えて走ってたら食べづらいし、息もしづらそうだし。」


「さっきまで漫画みたいな話してたやつに正論言われたくないわ!」




あるある⑩ いうほどパンは咥えて走らない




その後も学校中を回ったが、ガイとミレイが元の世界に戻る手がかりは見つからなかった。


学校が終わり、ハナコとミレイはハナコ宅に帰った。


玄関の扉を開け、靴を脱いで二人で二階に上がっていく。


ハナコの部屋の扉を開けると、机にノートパソコンを広げ、にらめっこしているガイの姿があった。


「おう、帰ったか。」


ガイはこちらに一瞥もせずに言った。


「あんた、変なことしてないでしょうね。」


ミレイは腕組みしながら言った。


「俺様は至って真剣だぜ。このサイトを見ろ。」


「え、まさか!?」

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