第521話 最終局面Ⅱ
「どうやら俺様は復活を遂げたようだな。今は最高の気分だ」
そう後ろから声が聞こえた瞬間だった。とてつもない邪気が放たれただけかと思えば、腹部と背中に強烈な痛みを感じた。まるで全ての骨が折られてしまったかのような衝撃――。
俺はゆっくりと目を開けると空を見上げていた。とは言っても空が視えるのは俺の視界で言うとほんの数センチ。一体どれほどの地中深くに落とされたのだろうか――。
「クソ……駄目だ」
起き上がろうとしても全身に力が入らない。一体どうなっているんだ。
俺は
「成程ね――。でもこのままだとマズいな。皆殺されてしまう」
すうと大きく深呼吸。そして「ウオオオオ!」と叫んだ。お陰様で全身バキバキに痛いが気合は十分のようで体は何とか動いた。自動回復もしている事もあり、疲労感は半端ないが体中の骨が再生しているのが分かる――。
「俺、これ8割方折られていたな」
そう思うと苦笑しかない。たった一撃の謎攻撃で同じZ級なのにここまでの重症を負わされるとは。まあ、斬撃でも銃でもなかったから、打撃なのは間違いないがパンチなのかキックなのかも分からん。速過ぎて見えなかったもんな。
――手を見ると驚く程震えていた。恐怖を感じているのだろうか?
いや、確かに恐怖は感じているがこれもある。
それは武者震いだ――。
圧倒的に戦闘値を離されているのに何故こうもワクワクするのだろうか。本当にいつから戦闘民族になったんだ俺。
「よし」
体力は完全回復だ。そりゃあ一分もあれば元通りになるな。
俺は早速
「悪い。待たせたな」
「そうこなくてはな」
「一撃で死ななかった事は褒めてやろう」
「そもそも俺は死なないって。気絶するけどな」
「確かにそうだったな――さて強くなってしまった俺様だが、どう戦おうと思っているのだ?」
と、
「再戦前に一つ質問いいか?」
「何でもいいぞ?」
「心臓押し潰されていたんだよな? 何で体は元通りになっている上に生き返ったんだ? そもそも一度死んでいるよな?」
「死んだ。しかしいけ好かない神と再び会う事になってな。あいつは好きでは無いが今回ばかり礼を言わんとな。体に関しては知らん。いけ好かない神が気を利かせてくれたんだろう」
「成程ね。それでやたらと強くなってきた訳か。やっぱり俺と似たような体験をしていたか――」
「そう言えば
「それは喜んでくれているのかな?」
「そんな風に見えるか?」
「まあ
「それで? ナリユキは俺様に勝てそうか?」
言葉とはとてつもなく恐ろしいものだ。自分が発言した通りに物事が進んでいく。
そして今の世界になって、全てが楽しいと思えるようになっていた。何より痛いとか嫌だったのに、チートスキルを手に入れたからこそ勝てて当たり前。痛みを感じないの当たり前。自動回復と自動再生当たり前になっていた。だからこそ痛みが新鮮だ。何度も再生と回復ができるのであれば、どれだけ痛くても立ち上がれるさ。一番痛いのは皆が悲しむ顔。何よりミクちゃんが悲しむ顔を想像するのが痛い。
だからハッキリ言わせてもらおう。
「勝てそう? 違うな。楽しんで勝つんだよ」
俺がそう言うと
「それでこそナリユキだ!」
と、
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