第519話 恐るべき天衣無縫Ⅴ

「我、魔族における最大の力を発揮せん。我が道を阻む者総て破壊の対象となる。6つの黒翼こくよくが生えし時、あらゆる黒を我の力とせん」


「ルシファーは黒か――黒ってめちゃくちゃありそうなんだけど」


 俺がそう言ったのも束の間。ルシファーの戦闘値は大幅にアップした。4,000も戦闘値がアップしたルシファー。その大幅な戦闘値のアップに黒龍ニゲルは顔をしかめていた。


「厄介な事をしてくれる」


「腕が疼くんだ。貴様に果たしてどれだけ私の技が通用するのか――」


「ほざけ!」


 黒龍ニゲルはそう言ってルシファーに斬りかかった。勿論、こちら側はルシファーだけではない。俺もデアもいる。あとはルシファーの共鳴シンパシーによる効果で俺達は一心同体となった。


 デアとルシファーが黒龍ニゲルからヘイトを貰っている間、俺は天を穿つ者エンデュアーにMPを込めていた。今までで一番強力な神撃天波しんげきてんはを撃つ為の準備だ。


 もちろん俺が天を穿つ者エンデュアーにMPを込めているのは黒龍ニゲルは気付いている。しかし、デアとルシファーの猛攻が激しく、俺に構っている暇は無く常に警戒をしているだけだった。


 共鳴シンパシーはコミュニケーションを一切取らずに互いに何を考えているのかを把握できるのが最大のメリット。そのメリットを生かして俺は期を待つ。


 あれから一分ほど。天を穿つ者エンデュアーにMPを込めることができたが、なかなか攻撃を仕掛けるチャンスがない。デアを攻略した黒龍ニゲルは、攻撃を避ける事と、たまに攻撃を仕掛ける事もできていた。一見、天衣無縫オーディンは最強そうに見えるが、実は慣れれば案外攻略しやすいので、戦闘センスが高いZ級であれば未来を捻じ曲げるスキルをこちら側が捻じ曲げるといった芸当が可能だ。


 勿論、黒龍ニゲルも戦闘センスは高いので、俺なんかよりずっと天衣無縫オーディンのスキル効果に慣れ、未来を捻じ曲げられている筈なのに、デアとルシファーの二人の相手をしている。


「貴方本当に化け物ね。どうやったらそれほど動けるのかしら?」


魔真王サタンを使ってこの有様とは末恐ろしい龍だ」


「ほざけ!」


 黒龍ニゲルはそう言って黒刀で二人を薙ぎ払った。二人は当然吹き飛んでしまったが、その距離は僅か10m程。大した飛距離を飛ばせた訳でもないし、黒龍ニゲルはぜえぜえと息を切らしている。神槍グングニルのスキル効果がここにきて効果を発揮している。


 よし今だ――! 


 黒龍ニゲルの真後ろに一気に移動した俺は、黒龍ニゲルの背中に銃口を当てた。


「な――!?」


「結構痛いかもよ? 神撃天波しんげきてんは!」


 俺はそう言ってトリガーを引いた。すると放たれた神撃天波しんげきてんは黒滅龍炎波ニゲル・ルインフラムヴァーグと同じくらいの破壊力と威力があった。当然ながら黒龍ニゲルの身体は一度消し飛んだ。


 そしてこれが一番の収穫かもしれない。黒龍ニゲルの自動再生がやたと遅い。デアはすかさず天衣無縫オーディンでアリシアに変身をした。そして、黒龍ニゲルの身体に触れるなり、ユニークスキル森羅万象アルカナを発動。バラバラになった体は腕や足は再生していない状態となり、文字通り無の状態になっていた。


「まさか――!?」


 そこからは俺達の攻撃の連続だった。まず無双神冥斬むそうしんめいざんを繰り出した。5秒間で5,000刀入れるという俺の刀系スキルで黒絶斬こくぜつざんと同じくらいの威力があるアクティブスキルだ。


 そしてルシファーの黒絶斬こくぜつざん以上のアクティブスキル。黒滅斬こくめつざん。これはどうやら黒絶斬こくぜつざんと何ら変わりは無い。しかし、MPの消費量が黒絶斬こくぜつざんの倍以上があり、その分相当な破壊力とスピードがあるとの事。実際に、黒滅斬こくめつざんを発動した時のルシファーのスピードは目で追う事はできなかったくらいだ。


 次は青龍リオさんは青撃龍水波リオ・アンタンスオーヴァーグという黒滅龍炎波ニゲル・ルインフラムヴァーグの水verのアクティブスキルを。アスモデウスさんは魔真王の破壊光サタン・ディストラクションを放ち、最後にミクちゃんが出現させた10m程の巨大な光の矢。狩猟女神アルテミスの弓が消滅しかけている黒龍ニゲルの身体を貫いた。


 黒龍ニゲルの身体は肉片となり、再生もせずにそのまま肉片となった。


「これで終ったのかな?」


森羅万象アルカナを使った状態でトドメを刺したから大丈夫なはずよ」


「流石にあれだけの攻撃を喰らったらな。それにミクちゃんの狩猟女神アルテミスの弓の効果は、闇の心を持つ者を消滅させる強力な弓を出現させて、敵を必ず仕留めるって効果だからな」


「初めて撃ったから実際にどんなものか分からないよ」


「いや、正直凄いMPの塊をしたアルティメットスキルだった。そもそもアルティメットスキルは被害が甚大なものが多く、なかなか使う機会が無いのだが、ミク殿の狩猟女神アルテミスの弓や、デアの神槍グングニルのように、対個人で使えるようなアルティメットスキルは、格上相手でも有効な攻撃手段となるからまさに切り札だな」


「そうじゃのう。妾にもあのようなスキルがあればのう」


「まだ油断はできない。念のためにトドメを刺す」


 俺がそう呟くと、皆は怪訝な表情を浮かべていた。俺が行った事とは創造主ザ・クリエイターで岩山を出現させてそのまま岩山を落とした。


 果たしてどうか――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る