第511話 力を開放する黒龍Ⅱ

「本当に不死身だね。ナリユキ君はユニークスキルを発動できるようになったのに――」


「ナリユキ殿の銃撃があれでは、ユニークスキルが使用できるからと言って状況は以前と大して変わらないな」


 ミクちゃんの後に青龍リオさんがそう続けて言った。


「ナリユキが銃撃で援護してくれれば、私が刀で傷を負わせることができる。先程のようにな」


「そうだな」


 ルシファーの意見には賛成だ。しかし、さっきのような攻撃をもう一度できるかどうか定かでは無い。相手は黒龍ニゲルだ。同じ攻撃パターンが通用するとは思えない。


「工夫する必要があるな」


「私は行くぞナリユキ」


「ああ」


 ルシファーは俺が返事をした後に再び黒龍ニゲルに向かっていった。それに続くように、ミクちゃん、青龍リオさん、アスモデウスさんが向かっていく。


 しかし先程とは様子が少し違っていた。黒龍ニゲルの動きが加速しているのか、ルシファーの攻撃のみ刀で受け止めて、ミクちゃん、青龍リオさん、アスモデウスさんの攻撃は全て避けていた。


「狙いづらいな」


 俺はデザートイーグルを構えていたが全く照準が定まらなかった。動きを見極めることができなければ誤射をする。そう考えるとこの混戦のなかで銃を撃つのはあまりにもリスキーだ。1vs1なら当てるの簡単なんだけどな~。


「――いや、そもそも俺がここにいる必要があるか?」


 常識に捉われていたからこの発想が思い浮かばなかった。銃撃だからって別に四人が戦っているところの外から攻撃を狙う必要はない。


 そう思うと俺はその場から消えて黒龍ニゲルの背後をとった。その瞬間、黒龍ニゲルはもちろん、ミクちゃん、青龍リオさん、アスモデウスさん、ルシファーも驚いていた。


「捕まえたぜ。皆の攻撃は俺には効かない。構わなくていい!」


 俺は黒龍ニゲルの胴体に足を絡めて蛇のように背後で巻き付いた。背後をとっていたミクちゃんと青龍リオさんの攻撃はそのまま貫通して黒龍ニゲルに直撃。そして俺はその状態を保ちながら天を穿つ者エンデュアーを6発連射した。


 もちろん俺がそれで終わる訳が無い。マカロフ卿のユニークスキル、復讐の時限爆弾リベンジ・タイムボムを仕掛けた後、知性・記憶の略奪と献上メーティスを発動。黒龍ニゲルが持つスキルのあらゆる情報を盗んだ筈――。あれ? 様子が変だ。


「やるな――俺様の記憶を奪ったか」


 流石の黒龍ニゲルも連続で攻撃を受けたのはきつかったらしい。まあ傷は一瞬にして癒えたようだった。


 けど、気になるのは何故黒龍ニゲルは俺が記憶と知性を奪ったのを気付いたのかという点だ。


「お前もしかして――」


「奪えてないぞ?」


 黒龍ニゲルはそう言って不敵な笑みを浮かべていた。何故、知性・記憶の略奪と献上メーティスが発動していなかったのかは謎だ。しかし、復讐の時限爆弾リベンジ・タイムボムを仕掛ける事には成功した。あとは、こいつをどのタイミングで発動させるかだな。


「流石ナリユキ。斬新な作戦だったな」


「そらどうも」


 俺は今、復讐の時限爆弾リベンジ・タイムボムがどれほどの威力で爆発してくれるかが気になっている。と、言うのも俺は一度コイツに殺されているのに、恨みという感情をそれほど抱いていないからだ。どちらかと言うと悔しいという気持ちの方が大きい。


「私も驚いたぞ。まさか自身に攻撃当たらない事をいい事に、あのような大胆な行動に出るとは」


「だって普通じゃ誤射してしまうからな。まあ褒めてくれるのは嬉しいよ。けどあの人ピンピンしているぜ」


「そのようだな。圧倒的に火力が足りない」


 ルシファーの意見に俺は「そうだな」と頷いた。


「仕方ねえ。ミクちゃんお願いできる?」


「いいよ。黒龍ニゲル・クティオストルーデの気を逸らしてほしいけど」


 ミクちゃんにそう言われたので、黒龍ニゲルの方を一度見てみた。すると――。


「やれ小娘。とうを発動するんだろ?」


「や――やりづらいな~」


 ミクちゃんはそう言いながらもとうを発動。すると、俺達に大幅な強化バフがかかった。ルシファーに関しては「何だこの滲み出るパワーは!?」と驚いている。そのせいか先程と比べて妙に自信満々だ。


「まあ、このスキルかけてもらうだけで戦闘値は3,000近く上がるからな。でも油断するな。アイツ、まだまだ余裕あるから」


「そのようだな。過信はしないでおこう」


 そう言ってルシファーは一度刀を鞘に納めた。


「今度は俺様から行くぞ! 龍騎士!」


 黒龍ニゲルはそう叫びながらルシファーに斬りかかった。その瞬間、赤い閃光が光ったと思うと、黒龍ニゲルの腹部から鮮血が噴き出していた。


「い――一体何が起きたの!?」


「余でも分からなかった」


「妾にも視えなかった――」


「カウンター攻撃だな」


 俺がそう呟くと、ミクちゃん、青龍リオさん、アスモデウスさんが「えっ!?」と聞き返してきた。


黒龍ニゲルが斬りかかった瞬間に、鞘で刀を受け止めた後に前進しながら回転斬りを行ったんだ」


「成程。流石魔界一の剣使いだな。2,000年前と比較して技の数も増えているようだ」


青龍リオさんが知らないって事はそういう事ですよね。あのアクティブスキルは黒閃回転斬こくせんかいてんざんっていうアクティブスキルですよ。あれは俺も覚えられそうな技だな。ルシファーに知性・記憶の略奪と献上メーティス使いたい」


「正直だな」


 いや、青龍リオさん今ちょっと引いたでしょ。俺の事引かないでよ。


 まあそれはさておき。さっきから黒龍ニゲルがやたらと攻撃を受けているのが妙に気になるんだよな~。今の段階で受けた痛みを返すアクティブスキルを発動する必要があるだろうか? しかも勝負の序盤から――。


 黒龍ニゲルは一体何を考えている?

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