第493話 最強の美女転生者の挑戦状Ⅲ

「この勝負。ナリユキ君なかなか苦戦しそうだね。あの女の子、天衣無縫オーディンっていうユニークスキルを持っているの」


「我とアリシアはZ級じゃないからステータスは視れないからな~。どんなスキル効果があるんだ?」


「そうだね。ステータスには記憶にある対象の人・動物・モノのいずれかに変身することができ、その対象のスキルを使用する事ができる。また10秒先までの未来を自由に決定づけることができる。と書かれているの。もしかすると、デアはナリユキ君の創造主ザ・クリエイターもコピーするかもしれない。だからナリユキ君は黒紅煉刀くろべにれんとう天を穿つ者エンデュアーの二つで戦うしかない」


「それは相当厳しいな」


「ナリユキ様。神槍グングニルを受けてからMPが一気に減ったようですが、あのスキルはどのようなスキル効果を持っているのですか?」


神槍グングニルは確実に直撃する事は大前提で、200,000,000程のMPを消費して、相手の体力とMPを強制的に1/10にするという効果。ナリユキ君が数々の強敵に使った黒絶斬こくぜつざんも、まともに使う事ができない苦しい状況だね」


「200,000,000――桁違いのMPだな」


「それでもデアは半分以上のMPを残している。ナリユキ君はどのようにして戦うんだろう――」


 ミクちゃんがそう言うと、ランベリオンもアリシアも固唾を飲んでいた。確かにユニークスキルを発動すると、デアにコピーされる恐れがある。けど、だからと言ってユニークスキルを出さない訳にはいかない。今、俺が持っている手札でMPを消費せずにデアを気絶に追い込むことができるのは、創造主ザ・クリエイターだけだからな。


「私からいくわよ」


 デアはそう言って俺に右手を翳してきた。


燦爛の光線シャイニング・レイ!」


 デアから放たれた美しい光が俺に襲い掛かって来た。


「いや、デカ!」


 デアの燦爛の光線シャイニング・レイは、ミクちゃんが放つモノよりもっと極大だった。それにスピードも圧倒的だ。


 俺が上に飛んで避けると、デアはそこから連続で燦爛の光線シャイニング・レイを放ってきた。俺がどう避けるかを推測して燦爛の光線シャイニング・レイを撃ってくるから、俺はそれをさらに上の行動をしないといけない――!


 避けたと思ったが、俺はまるで光のトンネルの中にいるかのようだった。そう思った次の瞬間、俺の下半身は吹き飛んだ――。


「マジか」


 当然痛みも無いし、体はすぐに再生するから問題は無い。強いて言うなら俺の体力が減ったくらいだ。そしてその体力を減らし続けられると、自動再生も自動回復の修復スピードは遅くなるし、俺の動きが鈍くなるだけ。


「――そうか。俺が全ての燦爛の光線シャイニング・レイを避けると分かっていたから、未来を少し変えて燦爛の光線シャイニング・レイ天衣無縫オーディンで直撃させたのか。未来予知眼ヴィジョンアイ天衣無縫オーディンの効果による相乗効果シナジーは相当なものだな」


「その通りよ。私達同士で殺し合う事はできないもの。ならば貴方の体力を奪うだけ」


 デアはそう言って俺に手を向けてきた。その瞬間に俺はデアの後ろに回り込む。デアの首元に向けて黒紅煉刀くろべにれんとうで左薙ぎを行う――。


 案の定再び止められた。だが――。


「喰らえ!」


 俺は左手に持っている天を穿つ者エンデュアーを撃つ――!


「あれ!?」


「残念だったわね」


 デアはそう言って俺に神樹の宝刀セフィロト・スパーダ魔刀ハデスで俺の体に二連撃を入れてきた。しかし俺の体は斬撃無効。攻撃を受けたところで問題は無い。


 が疲労はやっぱり溜まる。


 しかし、疲労の溜まり方が明らかにおかしい。斬撃無効のスキルは昔から持っていたスキルだけど、自分で自覚できるほど使える事はなかった。むしろヘッチャラだったんだ。けど、今は無敵の筈なのに攻撃を受けすぎてはいけないという直感が働いている。


「まだ正体を掴めていないようね」


「それもそうだが天を穿つ者エンデュアーを撃つことができなかったのも――」


 俺がそう言うとデアはニコッと笑みを浮かべた。


「まさかそれも天衣無縫オーディンの効果か? 知っていたのか? 天を穿つ者エンデュアーがMPを消費して使う銃だと」


「そう。だからMPを込めれないようにしたの。MPを銃を込める動作なんて、呼吸と同じくらいの感覚よ。だから貴方はMPが込めれていないという事実に今気が付いた」


「そんなチート能力死ぬ時にどんな後悔や夢を叶えたかったんだ?」


「だから憶えてないのよ。私が前の世界でどんな人間だったのかもね」


「――そうだった」


 デアの前の世界の記憶すごく気になる。


「クソ、天衣無縫オーディン――。神の能力か。しかも俺と違って覚醒してやがる。そうだろ?」


「そうね。このユニークスキルは元々、戦っている相手しかコピーできなかったの。でも今は違うわ。例えばコレとか」


 そう言ってデアは少女の姿から、鎧を着た金髪の美女へと変身した。右手には剣を持っている女性騎士だがステータスの名前を見て驚きだ――。


「ジャンヌ・ダルク!?」


 俺は思わず目ん玉が飛び出るかと思った。ミクちゃんも当然驚いている。


「ジャンヌ・ダルクも転生していたの!? この世界に!?」


「流石に知っているようね」


 デアはそう不敵な笑みを浮かべていた。スキルはガラリと変わり、デアの姿の方が厄介だった。スキルだけ視れば弱くなっている。ただ姿と使用スキルがガラリと変わっても、天衣無縫オーディンだけは残っていた。


 




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