第487話 カルベリアツリーのダンジョン最後の挑戦Ⅱ

 S級だからかだろうか。相手が魔王だろうが龍だろうがあまりにも攻撃が遅すぎる。


「くそっ――!」


「当たらない」


 俺は二人の攻撃をひたすら避けていた。黒龍ニゲルと何度も戦闘をしているのとS級という格下を比較した際、例え相手がS級の最上位クラスだろうが――。


「喰らえ」


 天を穿つ者エンデュアーを二発、。魔王ベルゼビュート金龍アウルム・アエテルナーリスの一発ずつ当てた。勿論、二人は直撃した腹部を抑えて、俺の事を睨めつけている。


大爆発エクスプロード!」


 俺がそう言って魔王ベルゼビュート金龍アウルム・アエテルナーリスに手を翳すと、二人は爆発に飲み込まれた。相変わらずこのスキルは強くなればなるほど爆発力が上がるな。


 と言うのも、俺がそう唱えてただけで魚雷でも放ったかのような大爆発と衝撃を起こしていたからだ。今となっては大してMPも消費しないのにこの威力。


 案の定、魔王ベルゼビュート金龍アウルム・アエテルナーリスの二人はボロボロになって黒煙の中から姿を現した。


「どうだ? 手も足も出せないか?」


 俺の問いにニッと笑みを浮かべるだけで挑発には乗らず、二人はその場から姿を消した。とは言っても俺には視えている。


 魔王ベルゼビュート魔刀ハデスを。金龍アウルム・アエテルナーリスは黄金の槍を俺に振りかざしてきた。俺が黒紅煉刀くろべにれんとうで軽々と受け止めると、二人は目を丸くして驚いた表情を見せていた。


「馬鹿な!」


「二人がかりだぞ!?」


「人数と力が比例すると思っているのか? 甘いな」


 俺は黒龍ニゲルとの戦闘で妙に刀のスキルが上がった。その影響もあってか――。


 俺が目一杯の力を入れて二人の攻撃を振り払うと、魔王ベルゼビュート魔刀ハデスも。金龍アウルム・アエテルナーリスは黄金の槍も折れてしまった。


 二人がたじろいでいる間に、俺は天を穿つ者エンデュアーで追加攻撃を行う。鮮血を散らしながら二人は後退りしていくのだった。


 まさに苦痛で表情が歪むとはこの事だな。


 俺は後ろへ回り込み、魔王ベルゼビュートの頭に触れた。何のために触れたかって? 勿論、知性・記憶の略奪と献上メーティスだ。そしてカルベリアツリーのダンジョンの魔物だから奪ったからって返す必要も無い。俺が知りたいのはコイツのスキルが習得できるのかと。1,000層に待ち受ける情報のボスが、一体どんな奴なのか? という事だ。


「一体どうなっているんだ?」


「読み取ったようだな」


 金龍アウルム・アエテルナーリスがそう呟いた。一方、一部の知性と記憶を奪われた魔王ベルゼビュートは呆けていた。


 が――そういう話ではない。俺が奪った魔王ベルゼビュートの記憶では、1,000層にいるボスは人間の姿をした金髪の少女だった。しかし、その少女は巨大な水槽の中にずっと眠っている状態だった。それこそまさに人体実験を行われている少女を彷彿させる。


 それに驚くべき情報はこの少女はオリジナルの人間という事だった。魔王ベルゼビュートが持っている情報はこれで終わり。あとは俺の適性があればコイツの能力もGETできるんだけど――。


「無理ですよね~」


 俺、魔族じゃないもん。そりゃ無理だわ。魔族系統に関するスキルは悉くアウトだな~。でもまだ一人獲物がいる。


 俺はそう思い、金龍アウルム・アエテルナーリスを睨めつけると、金龍アウルム・アエテルナーリスは冷や汗を垂らしながら臨戦態勢に入った。


「遅い」


 俺は後ろへ回り込み、まずは黒紅煉刀くろべにれんとうで背中を斬り付けた。その後は金龍アウルム・アエテルナーリスにも知性・記憶の略奪と献上メーティスを使用するだけ。


 早速入ってきたその少女の名前だ。その少女の名前はデア。人間だけど、このカルベリアツリーのダンジョン唯一のオリジナル。人間、龍族、魔族、森妖精エルフ族の混血で、このカルベリアツリーのダンジョンにいた、今までの魔物の基盤ベースとなる存在のようだ。


 因みにベルゼビュートは太古の昔にいた魔王らしい。その旧魔王ベルゼビュートの再現したのがこの弱いベルゼビュート。オリジナルはZ級のようだ。と、言うより魔王ベリアルより強かったらしい。今では誰がベルゼビュートのユニークスキルを有しているか知らない。そもそも死んだら必ず別の生命にユニークスキルが宿るかどうかも分かっていないけど。


 そしてこの金龍アウルム・アエテルナーリスは完全に造られた龍。ニーズヘッグと同じだ。ただ、この龍も永遠の象徴として造られたようだ。青龍リオさんが再生の象徴。黒龍ニゲルが破壊の象徴。白龍が平和の象徴。赤龍が生命の象徴。そして金龍が永遠の象徴。なかなかいい感じだな。そう考えると。


「やっぱり俺は龍との相性はいいみたいだな。天眼を以前GETできたのは龍族が覚えるスキルの適性はあるみたいだからな」


 俺は金龍アウルム・アエテルナーリスのパッシブスキル、アクティブスキル、アルティメットスキルを入手した。


 まずはパッシブスキルだ。前提として永遠とは時間を意味する言葉でもある。金龍アウルム・アエテルナーリスが永遠を象徴している龍だからなのか、その言葉に関するスキルがパッシブスキルの天眼に付与されたり、アクティブスキルをあたらしく習得したりした。


 例えば俺のこのスキル不滅イモータルは、ノアが持つアクティブスキル、不死の体イモータル・ボディと似た効果を持つ。俺は脳が残っていれば再生できるけど、黒龍ニゲルと戦った時のように、謎の死を遂げる事もあったが、この不滅イモータルは俺の体が消滅しなくなる。それに俺には効果は無効化にする効果を無効化にするという効果を持つ神理ヴェリタスがある。これにより、外部からの攻撃で俺は完全に死なないという事だ。


 それに他にもある。不滅イモータルは何も俺だけじゃない。俺のスキルにも反映されているようで、今までなら何らかの攻撃によって、俺のアクティブスキルが相手のアクティブスキルによってかき消される事があったけど、それらが無くなるらしい。まあ相手が相当格上だったりするとその話は変わってくるんだけどな。


 と、まあいくつかのスキルを習得した俺は――。


「成程。俺は無敵になった訳だ」


 完全無欠とはこの事だな。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る