第486話 カルベリアツリーのダンジョン最後の挑戦Ⅰ

 ミクちゃんと朝食を終えた後、皆に強くなってもらうためにランベリオンとアリシアを連れてカルベリアツリーに再度挑戦する事にした。


「ミクちゃんがZ級になれば、闇払やみばらいも通用すると思うし、戦いをより有利に進めることができる」


「そうだね。でも黒龍ニゲル・クティオストルーデは会うたびに強くなっているの不思議じゃない? 何かのユニークスキルかな?」


「かもな。同じZ級なのにステータスも視れないから、何がどうなっているのかサッパリ分からん」


「そうだよね。でも皆が強くなればきっと倒せる!」


「我とアリシアが強くなって黒龍ニゲル・クティオストルーデ戦で役に立てるかどうか分からんがな。ただ、アリシアは森羅万象アルカナ創生ジェスに狙われているから自衛するという意味でも強くなってもらわないと困るからな」


「勿論です。ナリユキ様に守られているばかりじゃいけませんからね」


「俺は別に飛んでいくけどな」


「私も飛んでいくよ」


「国のトップ二人が部下を甘やかしてどうする」


 俺とミクちゃんがランベリオンにそう指摘されたので「それもそう」と頷いた。


「よし行くぞ」


 いつものようにカルベリアツツリーのダンジョンに潜った。これで最後の挑戦にしたい。


 このダンジョンは四度目の挑戦だ。たった三時間程で950層をクリアし、そこからしばらくして999層目に到達した。


「ナリユキ君がいるからすいすい進んじゃうね」


「でも皆強くなってるじゃん。ミクちゃんは7,900。ランベリオンが7,000。アリシアが6,800だもんな」


「ナリユキ殿は全く戦闘値上がってないな8,500のままだ」


「Z級になってそんなにポンポン上がる訳ないだろ」


「それもそうだな」


「俺が黒龍ニゲルと戦えているのは俺が強いからではなく、ミクちゃんが祈禱きとうを使ってくれたお陰だからな。ここからは皆が強くなるしかないんだよ。さあ入るぞ」


 俺が999層目の扉を開けるとそこは空の上だった。眼下に広がるのは緑が生い茂る森林。空を飛べない筈なのに俺は宙に留まることができている。勿論、殺戮の腕ジェノサイド・アームを持ってきている訳では無い。


「よくここまで辿り着いたな強者達よ」


「その武功を称えて全力で戦わせてもらおう」


「ここで食い止めるのが私達の役目です。1,000層へ到達させてはなりません」


「油断するなよ。ここまで来た戦士達だ」


 そう四人の声が天から聞こえてきた。


「敵は一体どこにいるんだろう?」


「空から聞こえてくるな」


「警戒しましょう」


 ミクちゃん、ランベリオン、アリシアの順にそう呟いていた。その数秒後。光を放ちながら時空から姿を現したのは四人の戦士達だった。


「――強くない!?」


「これは流石に我とアリシアはマズいな」


「そうですね」


 ランベリオンとアリシアは冷や汗を流していた。それもそのはず、出て来た戦士達を紹介していくとこうだ。


 一人目は人間族のヤマト・タケル。戦闘値は7,800。


 二人目は魔族。魔王のベルゼビュート。戦闘値は7,900。


 三人目は天使族。熾天使セラフィムのラファエル。戦闘値は7,900。


 四人目は龍族の金龍アウルム・アエテルナーリス。戦闘値は8,000。


 金龍アウルム・アエテルナーリスはZ級の域に達している。これが999層目。手強い相手ばかりだ。


「ミクちゃん一人にラファエルは任せていい? 闇払やみばらいがあるから、本来ならベルゼビュートと戦うほうがいいかもしれないけど、ミクちゃんは魔族系統のスキルは習得しづらいから、ラファエルと戦う方がミクちゃんの為になるかなと思うんだけど」


「うん。大丈夫だよ。今まで熾天使セラフィムと戦ったことがないし、このラファエルの治癒ヒール能力は相当高いから何が何でも一人で倒したい」


「了解だ。ランベリオンとアリシアは協力してヤマト・タケルを倒してくれ」


「分かった」


「かしこまりました」


 そして俺の相手は魔王ベルゼビュート金龍アウルム・アエテルナーリスの二人。


「二人とも覚悟はいいか? 俺は手強いぞ?」


「まさか余とベルゼビュートが挑戦者になるとはな」


「確かにそうだな。しかし、其方がZ級だからと言って我々は臆さないぞ?」


 魔王ベルゼビュート金龍アウルム・アエテルナーリスもいい面構えをしていた。


 魔王ベルゼビュートは、長い白銀の髪をオールバックの男だった。そして整えた顎髭を生やしているので、イケオジという言葉が相応しい外見だった。そして魔族特有の黒い服に身を包んでいる。


 一方、金龍アウルム・アエテルナーリスは、金色の長い髪をヘアバンドで括った美丈夫だった。何でか知らんが、龍族の人型化ヒューマノイドの姿は、整っているルックスが多いな。そして手に持っているのは刀ではなく3m近くある黄金の槍だ。全身金色の鎧に纏い、赤色のマントをたなびかせているやたらと派手な龍だった。


「両方ともクセの塊だな」


「其方に言われたくはない!」


 と、二人が同時にそう言ってきた。なんだ息ピッタリじゃないか。


「行くぞ! ナリユキ・タテワキ!」


「何百年とここで猛者を待っていた。見せてみよ其方の力を!」


 二人はそう言って俺に襲いかかってきた。魔王ベルゼビュート金龍アウルム・アエテルナーリスは龍騎士のように何かベースがあるのだろうか? それともオリジナルなのか?いずれにせよ俺が持っていないスキルを有している。戦闘後にスキル習得もありだし、知性・記憶の略奪と献上メーティスで戦闘中に奪うのも良し。


 ただ、まあ多かれ少なかれ戦闘中に、二人に知性・記憶の略奪と献上メーティスを発動するのはマストだな。1,000層のボスの情報も欲しいし。


 さあ――やるか。

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