第400話 龍・魔との戦いⅠ

 そうして連れてこられたのは、半径2km程の森の中にある広場だった。確かに2人が組手のようなものをするのであれば、場所が狭いと周りにある自然が吹き飛んでしまう。


「これはまた随分広い平原ですね」


「まあ、最初はあったのだが、何年も戦っているうちに木は消えてしまったんだ。余のユニークスキルで復活させることもできるが、毎日ここに来るのにスキルを使っても、自然が可哀想だと思ってな」


「なので倒した木は資源として使ったな。破壊はしたくなかったが、つい熱が入ってしまって吹き飛んでいたんだ」


 マルファスさんはそう言って照れ笑いをしていた。まあ確かに自然を破壊するほど本気でやらなくてもいいわな。


「空は飛べるんだったな?」


「ええ。殺戮の腕ジェノサイド・アームは空も飛べます」


「ではナリユキ殿の空中戦の練習にもなるな」


青龍リオは当然だけど、俺も空中戦が得意だからね。いい練習になると思うよ」


「宜しくお願いします」


 まずはおさらいだ。そもそもこの殺戮の腕ジェノサイド・アームの能力は使用者のレベルによって、使える能力が増えていくらしい。それで俺が使える能力は全部で12個。


①パワーが上がる。

②MPを吸い取ることができる。

③吸収したMPを使用することができる。

排除リジェクトを使うことができる。

⑤ビームサーベルを出現させて攻撃できる。

⑥空中に浮くことができる。

烈風波れっぷうはを使うことができる。

⑧自身の体を透明化させることができる。

⑨如何なる場所でも吸着するグラップリングフックを出して、空中での高速移動が可能になる。

⑩回復のオーブを対象者一人に付与することができる。

⑪バリアーを展開することができる。

⑫ノーモーションで30m先まで瞬時に移動することができる。


 以上が俺が使える能力となっている。生憎、ロケットパンチは義手型の殺戮の腕ジェノサイド・アームでは無いから使えないらしいが、これだけ能力のオンパレードなら確かに誰でも強くなることができる究極の武器と言える。


「いつでも戦えますよ」


 後は使い方だな。原則、この殺戮の腕ジェノサイド・アームは自分がどんな能力を使えるか知っておかないと能力を使う事ができないらしい。まあ排除リジェクトに関しては元々使えるから、実際に俺が使う能力は11個となる。


「では行くぞ」


 青龍リオさんがそう言ったと同時に、青龍リオさんとマルファスさんの2人が襲い掛かってきた。青龍リオさんに関しては天眼があるし、マルファスさんに関しては魔眼がある。なので中途半端な攻撃は避けられるはずだ。


 俺は早速創造主ザ・クリエイターで20個ほどの岩を落とした。岩の大きさは大体10m程。


「手から何でも出すと言うのは本当だったのか」


 マルファスさんはそう言ってニッと笑みを浮かべた。


「やるぞ」


 青龍リオさんは水刃ウォーター・カッターを。マルファスさんは死絶デスペリアを発動して、空から降りかかる岩を破壊していた。何なら2人のスキルは雲すら斬っているので、俺が見た水刃ウォーター・カッター死絶デスペリアの中で確実にトップクラスだ。岩を斬るだけなのにやりすぎでは?


 俺は砕けた岩に向かってグラップリングフックを引っ掛ける。そして拳を力強く握るだけで、フックが引っかかった場所に向かって行くのだ。


「そんな事もできるのか!?」


「それで街中を飛び回るの楽しそうだね」


 青龍リオさんは目を丸くしていた。対して、マルファスさんからは感心の眼差しが向けられていた。そう各々コメントを残した後、俺の方に向かって来た。マルファスさんは勿論、魔族特有の黒翼を展開している。


 俺は移動した後、殺戮の腕ジェノサイド・アームの能力で宙に浮かびながら、ビームサーベルを出現させた。これで俺もジェダイの騎士になってやるぜ! 


「フォースの力があらんことを!」


 俺がそう叫ぶと、2人は首を一度傾げた後そのまま襲い掛かって来た。青龍リオさんは短刀を取り出した。マルファスさんに関しては何やら、禍々しい邪気を纏っている黒刀を出現させた。鑑定士でステータスを視る限り、あれは魔刀ハデスと呼ばれているアクティブスキルらしい。恐らくミクちゃんが使う光剣セイバーのような感じだろう――でも、初めて見るスキルだから、もしかしてめちゃくちゃレアな能力なのか? とか思いながら2人の剣撃を受けていた時だ――。


「あれ? 俺弱くね?」


 実際2人の斬撃を数回喰らっている。青龍リオさんには剣での攻撃は通用するけど、マルファスさんには俺と同じ斬撃無効のスキルが付いているので、当然攻撃が通用しないのは当たり前だ――。


 しかしそういう問題では無い。無効とは言えど、今の攻撃喰らったなという感覚はあるし、攻撃を与えたなという感触もある。けれども、2人には攻撃を与えた感触が全くない。つまり、剣での実践が少なすぎて、2人の技術についていけないのだ。


「どうしたナリユキ殿? その程度か? 余が使っているのは武士が切腹するときに使う短刀だぞ?」


 ――いや、ハンデ凄いんだけど。短刀なのに青龍リオさんからの攻撃は既に8回程受けている。これがもし青龍リオさんが得意な、長刀だったらもっと攻撃を受けているだろう。そりゃ龍騎士に負けるわと改めて実感した。


「剣での修行してもらったほうがいいですね」


 俺はそう言いながら、2人に対して烈風波れっぷうはを放った。威力はそれは凄まじいもので、殺戮の爆風撃ジェノサイド・ブラストと同等の威力だ。MPを消費せずに殺戮の爆風撃ジェノサイド・ブラストを出せると思えば凄い代物だぞこれ。案の定青龍リオさんとマルファスさんを吹き飛ばして傷を負わせているし。


 それにこの烈風波れっぷうはは30発までなら何度でも放つことができる。一度放つと、殺戮の腕ジェノサイド・アームの手の甲の部分にエネルギー量と発射可能数が表示される。1分で1発分が貯まるらしい。そしてMAXが30発とのことだ。


「今のもナリユキ殿のスキルじゃないな」


 そう分析したのは青龍リオさんだった。


殺戮の爆風撃ジェノサイド・ブラストより少し劣るくらいかな? どうなっているんだそのアーティファクトは――」


 苦笑いを浮かべるマルファスさん。俺からしたら今の攻撃を喰らって、血も出ていない2人が可笑しいと思うんだけど――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る