第401話 龍・魔との戦いⅡ

「それにしても厄介だな。下手にアクティブスキルをナリユキ殿に放つと吸収されてしまうからな」


「え? そうなのか!?」


「言ってなかったか?」


「――そう言えば言っていた気がする」


 なんかアレだな。凸凹でこぼこコンビだな。


「そうなると、アクティブスキルの攻撃はできないのか――」


「あくまで殺戮の腕ジェノサイド・アームの性能を確認するための戦いだからな。本気で勝とうと思わなくてもいいと思うが」


「せっかく戦うなら本気でぶつかりたいんだよ俺は。青龍リオならどうする?」


「そうだな。単純に考えれば通常攻撃を銃にすればいいのだが」


「そうか! 確かに銃ならいけるな!」


 と、マルファスさんはそう言うと銃を取り出した。けれども俺が知らない銃なので、この世界の人間が製造した銃だろう。大きさはデザートイーグル程の大きさがあるので、重量は

3.0kg前後あるだろう。形状的にはリボルバー式に見える。


そう考えるとこれはなかなかマズい。マルファスさんのステータスを視た時から違和感を覚えていたんだ。マルファスさんは俺やマカロフ卿と同じく、銃に関するパッシブスキルが多いのだ。


「この世界において、銃を主軸に戦闘を進める人は少ないからな。それこそ、マカロフ卿が来てから、銃の流通が多くなった事で銃を製造できる職人が増えた。それまで、銃で戦うのはスキルで生成するか、錬金術に頼んで製造してもらうかの2択だったからね。今じゃ権力さえあれば買って使う事ができるんだよ」


「どちらにせよ、マルファスは余が貴族の身分を与えているからな。普通の拳銃ピストルから、ライフル、ロケットランチャーだって使う事ができるんだ」


 青龍リオさんがそう言って不敵な笑みを浮かべた。


「マルファスさんは俺と銃の勝負をしたいという訳ですか」


「まあ、普通に考えればナリユキ閣下の方が有利ですね。殺戮の腕ジェノサイド・アームは相当強力な鉱石で出来ているので、その腕でガードする事も可能だと考えていますよ」


 確かにそうだ。けど、マルファスさんのパッシブスキルには狙撃手Ⅴだけではなく、銃弾強化Ⅴも付いている。さらに言うならば爆破強化Ⅴ、爆破範囲強化Ⅴも付いている。スキルとしてはロケットランチャーを俺のように、瞬時に出す能力は無いから、今この時点では爆発系の攻撃を受けることは無い。仮にあったとしても大爆発エクスプロードだから、俺はその攻撃を無効化できる。警戒すべきは、俺が見た事が無いあの銃だ。


 黒い銃身に、グリップと銃口マズルが金色となっており、シリンダーの部分が赤色に光っている。一体どんな銃なんだ――。


「後ろだナリユキ殿」


 俺が考え事をしていると青龍リオさんの声が後ろからした。俺は咄嗟に殺戮の腕ジェノサイド・アームでガードをする。


「剣より殺戮の腕ジェノサイド・アームの使い方の方が慣れているようだな」


「腕は身体の一部なんで、剣より使いやすいんですよ!」


 俺はそう言って左手から青龍リオさんに向けて大爆発エクスプロードを発動した。しかし、青龍リオさんは涼しい顔をしながら斬りかかって来る。一体どうなっていやがる――これが経験値の差なのだろうか?


 原則、大爆発エクスプロードは、スキルリターンで返すことができるアクティブスキルでは無い。唱えた瞬間に爆発がするので、どこか違う場所へ飛ばすという概念が生まれないからだ。だとすれば、スキルバリアーでダメージをカットしたのだろうか? 俺が見た限りではバリアーすら張っていなかったと思うけど――。


「流石ですね」


 俺がそう言っていると、青龍リオさんは顎をしゃくった。


 俺がその方向を見るとマルファスさんが銃口を向けていた。刹那――右足の膝あたりからじんわり赤黒い色が広がっていくのが確認できた。血だ――。しかし、痛みはどれだけ待っても感じない。つまり、痛覚無効が発動する程の痛みが足に広がっているという事だ。反応が遅れたので、これを頭に喰らっていたと思うと末恐ろしい――。


「そうか、痛覚無効も持っているだったね」


「わざと頭は狙わなかったでしょ?」


「どうだろうね」


 マルファスさんはそう言ってニッと笑みを浮かべた後、再び銃を撃ってきた。


 発射時のマズルフラッシュが赤色に光るという特殊な要素だ。赤い輝きを放ちながら飛んでくる弾丸――。


 俺はその弾丸を全て殺戮の腕ジェノサイド・アームでガードを行った。あの弾の威力を見極める為と、殺戮の腕ジェノサイド・アームの強度がどれくらいなのかを知りたかったからだ。


 俺の顔面に向かってきた弾。俺の右肩を狙ってきた弾。さっきと同じ箇所を狙って来た弾の計3発。俺は1発の弾丸を手に取った。見た感じでは普通の弾丸だ。何なら、さっき見えていた赤い輝きは失っている。


「このイークスでも殺戮の腕ジェノサイド・アームに傷を付けるのは難しいか――」


 マルファスはそう悔しそうに呟きながら苦笑いを浮かべていた。イークス――聞いた感じだと魔族語っぽいけど何て意味だろう。


「イークスって因みにどういう意味ですか?」


 俺がそう問いかけると、マルファスさんは少し嬉しそうな笑みを浮かべた。自分の銃に興味を持ってくれて嬉しいのだろうか?


「イークスとは魔族語で炎という意味だよ。銃を放った同時に銃口が光る赤い輝きが、俺には炎のように見えたんだ。そしてその炎がそのまま敵に襲い掛かるようにも見えたからね」


「つまり自分で名前を考案したんですか?」


「そう。特製の銃だから」


「そうでしたか――」


 成程な。確かに殺戮の腕ジェノサイド・アームのガードだったから、防ぐことができたかもしれないけど、直撃したときの威力はアクティブスキルと同等だな。


 普段、銃を持つ相手と戦闘する機会がほとんど無い分――マルファスさんのような銃の使い手を戦えるのは凄く稀だ。


「これは燃えてくるな」


 そう思うと、俺は自然と口角が吊り上がっていた。

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