第383話 真の実力Ⅱ

「流石だね。魔真王サタンの力は――それに理性もあるようだけど、その力はいつまで続かな?」


「直ぐに片付けてやるさ」


 俺はレガトゥスに向かって掌を向けた。


「まさか――!?」


魔真王の破壊光サタン・ディストラクション!」


 俺は再び魔真王の破壊光サタン・ディストラクションを放った。俺はさっきの魔真王の破壊光サタン・ディストラクションと違って少しMPを込める量を、気持ち少なくした。


星光の聖域ルミナ・サンクチュアリ!」


 レガトゥスを中心に魔法陣が描かれて、光の壁で俺の魔真王の破壊光サタン・ディストラクションを防いでいる。正直、このスキルはそんなスキルで防ぐことができるような技ではないんだが――まあいい。


 俺は魔真王の破壊光サタン・ディストラクションを放ちながら、レガトゥスに歩み寄る。レガトゥスの表情を見る限りではなかなか辛そうだ。


「デカイ口を叩く割には辛そうだな」


「こんなアクティブスキル放つ人はそういないからね。流石の僕も苦戦するよ!」


 そう言ったと同時に俺の魔真王の破壊光サタン・ディストラクションは無力化された。レガトゥスはハアハアと息を切らしており、魔眼で体内を見る限りかなりのMPを消費している。


 ただ、驚くのは体内にある魔石はそれほど活動していない事だ。とするならば、レガトゥスの元々のMPを消費しただけに過ぎない。


「元々強いのに、魔石やら殺戮の腕ジェノサイド・アームやらがあると、強さは底知れないな」


「なあに。君もまだまだウォーミングアップに過ぎないだろ?」


「ああ。そうだな」


 とは言ってもこの魔真王サタンには時間制限があるからな。まだまだ大丈夫そうではあるが、電池が切れたかのように仮眠状態に入ってしまう。そうなると非常にマズい――。


「いくぞ」


 俺がレガトゥスに襲い掛かる。振り上げた俺の拳をレガトゥスが神樹の宝刀セフィロト・スパーダを持っていない左手で受け止める。そして次の瞬間には俺は膝に痛みを覚えた。


「身体がオリハルコンのように硬くなっていないかい?」


「どうも」


 俺はそう言って冷や汗をかいているレガトゥスの腹部に会心の一撃を浴びせた。当然、レガトゥスは俺の攻撃を受けたことにより、一瞬息が止まっていた。コイツの戦闘値は最低でも7,000前後あるだろうが、今の俺はそれを遥かに凌駕する。


「君、Z級の入口に立っているね。ダメージもさっきの魔真王の破壊光サタン・ディストラクションが効いているようだ」


 レガトゥスはそう言って苦笑を浮かべていた。しかし、奴には殺戮の腕ジェノサイド・アームもあるし魔石の真の実力を発揮していない。奴は一体何を考えているんだ?


殺戮の腕ジェノサイド・アームも魔石もあれば俺と対等に戦えるだろ」


「それは僕のプライドが許さないのさ」


「成程な。自分の実力で戦いたいのか」


「そうだよ。だからコレを味わってみてほしいんだ」


「コレって?」


 俺がそう言うとレガトゥスは口角を吊り上げて不敵な笑みを浮かべた。


神樹の巨人セフィロト・ジャイアント!」


 そう言ってレガトゥスは地面に手を叩きつけた。地面から光る樹の枝が現れて形を創っていく。その樹の枝はとてつもないスピードで天へと駆けあがる。


「巨人って言ったがコレは流石にやりすぎじゃないか――?」


 俺は思わず苦笑を浮かべていた。レガトゥスのMPがごっそり消費されて創られた光る樹の巨人。足、胴体、腕、手、そして顔――ものの5秒ほど現れたのは50m級の巨人だ。樹の幹のような太い足と腕。そして地面に勢いよく叩きつけるだけで、町を一瞬に壊滅してしまいそうな手。二本の巨大な角を頭に生やしている黄色の目をした神々しい輝きを放つ巨人だ。全てを破壊の一言で片づけるような威圧感――正直言って半端じゃない。


「これまたとんでもないアクティブスキルだな。巨人って言うから20m~30mくらいだと思ったぜ」


「そうだろう?」


 そう言って不敵な笑みを浮かべるレガトゥスは神樹の巨人セフィロト・ジャイアントの肩に乗っていた。


「いけ! 神樹の巨人セフィロト・ジャイアント! 奴を粉々に砕け!」


 レガトゥスの指示で振り上げられた拳。圧倒的な威圧感――。これを喰らったら流石にマズい――。


 俺はもうスピードで肩に乗っているレガトゥスに向かった。当然、振り下ろされた拳は地面に叩きつけられ、地面は沈下を起こしていた。半径300m程前後くらいは地割れを起こしているなコレは。


 と思っていた時だった。次は神樹の巨人セフィロト・ジャイアントがその巨大な拳で連続のパンチを繰り出してきた。さっきの叩きつけるのが遅かっただけなんだろう――。わざわざ遅くする必要があるのかどうか分からないが、今のこの俺の状態で避けるので精一杯だ。


 流石にプライドがあるって話だから、神樹の巨人セフィロト・ジャイアントを使った影響でアルティメットスキルは撃ってこないだろう。それに本当にヤバいと思ったのであれば、Iアイを連れて転移テレポートで逃げることもできる。つまり、レガトゥスは純粋に俺との戦いを楽しみたい。その一点に限る。


 と、思い込んでいたらやられる。俺の魔眼ではレガトゥスは魔石の恩恵をほとんど受けていないから、奴が魔石を使い始めたら新生神樹降誕セフィロト・バースすら発動可能だ。そうなれば俺に勝ち目は無くなる。


 そう考えていると、レガトゥスを早いところ片付けるしかない。しかし、どうやってこのふざけた大きさの巨人に近付くことができる――。


魔真王の破壊光サタン・ディストラクション


 俺が魔真王の破壊光サタン・ディストラクションを放つと、巨人の両方の拳が吹き飛んだ。


「通じるみたいだな。今の間だ」


 俺は猛スピードで巨人の顔面に近付いた。


「甘いよ」


 レガトゥスがそう言った――。次の瞬間、俺は体全身に強烈な痛みを覚えながら地面へと叩きつけられた。


「流石にマズいな――」


 この特殊能力を使ってでもこれか――。


 やばいな、眩暈と吐き気がする。


 俺は地面に埋まりながら、神樹の巨人セフィロト・ジャイアントを眺めていた。通常時なら死んでもおかしくないレベルの一撃だ。


 それに今の一撃で身体が思うように動かなくなった。魔真王サタンの能力が切れかけているんだ。思えばここ最近負けてばかりな気がする。強い奴と戦うのは確かに嬉しい。でも情けない。自分の弱さに――。

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