第379話 アルボス城での激闘Ⅲ
あれから10分程度。激しい攻防により俺と
「思った以上にやるじゃないか」
「お前もな」
と俺はゼエゼエと息を切らす。俺は華奢な体ではあるが、ハーフという特殊な血のお陰で、パワーもスピードも恵まれている。しかし、俺には決定的な弱点がある――。
「でも、君はだんだんと動きが鈍くなってきているね。魔眼の使い過ぎなのか、体力の消耗が激しいようだ」
「しかしお前の攻撃は見切っている。勝負がつくのはそう遠くは無い」
と強気な発言をしたが俺の体力の兼ね合いもある。そもそも、
「そろそろ決着をつけようか」
「望むところだ」
俺は再び
目の前が血しぶきで覆われた。一体これは誰の血だ――。
そう思っていた刹那、身体中に痛みが走った。意識も薄れていく――。
駄目だ力が入らない――。
「残念だったね。でも頃合いかなと思ったんだ」
そう思っていると体に強い衝撃を受けた。
「カルディア!」
「まさかやられたのか!?」
カリブデウスの後にスカーがそう言っていた。馬鹿が別にやられたわけじゃない。そもそも死んでたまるかって話だ。ただ、身体が動かないだけだ。
目が僅かに開いた。どうやら俺は空から落ちて地面を数メートル陥没させる程の衝撃を与えていたらしい。
辺りをよく見てみると血まみれになっていた。これは俺が空落ちて受けた傷じゃない。むしろそのダメージは頭突きをされたときくらいの痛みだ。さほど問題は無い。だからこの血は、さっき
くそ――痛いな――。とりあえず予備の
俺はそう思ってポケットから
俺がこれを使用するのは激しい戦闘を行った時だ。故に
案の定苦くて決して美味しいとは言えない味。しかし、さっきと比べて随分と身体が楽になった。
「最後の攻撃となるわけだな」
「ほう。僕のさっきの攻撃を受けてまだ立ち上がるのか――成程。
「どうだい? 驚いただろ? 避けた筈の攻撃に当たったんだから」
俺はてっきり透明な剣のようなもので攻撃してきていると思っていた。しかし先程は一回の攻撃で数ヶ所同時に――待て、そもそも俺が受けた攻撃の傷は何ヶ所だ?
そう思い、俺はまず出血した箇所の数を数えた。傷はまだ完全に塞がっていないので、他の傷と混じることなく数えることは容易だ。
数は合計で十ヶ所だ。俺に傷を負わす事ができる最大の数の筈。手を向けて攻撃してきているので、手と攻撃がリンクしていることは間違いない。しかしさっきは左手を使っていただろうか? 十という数は指の数と同じだ。しかし左手を使っているような素振りはしていなかった筈――だ。
「考えても無駄だよ」
そう思い、今度は陥没した地面の中で、数メートル上の高さから攻撃を仕掛けてくる
そう思って聞いていると僅かだが俺の周りの空気の振動音があちこちとしていた。数も十個のようだ。それに動きもなかなか不規則で、音が真っすぐ向かってきたり、
そして攻撃を避けながら気付いたが、やはり奴の左手も右手の指程分かりやすく動いていないものの、左手の指は僅かながらに動いていた。あんな指の動きをしていて、鞭のような不規則な動き。間違いない――。
「見えない糸を使って俺の事を攻撃してきているな!?」
「それが分かったところで何ができる!」
大当たりだ。正体が分ればあとは奴の指の動きを見極めればいい。糸にしては剣や刀のような切れ味に驚くが、恐らく魔物の糸と魔石のような鉱石を使って強化した特注の武器だろう。それを透明化している原理はよく分からんが正体が分ったならこっちのものだ。
「やられた分キッチリ返すぞ!」
俺は再度
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます