第368話 ヒーティスの案内Ⅲ
一通りヒーティスの景観を堪能した後は、このアビスツリーの最上階にあるレストランで食事することになった。夜景を一望できるこの場所での食事は、非現実を味わう事ができる。
俺達は夜景を一望した後、一旦テーブル席に着席させられる。着席させられたのは窓側の席だ。そして俺達以外のお客さんは誰もいない。アスモデウスさんの粋な計らいでこのレストランは貸切となっている。
「こんなところでお食事するんだね。私、ドレスコードじゃないけどいいのかな」
「それを言ったら俺もだぞ。普通にウールのジャケットなんだけど」
「構わない。服装など其方等が気にすることはない。妾は気を楽にして食事を堪能してほしいのじゃ」
「まあそんな気はしていたけどな。気遣いありがとう」
「こんな凄いところ貸切だもんね」
「気にすることはない。重要な人物が来たときは必ず貸切にしておるのじゃ。何かあったら大変じゃからのう」
「それはそうだな」
「でもまあ、其方等――特にナリユキ閣下は西の国でもトップクラスの実力じゃからのう」
「でも、まだまだ強い人いるよな?」
「魔界や
「何回も名前が挙がっていますけどそれほど強いのですか?」
ミクちゃんの質問にアスモデウスさんは即座に「うむ」と頷く。
「まあ一回会ってみれば分かるかの。ベリアルに関しては魔界戦争したときに、妾の兵力をたった1つのアクティブスキルで半分消滅させたからのう」
「ち――因みにその兵力ってどれくらいですか?」
「確か5万人とかだった気がするのう。まあ、妾のユニークスキルにかかれば、兵力何ていくらでも補充できるんじゃがのう」
アスモデウスさんがそう得意気に話しているのは、
しばらく会話をしているとまず一品目の料理が現れた。サーモンのような魚に、海老やタコがあるマリネのようだ。魔族が国主なので、美的感覚は全然違うと思っていたけどそうでもないらしい。
味はサーモンに近いけど、歯応えは鯛のような食感だった。不思議な感覚だけど美味しい。レモン風味のフレッシュなソースが柔らかいアクセントがきいていて美味しかった。
「ものすごく美味しいです。ここのお店はどんな方が来られるんですか?」
「最上階にあるじゃろ? じゃからお金持ちしか来れないお店にしておるんじゃ。1人金貨1枚は必要じゃからのう」
「――確かにそれはお金持ちしかこれない」
「そうじゃろ? このアビスツリーを造ったのも、ヒーティスという国を知ってほしい為なのじゃ。そしてヒーティスには男性が少ないからのう。お金を持っているのは男の割合が高いじゃろう? じゃから、お金持ちの男にヒーティスでの思い出を色々と作ってもらうため、客単価が高いお店も必要だなと考えたのじゃ。それによって、お金持ちの男性はヒーティスの評判を広めてくれるからのう。お金持ちの人間は人脈が広いから、評判はすぐに広がるのじゃ」
「それでも女性は多いんですよね?」
「そうなのじゃ。男性は住んではくれるのじゃが、産まれる子供は9割が女性なのじゃ」
「――そういう呪いをかけているとか?」
「違うのじゃ。この件に関しては妾も分かっておらんのじゃ」
「
ミクちゃんがそう呟くとアスモデウスさんは「う~ん」と唸っていた。
「可能性が一番高いのはそうじゃの。しかしながら、100%そうだと断言できる根拠が無くての~」
「それで長い間多種多様な種族がいる女性の国と呼ばれているんですか?」
「そうじゃ。其方良く知っているのう」
「ナリユキ君に貸してもらった本で読みましたから」
「ほう。そこにはヒーティスは何て書いたあったのじゃ?」
「一度訪れた男は国に帰りたくなくなると書いていましたよ」
「確かにそうじゃの」
ミクちゃんが言ったヒーティスの説明にアスモデウスさんは笑っていた。そうこうしているうちに、スープや魚料理、肉料理といったものが出てきた。どれも俺達が知らない魔物で料理をしているらしい。と、言うのも東の国でしか生息しない魔物がいるからだ。特にディーパーというお肉を使い、赤ワインで煮込んだ料理だ。このディーパーというお肉が凄く貴重らしく、市場ではなかなか出回ることがない牛の魔物らしい。
「美味しいけど流石にこの魔物をうちの国に輸入はできないよな?」
「それは無理じゃがブレイブならいくでも大丈夫じゃぞ? 別に品種改良しても良い。その代わり値段は張るぞ?」
「だって美味しいもんな。この肉」
「ソースも美味しいよ」
そう言ってミクちゃんはディーパーの肉料理を堪能していた。俺達の表情を見てアスモデウスさんは微笑んでいた。
「気に入ってくれて何よりじゃのう」
「だって美味しいからな」
俺がそう言うとアスモデウスさんはより一層喜んでくれた。ゼパルに関してはさっきから黙ってずっと食べているしここのお店が世界でも名の知れた有名店なのは頷ける。
俺達はそこから他愛の無い話や、アスモデウスさんに世界が今後どう動くかなどの話を聞いた。勿論、アスモデウスさんは、
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