第323話 アヌビスとRⅡ
光のような速さで
「煽った割にはダメージをこれでもかと思うくらい喰らっているわね」
アマミヤさんがそう言っていたけど、私には何か違和感を感じていた。アヌビスも怪訝な表情を浮かべて自分の足を見ていた。
「何か可笑しい――余が見ているのは錯覚か?」
アヌビスがそう声を漏らした時だった。アヌビスの腹部に
「なっ!?」
私達はそう声を大きく上げた。突然の出来事に理解が追い付かない――。
「あっちの世界――つまり転生者が住む世界には変わり身の術という技があるらしい」
「どういうカラクリだ?」
アヌビスはビームサーベルが腹部を貫通している状態なのに、首をゆっくりと後ろに向けて
「アヌビス!」
「来るな!」
私はついアヌビスを呼んだ。しかし、アヌビスは私の目を真っ直ぐ見ていた。
「答えるとでも?」
「こうなったら私を止めることはできんぞ?」
「マズい。あれはMPを吸収されているわ!」
アマミヤさんの言葉に真っ先に駆けだしたのはメルム・ヴィジャだった。
「ご主人様に何をする貴様!」
メルム・ヴィジャがそう言って黒の大鎌を振りかざした。
「アロケル!」
「お任せを!」
「メルム・ヴィジャの大鎌を」
「受け止めた!?」
と、大きなリアクションをしているランベリオンとアマミヤさん。
「あやつ、やるな――」
そう言いながら顎に手をつけて頷いているフーちゃん。
鍔迫り合いの勢いでフードが取れてしまい、露わになった顔は左目に大きな縦の傷が入った褐色肌の大男だった。背中くらいまである長い金髪がオールバックになっていて、もみあげと顎鬚が繋がっているワイルドすぎる風貌の人物だ。ステータスを視る限り魔族らしい――。
「貴様邪魔をするのか!?」
「
敵だけどド正論だね。もうこうなったら手助けをするしかない。
私はそう思うと
「お……お前達……」
90,000,000という大量なMPもこの様子を見る限りでは大幅に減っている。
私はアヌビスに向けて笑みを浮かべた後、無防備になっている
その一太刀を入れたと同に
「大丈夫!?」
「生憎虚勢を張るのは苦手でな。MPを吸い取られるのがこれほどキツイとは――」
うん、大丈夫じゃないらしい。私のMPをスキルで分けてあげた方がいいみたいだ。
「ランベリオン、アマミヤさん、フーちゃん。他の敵の出方を見て時間稼ぎをお願い!」
「分かった!」
そう言ったと同時に他の敵が3人に一斉に襲い掛かった。ステータスを視た感じだと、
だから、他の敵はあの3人で十分に足止めできると思う。
「すまないな」
そう言っているアヌビスの腹部の傷は自動再生と自動回復のお陰で体力的な問題は解消されていた。けれどもMPを奪われた事でアヌビスは衰弱している。
「ちょっと待ってね」
私がそう言ってアヌビスにMPを送り込もうとしたときだった。
「そうはさせんぞ転生者!」
「なっ――!?」
突如、真後ろから首を掴まれる感覚がした。そう思ったと同時に頭に強い衝撃を感じた。
「いたっ――一体何が?」
いきなり真後ろから首を掴まれてコンクリートの壁に激突させられるという意味の分からない現象――。
「まさか本当に飛ばせるなんて」
「これが科学の力だ。この
「
「器用なら使いこなせるが貴様はどうかな?」
「今から取ってきてもいいんだけどね?」
「何!? どういうことだ?」
「冒険者が
「そうか――」
「ならば死ね」
そう
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