第210話 エルフの十賢者Ⅱ
宮殿の入り口に入ると門番は直ぐに道を開けてくれた。ランベリオンとルイゼンバーンさんの顔パス恐るべし。
白を基調した宮殿は私好みだった。これが異世界。これが洋風。といった具合だ。
「まるでヨーロッパの旅行に来たみたいね」
「ヨーロッパ――そっちの世界にある大陸の名前だったな。こっちの世界の景観と似ていると聞いた」
「流石ランベリオン、その通りよ」
そんな他愛の話をしながら、白の花柄が付いている天井がある水色と白のコントラストで彩られたロビーを進んだ。騎士団長をやっていたので、アードルハイム皇帝の宮殿は何度も見ているから、大声を出すほどの感動ではないけど、思わずを息を飲むような内装をした宮殿だ。タテワキさんも屋敷に拘らずにこういった宮殿にしたらいいのに。確かに最近建て替えて西洋と和風を組わせたのもいいけど、私としてはこういう可愛いを残しつつ優雅な建物がいい。
「着いたぞ。ここの部屋にカーネル王達がいる」
ルイゼンバーンさんがそう言うと、警備の兵隊2人が止めて来た。
「いくら、ルイゼンバーン様とランベリオン様と言えどここは通すことできません」
「アーツ様に用事があるんだ」
「でしたら終わってからにして下さい。予定ではあと10分ほどで終わります」
警備の兵隊にそう言われたので、ルイゼンバーンさんは「仕方ない。待とう」と言って、宮殿の壁にもたれ掛かった。
数十分ほど待っていると扉が開かれてゾロゾロと黒い豪華絢爛なタキシードのようなデザインをしている服を着た男性や、パーティードレスを着た女性などが出て来た。カーネル王国の身なりとは違うので、この人達がカルカラの貴族なのは間違いない。
「これはこれはルイゼンバーン様」
そう言って数名のカルカラの貴族達が近付いて来た。
「ご無沙汰しております。ディアン公爵、アードレッド公爵」
と、2人の貴族には挨拶していることから面識があるようだ。勿論、カルカラには私は訪れたこともなければ調べたことが無いから、この人達がどのような人達なのか正直分からない。ディアン公爵は金髪をオールバックにした顎鬚を生やした白人男性だ。まるでハリウッドスターのようなキラキラとしたオーラを放ちつつ、ほのかに香る甘い香水がただならぬ色気を出していた。歳は40手前くらいだろうか。いずれにせよ大人の男性の象徴と言えるような人物で、人相からしても腹黒さなどは無さそうだ。
対してアードレッド公爵は、前髪の金髪を横に流している甘いマスクを持った男性だった。特徴的なのは耳に銀色ピアスをしているけど、これは貴族としていいのかな? よく分からないけど歳は私とあまり変わらない気がする。
「そこの綺麗な騎士様とそちらの赤い髪をした好青年は? 2人からもルイゼンバーン様と同等以上の強いオーラを感じます」
そう問いかけて来たのはディアン公爵だ。対してアードレッド公爵は「確かに凄い――」と私とランベリオンをジロジロと見ていた。
「新国マーズベルから参りましたランベリオン・カーネルとミユキ・アマミヤ様です」
「初めまして」
「お初お目にかかる」
私とランベリオンがそう挨拶をすると――。
「英雄のランベリオン・カーネル様とお目にかかれるとは――いやはや人生何が起きるか分かりませんね」
「でも、ミユキ・アマミヤ様って確かアードルハイム帝国の氷の女王ですよね――殺されたりしないですか? 大丈夫ですか?」
と、ディアン公爵の後ろに隠れて私をジトリを見てくるアードレッド公爵。まあ、無理もないわ。本当ならここで罵声の1つくらい浴びせられても可笑しくないもの。
「失礼だぞ。アードルハイム皇帝のスキルによって操られていただけだ。目を見れば分かるだろそれくらい」
ディアン公爵に呆れられながらそう言われたアードレッド公爵は私の目をじっと見つめて来た。そんなに真っすぐ見なくても――。
そう思って私は思わず目を反らした。
「可愛い」
へ?
「凄く可愛いです!」
と、熱い視線を向けられていた。そんな時だ――。
「アーツ様だ」
ルイゼンバーンさんはそう言って扉の所へ向かって行った。カーネル王やクロノスさんと同時に出て来た頭にターバンを巻いている杖をついているあの老人の
「ルイゼンバーンか。久しいのう。ん? ランベリオンもいるじゃないか。ルミ坊からは何も聞いておらんかったが?」
「いえ。私も初めて知りましたよ先生。どうしたんだい? ミユキ君もいるじゃないか」
と、いつもの調子で飄々としたカーネル王。相変わらずこの人はタテワキさんと同じ独特な雰囲気を持っている。2人は仲が良いし類は友を呼ぶというものかな?
「単刀直入に申し上げます。マーズベルでヴェドラウイルスの感染者が発見されましたので御力を貸して頂きたいと思います」
アーツさんの名前でいきなり土下座をしたランベリオンとルイゼンバーンさん。当然、ヴェドラウイルスという名前で騒然とする20人程の貴族達。
いつも飄々としているカーネル王の顔色は青白くなっており、いつも冷静なクロノスさんに関しては目が血走っていた。
そして一番肝心なアーツさんは眉をひそめて、土下座をする2人を睨んでいた――。
楽しかったであろうパーティーも、ヴェドラウイルスという単語だけでただならぬ空気に変えてしまったのは言うまでも無かった。
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