第209話 エルフの十賢者Ⅰ
私はランベリオンと2人でカーネル王国に来ていた。ランベリオンはこの国では人気だから夜道にも関わらず――。
「ランベリオン様と一緒に行動しているということは貴女様もマーズベルの方ですか!? お美しいです!」
「マーズベルの騎士様は凄いですね。どうですか? これ一度飲んでみてください」
と、このように色々な人から声をかけられる。
「それはカーネル王国で有名なお酒だな。ミユキ殿飲んでみるとよい」
「今からカーネル王と会いに行くのに、お酒なんていいの?」
「お酒が弱いなら止めておいたほうがよいが、少々であれば大丈夫だ」
ランベリオンがそう陽気に言ってくるし、酒屋の店主は私の事を早く飲んでみてほしいというキラキラした目をしているし――。
「美味い」
私は小瓶に入ったお酒を一口飲んでみた。深いコクに桃のフレーバー。それに清涼感のある喉越し。言ってしまえばフルーツのスミノフアイスのようなお酒だ。瓶に書いているアルコール度数を見てみると――。
「12%――。これはグイグイ飲んでしまってダウンするやつね。オジサンありがとうございます」
「いえいえ! 気に入って頂けましたか? 是非お持ち帰りください」
「お金いらないんですか?」
「勿論です。私が飲んでほしくて押し付けたようなものですから」
何の得があるんだろう――と考えるとタテワキさん的な考察をすると、僅かな生産性にかけて私に渡したと考察する――。
「これ、タテワキさんに言って仕入れてもらえるようにするのアリかもね」
「確かにそれはいいな。調査が終わってまた戻って来たときに、ナリユキ殿に試してもらうか」
「そうね。カーキュスか……何語?」
「カーキュスは爽やかな桃という意味だ。何気にカーネル王国だけ使われている言葉もあるから覚えておいたほうがいいかもな」
「成程。
「そういう事だ」
私達はそう話しながら、お酒を飲んでいる人で賑わうメインストリートを抜けた。そしてしばらく歩いて来たのはカーネル王国ギルド本部。
私達が中に入ると、ギルド内で飲んで騒いでいる人達の視線が一気に集まった。
「凄いわね」
「ギルドは夜は酒場だからな」
ランベリオンがいることで案の定騒然としていた。
「この時間帯でいきなり王が会ってくれるとは限らん。まずはギルドマスターのルイゼンバーンに会う」
ランベリオンはそう言って受付嬢に話しかけていた。私はその間にギルド内を見渡していたが、アードルハイム帝国軍基地程の広々とした空間だ。床から天井まで何十メートルもある。
「これだけ広いと居酒屋のような雰囲気とは程遠いわね」
しばらく待っているとランベリオンがこっちに戻って来た。
「案内してくれるらしい。行くぞ」
「ええ」
私達は案内人に連れられて10分ほど歩いた。赤い絨毯が敷かれている左右にある2つの階段。疑問なんだけど、この階段2つもいるのかしら――。アードルハイム皇帝もそうだったけど、お金持ちはたまに無駄が多い。右側の階段を上り部屋の前に到着。2m程の騎士のオブジェが部屋の入口を挟んでいた。案内人が金のドアノブを回すと、開かれた扉の向こう側には、鎧に身を包んだ初老の褐色肌の男がこちらを見ていた。
「最近出入りが多いなランベリオン」
「お蔭様だな」
「そちらの方は?」
「私はミユキ・アマミヤです。よろしくお願い致します」
「そうか君が噂の氷の女王――元アードルハイム帝国軍第2騎士団団長ミユキ・アマミヤ。君も転生者だと聞いているよ。私はカーネル王国のギルド本部、第66代目ギルドマスター、アドルフ・ズラタン・ルイゼンバーンだ。宜しく」
ルイゼンバーンさんはそう私に挨拶を行ってきた。それにしても――。
「――情報早いんですね」
「仕方あるまい。
「まあ――仕方ないわね」
すると、ルイゼンバーンは高笑いをしていた。
「マーズベルが強すぎるのだ」
「それは私も同感です。戦闘値が4,000超えているのがゴロゴロいますから」
「そうだな。まあ話を聞こう。そちらへかけてくれ」
ルイゼンバーンさんがそう言って指して来たのは、6人がけのテーブルの上座だった。私とランベリオンが遠慮なく座りルイゼンバーンさんが下座に座るのを待った。
ルイゼンバーンさんが座るとランベリオンが口を開いた。
「今回はカーネル王国の闇に関係している。今日、ヴェドラウイルスの感染者がリリアンのメインストリートで発見された」
すると、ルイゼンバーンさんの表情が一気に曇った。瞳の奥には痛々しいとも言える悲しみが宿っている。
「そうか……一体誰が……」
「一番怪しいのはログウェルだと睨んでいる」
「またマカロフ卿か?」
「分からん――が、うぬも知っての通り、マカロフ卿はあの事件の時にはまだこの世界に存在としていなかった。結局あの時もログウェルだとは睨んでいたが結局は確証が無くそのまま闇に葬られた――その闇が再び舞い戻ってこようとしている――新国マーズベルに」
「そうか……それでカーネル王国に来たのか。カーネル王に会いに」
「そうだ」
ルイゼンバーンさんはハアと重い溜息を吐いて両腕を組んだ。
「いいだろう。しかし、今日は無理だから明日でもいいか? カーネル王はカルカラ王国の貴族達とパーティーを開いているからな。今日会う事はできない」
「カルカラ――確か優れた
「そうだ――今日、ちょうどアーツ様がいるぞランベリオン!」
そう大声でいきなり立ち上がったルイゼンバーンさん。すると、ランベリオンは「本当か!?」といきなり大声で立ち上がった。もう何なの――。
「そのアーツって人誰?」
私がそう聞くと。
「
と、食い気味に2人同時に聞いてきた。
「知りません」
「アーツ様はヴェドラウイルスの感染防止に大きく貢献した素晴らしい御方だ」
「我々カーネル王国の救いの神と言ってもいいな」
ランベリオンのルイゼンバーンさんがそう呟いた。
「なら、行くしかないですね」
私がそう言うと、ルイゼンバーンさんが「行くだけ行ってみるか」と答えてくれた。
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