第202話 調査報告Ⅲ
「とりあえずはしばらくレン君達をこの国に住ませるってのはどうかな? 勿論双方が合意したうえでだけど」
「賛成!」
そうやって勢いよく挙手しながら立ち上がるレンさんとアズサさん。本当に息ピッタリだなこの2人。そしてネオンさんを見ると、顔を紅潮させていた。
「ということはアリシア様と……」
あ~。何を考えているか分かったわ。アリシアと共に行動できるのを想像しているんだわ。小声で言っているようですが聞こえてるよ?
「うち、掃除、洗濯、料理何でもできます! ナリユキさんの召使いなら喜んでやります!」
何言っているのこの人。グイグイ来るな。これが関西人――いや、絶対アズサさんが変なだけだ。
「俺は女子風呂の覗き方の裏技知ってます!」
変なアピールしてくる~! でも女子風呂の覗き方の裏技気になる。
「アンタしょうもないこと言いなや! どうせ魔眼使うんやろ!?」
「ギクッ!」
「声出てるって」
アズサさんの呆れたツッコミと驚くレンさん。そうか魔眼って
「レンさん。とりあえず魔眼を使えない魔族に謝っておいた方がいい」
俺がそうやってクロノスを指すと、クロノスは「アハハハ――」と苦笑していた。
「クロノスさんすんません」
めちゃくちゃ関西弁で謝っているんだけどこの人――。
「いや、いいよ。でも魔眼を女性の覗きに使わないでほしい。魔眼は全魔族の憧れでありステータスだからね。僕もその中の1人だし」
あ――。クロノスの一人称の僕って久しぶりに聞いたな。アードルハイムから帰ってきたら、俺の前だと私って言っていたから使い分けているのだろうか? 器用だな。
「多分しません」
レンさんがそんな怪しい回答をしたので、アズサさんがレンさんにげんこつをお見舞いしていた。
「ふざけるのも大概に」
「sayよ!」
アズサさんの言葉をレンさんが遮ってふざけたので再度アズサさんのげんこつがレンさんを襲った。まさか、異世界にきてゲームの配信者が怒り散らかして、Twitterに張り付けられてさらにバズったネタを繰り出してくるとは――。
「もうええって! あっちの世界のネタをこっちに持ってこんでもええねん」
分かるんかーい! 皆結構Twitterやっているのね。この2人はてっきりInstagramかと思っていた。
「ボケが大渋滞。それは多分ランベリオンに聞かせても分からんぞ。俺とミクちゃんなら分かるけど」
「確かに」
そう驚いた表情を浮かべるレンさん。何で逆に分かると思ったの? 面白いからいいけど。
「で、ナリユキはどうなんだい?」
「勿論OKだ。しばらく俺達の国でゆっくりしているといい。但し用事ができたら、離れていても念話で話しかけるから宜しく」
「了解です」
レンさんとアズサさんがそう返事をした後、ネオンさんもノーディルスさんも返事をしてくれた。
「決まりだね」
ルミエールがニッコリと笑みを浮かべていた。
「じゃあ今日も泊まろうかな~」
と、伸びをしてくつろぐルミエール。
「駄目です。夕方には隣国の貴族達が来られるのです。今から帰って支度をしましょう」
クロノスがそう言うと、ルミエールは露骨に嫌そうな顔をしていた。
「ルミエール、もしかして俺の国に遊びに来てるな?」
俺がニヤニヤしながらそう問いかけると――。
「いや、そんなことないよ~」
と、下手くそな口笛を吹きながら遠い何処かを見ていた。図星かよ。
「て、言うても色々と大変やろうに。俺には頭を使う仕事はできませんからいつも尊敬してますよ」
レンさんがそう言うとルミエールはニマ~と笑みを浮かべていた。
「よし、行くか」
さっきまでのやる気の無さがルミエールには消えていた。本当にちょろいな。
レンさんはそれを見た後、クロノスさんにニッと笑みを浮かべていた。それを見てサムズアップをするクロノスさん。ナイスと言っているのは明らかだった。凄い連携だなおい。
ルミエールが立ち上がると俺達も揃って立ち上がった。メイが部屋の扉を開けて、ルミエール達に「ありがとうございました」と一言添えていた。冷静に考えたらメイの一連の動作はとてもメイドらしくなっていた。
そうして俺とレンさん達はルミエールとクロノスを見送った。いつも通りワイバーンで陽気に「またね~」と言いながら去って行った。
「カーネル王ホンマに陽気な人やな~」
「明るいからええやろ。それよりあんな格好いいスーツをピシッと着てんのに、めちゃくちゃ抜けているんが
「レンさん、アズサさん、ネオンさん、ノーディルスさん。しばらく宜しくな」
「任せて下さいよ」
レンさんはそう得意気にえっへんと威張っていた。
「俺は修行をしたい。どこかいい場所はありませんか?」
「場所な――。正直実践が一番いいと思うぞ。今の時間ならノアが相手してくれると思うぞ?」
「そうでしたか。ではお言葉に甘えさせて頂きます」
ノーディルスさんはそう言って小屋の方へと向かって行った。
「うちらはちょっと早いけどお昼ご飯食べたいな」
「そうや! ラーメン屋さんってあるんですか!?」
レンさんの問いかけに、俺はニッと笑みを返した。
「よっしゃあああ!」
レンさんとアズサさんは大喜びでハイタッチをしていた。
「どんなお料理何ですか?」
「まあ普通の麺類だ。でもそこは俺だ。ちゃんと拘りがある。ビガーポークの豚白湯ラーメンだ」
俺がそう言うと、レンさんとアズサさんは案の定、じゅるりと涎を垂らしていた。
「案内するよ」
俺がそう言うと「やったあああ!」と2人は大喜びで、ネオンさんは申し訳なさそうな表情を浮かべながら「ありがとうございます」と感謝を述べてくれた。
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