第153話 罰Ⅰ

「貴様等侵入者だな。そこにいる黒髪の男がマカロフ卿が言っていたナリユキ・タテワキだな?」


「そうだが。どうしたんだ下劣皇帝さんよ」


「ぐぬううう」


 アードルハイム皇帝はそう言って唸っていた。血眼になっている姿は何とも面白い。ガープの記憶で余裕ぶっていた表情はどこにいったのやら。


「宮殿に魔族が襲い掛かって手がいっぱいになっているのに、貴様等は面倒ごとばかり増やしやがって」


 お。流石ベリト様。何か褒美やらねえとな流石に。凄い長い時間ヘイト買ってくれているし。


「忙しいのは嬉しい悲鳴ともいうしな。別にいいじゃねえか」


「無礼者め。新国のマーズベルの主かなんか知らんが、貴様なんかこの私にかかれば」


 そう睨めつけて来たので、アードルハイムの帝国兵達も一歩踏み込んできた。


「ったく仕方ないな」


 俺がそう言うと帝国兵達が襲い掛かって来た。およそ100人といったところか。


大爆発エクスプロード


 俺がそう言った途端、帝国兵達は内部からの爆発により粉々砕けて、見るも無残な爆破死体と化した。


 アードルハイム皇帝の手は震えていた。


「私の駒が一瞬で……」


「俺の仲間を傷つけたのは許さねえが、一番許さないのはガープの家族に手をかけたことだ。俺はガープの知性・記憶の略奪と献上メーティスで全て見せてもらった。しかし、お前のスキルは使えるな」


「そ――それならこうしよう! 私と手を組もう!」


 そう言ってきたアードルハイム皇帝は絶望的な状況から、希望を見つけ出したかのように笑みを浮かべていた。しかし緊張と焦りからか、表情は強張っている。


「なんや。それホンマに言うてるんかナリユキさん?」


「レンさん大丈夫ですよ。ナリユキさんがそんな生産性の悪い事しません」


「どういう事や?」


「見えていれば分かりますよ」


 ミクちゃんがフォローに入ってくれた後に、アリシアがくすっと笑みを浮かべていた。置いてけぼりのレンさん、メイ、捕まっていた人々はポカンとしている。


 俺は創造主ザ・クリエイターで刀を取り出し、アードルハイム皇帝に近付く。


「お前のその手いらないよな? スキル――。面倒くさいもんな?」


「ど……。どういうことだ!」


「あれ? そうか。お前は弱いから、俺がガープの知性・記憶の略奪と献上メーティスを手に入れたこと知らないのか?」


「なん……だと?」


「人間ってのはそのステータスやタイプに応じて何でもスキルが手に入る特殊な種族。魔族のガープが使っていた知性・記憶の略奪と献上メーティスとは訳が違う。スキルを使えるレベルに達している人間が、そのスキルに関する知性を持っていたらどうなる?」


 そう俺が言うと、アードルハイム皇帝は「ひい!」とこれまた情けない声を出していた。


「ガープは死ぬ間際に俺とアンタが鉢合わせすることを予測していた。そのうえで、俺なら使いこなせるとガープは言った。つまり言いたかったことはこうだ!」


 俺が鬼気迫る表情を浮かべると、アードルハイム皇帝は逃げようとしていた。俺は容赦なくアードルハイム皇帝の後ろから、両腕を斬り落とした。


「グアアアアア!」


 そう言って大量の血を流しながら、床に伏せるアードルハイム皇帝。まあ、このままだと大量出血で死んでしまうな。


「ミクちゃん!」


「分かってますよ!」


 ミクちゃんはその場から、アードルハイム皇帝の両腕を回復ヒールした。勿論、腕を再生させたわけではない。ただ、止血と鎮痛剤のような効果を与えただけだ。


 止血されたことに唖然とした表情を浮かべているのだろう。痛みで震えていたのが止まり、両腕を怪訝な表情で見ているのが目に浮かぶ。


 俺はアードルハイム皇帝の頭を握った。


「初の知性・記憶の略奪と献上メーティスだ」


 俺がそう言うとアードルハイム皇帝は振り返った。その下衆な面を拝んだ瞬間、奴は魂を吸い取られたかのような表情を浮かべていた。知性を奪われると間抜け面になるのだな。いい研究結果だ。


「どうだ? スキルに関する知性だけ根こそぎ奪われた気分は? さぞ絶望的だろう」


「貴様――。私のスキルを!」


「五月蠅い」


 俺はアードルハイム皇帝の顔面を殴り飛ばした。


「知性を手に入れた事によって、アンタの 悪魔との機密契約イビル・コントラクトも使えるようになった。俺はアンタみたいに、脅しには使わないさ。まあもうすぐここを破壊するからせいぜい自分の人生を悔いておくんだな」


 俺がそう言い残すと、アードルハイム皇帝から既に生気は感じ取れなくなっていた。奴が知るこの世界における知識とかも奪おうと一瞬思ったが、何か胸糞悪いような気がしてならないので止めた。


「ナリユキ様の念波動の数値がまた上がりましたね」


「どれくらいになったんですか?」


「6,200になりました。正直6,200なんて数字を叩き出した人間は聞いたことがありません」


 アリシアはそう言って驚き、ミクちゃんとレンさんは少し不貞腐れていた。ミクちゃんに関してはマジでゴメン。差を放しすぎた。


「さあ、メイ。レストンの丘までお願いする」


「かしこまりました!」


 メイはそう元気一杯に返事をしてくれた。


 ここのフロアにいる人間は、アードルハイム皇帝以外の人間は、瞬時にこの場から姿を消した。そして一瞬にして着いた先の景観は、鎧を着た兵士で辺りは埋め尽くされていた。



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