第129話 目覚めⅠ

 は?


 次の瞬間、俺は獣のような叫び声を上げていた。


 けれども、テープが邪魔して上手く声が出やん。


「おいおい。これ死んでるんじゃないか?」


「いや、まだ脈はあるぞ。気を失っているだけだな」


 何とも思っていないゴミ共の発言はいちいち俺の怒りを逆撫でする。


「ほら、ああなりたくなかったら大人しくしておくんだ。今から挿入れるから」


 ネオンちゃんを犯している奴がそう言って、ネオンちゃんの下着の間からぬるっと挿入れようとしていた。


 

 ええ加減にせんかいゴミ共!



 俺がそう声にならない声を上げてネオンちゃんを犯しているゴミと、アズサを犯したゴミと、暴行を加えたゴミを睨めつけると、一瞬で火だるまとなってのたうち回った。


 は? どういうことや?


 アードルハイム皇帝は異常事態に、初めて焦りを見せた。


「ど――。どういうことだ。ガープ、奴を何とかしろ」


「かしこまりました」


 アードルハイム皇帝はそう言って、他のゴミを連れてこの部屋から逃げた。ガープは返事をした後、俺に近づいてくる。


 俺の右目は焼けるように熱くなってる。一体どういうことや。それにゴミ共は燃えているけど、ネオンちゃんは近くにおるのに熱くなさそうや――。


 ガープは俺のテープを外して話しかけてきた。


「ソレはいつから使えるようになっていた?」


「そんなん知るかい。ネオンちゃんは回復ヒールできるねん。とりあえずネオンちゃんの拘束具外してくれや。じゃないとお前も燃やすぞ!」


「確かにそうだな。特に私達にはよく燃える」


 ガープはネオンちゃんの拘束具とテープを外した。


「彼女はこのまま放っておけば死ぬ。早く治療してあげるんだ」


 敵とは思えないほど優しい言葉だった。


 ネオンちゃんは黙ってコクコクと頷き、アズサに対して 回復ヒールを行っていた。


 そういや、燃やしたゴミ共はどないなった?


 そう見てみると6人のゴミ共は、全身火傷の真っ黒焦げになっていた。


「マジでどういうことやねん」


 よく、見てみるとアードルハイム皇帝や、他のゴミの足跡が見えるようになってる。部屋の奥にも何があるからわかるようになってる。


 じっとしていると、目から生暖かい感触が溢れ出てきて、それが頬を伝った。これは涙やない。じゃあ一体何なんや。


 ふと、横にいるノーディルスを見ると驚いている表情やった。その目の表現だけで、俺の身に大きな何かが起こってるんは確かやった。


「その反応をみると突然開眼したようだ。今の君の念波動の数値4,900だ。私と同レベルになっている――。しかし君が持っているのは、すごく貴重なアクティブスキルの魔眼だ」


「魔眼? なんでそんなもんが俺に」


「それは分からない。それに邪眼から魔眼に進化するが、いきなり魔眼に目覚めた種族は初めて見た。邪眼のような探知スキルも加えて、さっきのような攻撃を行うことができる、上位種族のみに与えられた特権だ。こうなると話が変わってくる。別室に移動。手荒な真似はしないと誓おう」


 俺は黙りながらネオンちゃんを眺めていた。アズサはどうやら助かったようや。今はまだ気絶しとるみたいやけど、負っていた傷は全て治ってる。


「分かったええやろ」


「感謝する」


 んな訳あるかい。残念やけど俺は嘘つきやからな。


「ネオンちゃん。俺とノーディルスの手も握ってくれへん?」


「はい。いいですよ」


 ネオンちゃんに頼んで、そう手を握ってもらった。


「ネオンちゃん。アレをやって」


 一瞬、ネオンちゃんは狼狽えたようだったが、すぐに俺がやってほしい要望を理解してくれたようやった。


「まさか!」


「残念やったな。でもありがとうな」


 俺達はガープを取り残してこの場から消えた。


 ここはどこやろう――。辺りの風景を見て思い出した。ここは反乱軍のアジトのベッドルームや。


 ネオンちゃんは上の服が破かれて下着が見えたままの姿。


「レンさん――。その一度ぎゅってしてもらっていいですか?」


 うるうるした目で俺を見てくるネオンちゃんの可愛さといえば破壊力は抜群やった。俺は黙ってネオンちゃんを抱き寄せた。


「怖くないんか?」


「はい――。レンさんだから大丈夫です」


 そうか――。俺がネオンちゃんが他の男に手を付けられて嫌な気持ちになっていたんは、単純に友人という存在から離れていたからやってんな。


 俺がネオンちゃんの頭を撫でるとネオンちゃんは満足気な笑みを浮かべていた。


「目。痛くないんですか? 血が出ていますよ」


 そうか。あの生暖かい感触は血やったんか。


 ヤバいな。だんだんと右目が視力を失っていくようや。視界が霞んで、物をまともに認識できへん。


「大丈夫――。では無さそうだな」


 ノーディルスはそう言って俺の目を心配してくれた。どんどん右目が見えへんのは恐怖すら感じる。魔眼はどうやたら目への負担が大きいらしい。


「ノーディルス。魔眼って一体どんな能力を秘めてるん?」


「魔眼はの能力は未知数だ。さっき、あのガープっが言っていた通りだが、そもそも人間が開眼するなど有り得ないのだがな」


「あり得ない事やってこそ俺やろ?」


「確かにそうだった。さて、これからどうする?」


 ノーディルスの質問に俺はそうやな~と応じた。 

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