第130話 応戦Ⅰ

「どうするって言われてもな。一度外の様子を見てみよう」


 そう思っていた時、外がやけに騒がしい。ドタドタと物音があちこちでする。


「何かこれ他にも使えるな」


 魔眼を意識するだけで、右目がカッと開く感覚があった。神経を研ぎ澄ますして辺りを見渡してみると、地上に人がたくさん集まってる。それに強いエネルギーを持っている奴もおるぞ。ティラトンのお店の入り口付近で、何人もの反乱軍が対峙してる。その相手は恐らく帝国兵か――? それにべりーちゃん達のとこにいたあの少年が、氷のなかに閉じ込められている。どないなってるねん。


「どうしたレン?」


「恐らく戦闘中って感じやな。ちょっと俺1人で様子見てくるわ。ノーディルスとネオンちゃんはここでアズサが起きるまでじっとしといてくれ」


「分かった。無茶はするなよ。何なら俺のアンデッドも連れて行けばいい。そうだな。上位種族のアンデッドを2体出してやる」


「それは助かるな」


 するとノーディルスは2つの黒い液体を出した。その液体はその場で、鎧を着た骸骨の姿へと変貌した。以前登場した骸骨とは違って比べ物にならんパワーを秘めてる。


「なあなあ。このアンデッドS級くらいの力無いか?」


「一応3,500くらいの体程出したからな。お蔭でMP結構持っていかれた。ネオン。とりあえず体力の回復を」


「はい」


 そう指示されてネオンちゃんは、ノーディルスの体力を回復していた。


「悪い。俺も頼むわ」


 ネオンちゃんにそう言って頼むと体力はばっちり回復。せやけど、眼の疲労感は全然取れへんようや。まあ仕方ない――。魔眼ってスキルだけ色々な恩恵を貰えるんやったら訳ない。


「行ってくるわ」


「おう。ヤバかったらすぐに引き返してこいよ」


「レンさん行ってらっしゃい」


「ああ」


 ノーディルスとネオンちゃんに見送られ地上に向かうことにした。反乱軍の兵士が次々にやられていってる。これはマズいな。魔眼の透視スキルと感知スキルのお陰で何がどうなってるんか手に取るように分かる。それに発動中はMPも大幅に上がっているようや。この感じなら他の固有スキルも発動できるんとちゃうか? 今なら誰にも負ける気がしやん。――って言うてもマカロフ卿には勝てへんと思うけど。


「ライアー。戻っていたのか」


 そう声をかけて来たのは同じ転生者のクリンコフやった。


「そうや。まあ色々あってここに逃げて来たんや。このアンデッドはノーディルスからの贈り物や。それよりどないなってるねん」


「帝国兵が攻め込んできている。それで副団長が戦闘しているが、他の兵士と共にずっと戦っているので相当疲労している――。というかその眼どうした? 真紅の綺麗な瞳になっているじゃないか」


「色々あって魔眼が使えるようになってん。せやからこっから地上でラングドール

達が戦っているんは丸分かりや。それよりいきなり襲ってきたんか?」


「報告では私達と同じ転生者の帝国軍第2騎士団長のミユキ・アマミヤが帝国兵を連れて攻め込んできたようだ。副団長が離れた隙に、砲弾らしき物を放たれてクラッツさんは重症らしい」


「酷い話やな。ホンマに急に攻め込んできたんやな」


「恐らく、ライアー達以外にも、別勢力が出現したから攻め込んできたのだろう。結果的にはこっちが劣勢になっているから、帝国兵の作戦通りという訳だ」


「ああ。仮面付けた3人組やろ?」


「そうだ。とにかく急ごう。ペースを上げるぞ」


 クリンコフはそう言って、身体向上アップ・バーストを使って上に繋がる階段を駆け上がった。


 そして、隠し扉の前に来たが、クリンコフが扉を押しても特に何も起きない。


「おかしいな」


「ごめん。魔眼で視たら入り口は瓦礫で塞がれているっぽいわ」


「そうか。では破壊するしかないから、ライアーは少し下がってもらっていいか?」


「分かった」


 クリンコフは大きく息を吸い込み、数秒後にゆっくりと吐き出した。左手で前に突き出し、右手の拳をギュッと握る。


 握った拳にはとてつもないエネルギーが集中していた。これは身体向上アップ・バースト以上のパワーが込められているのが、ひしひしと感じる。とてつもないな。こんなんまともに食らったら、身体向上アップ・バーストで身体強化していても、あちこちの骨が折れるぞ。


彗星撃コメット・インパクト!」


 光り続けるクリンコフの拳が扉に触れた途端、ゴウ! と凄まじく鈍い音が鳴り響いた。あまりにも強い衝撃で揺れが起き、思わず転けそうになった。


 入り口の隠し扉と、その後ろにあった瓦礫は部屋の隅まで吹き飛ぶなり、壁に強い衝撃を与えつつ、元の大きさの1/4の大きさになった。


「なかなかヤバい近接攻撃やな」


「人にやればもれなく顔を吹き飛ばすことができるスキルだからな」


 いや――。怖すぎるやろ。どんな技やねん。


「さあ行こう」


 クリンコフはそう言って、ホルスターから大きな銃を取り出した。名前はなんやったか思い出されへん。


「その銃なんやっけ?」


「これはデザートイーグルだ。私の愛銃なんだよ」


 そう会話をしながら進んでいると、ラングドールが、帝国軍の1人の兵士の銃弾を浴びたようやった。複数

の鉛球を受けてよろけているようやった。


「マズい!」


 俺とクリンコフがホールに着いたと同時に、容赦の無い一太刀がラングドールを襲い、巨大な氷に鮮血が塗られた。


「ラングドール!」


 俺がそう叫ぶと、ラングドールはこっちを向いて――。


「すまない」


 それだけ言い残してラングドールは膝から崩れ落ちた。









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