第114話 帝国軍支部基地潰しⅡ

 幸運な事に第3騎士団長のレヴァベルは、他の町の支部基地にいるとのことだ。内心、レンさん達が潜入していた帝国軍基地本部にいるという話ならば、時期を改めるしかなかったけど、今日はこれ以上にない好機チャンスだ。


「町のみんなに酷いことしている割には本当に根性ないよね」


「でもスッキリするのでよくないですか? ベリト様とフィオナ様のお気持ちは少しは晴れることでしょう」


「私は疲れるよ。この仮面を被っていなきゃ、あんなSっ気出せないもん」


「ミクはどっちかというとMだもんね」


「いった! ボク方舟ノアズ・アークの運転手なんだよ? 小さいとはいえアルティメットスキルだし、それを出したり、引っ込めたりしているんだから、ほっぺたつねらないでよ!」


「清い心を持ったアリスちゃんの前で変な事言わない」


「分かったよう――」


 と、落ち込んでいるノア君。


「それにしてもお姉様の女王様感いいですね」


 と、アリスちゃんは満面の笑みで言っている。前言撤回。性癖が私のせいで変な方向に進んでいるのは間違いない。て、いうか! 今気付いたけど、私となりゆき君が別れの夜を過ごした時、透視ができる青の瞳ブルーリー・アイズで、えっちしていたのバレたんじゃ?


 そう考えていると、私の顔がだんだん熱を帯びていくのが分かった。


「ね? アリスちゃん?」


「何でしょうお姉様?」


「アリスちゃんって異常聴覚Ⅴのパッシブスキルと、青の瞳ブルーリー・アイズのパッシブスキル持っているんだよね?」


「そうですよ?」


「ナリユキさんに見送ってもらった前日の夜――。何か視たり聞いたりした?」


 駄目だ。凄いモジモジしながら喋ってる。


「そうですね! 確かお姉様が凄い可愛い声をしていたのと、ナリユキ様が私が直で聞いたことない程低い声で話しながら、凄く楽しそうに話していた気がします。というか、その――。何か身体が熱くなってくるような」


 アリスちゃんがそうモジモジし始めたので私の頭は真っ白になった。


 体があっつい。ていうか、そのときの事鮮明に思い出した! あのキス反則だった! え? 口移しって何ですか? あの意地悪な目は何ですか!? ええ! そりゃ濡れますとも!


 うう――。駄目だ。色々思い出したらムラムラもしてきた。まだ戦うのに何考えているんだろ私! 本当に!


「そういえば、ミクは夜になると普段聞かない甘い声するよね? ナリユキと何をしているの?」


「あ――はは! 覚えなくていいから!」


「なんだいケチ。あ! 見えてきたよ! あの大きな建物が支部基地じゃないかな?」


「本当だね。あそこに一発入れてみようかな」


「何するのミク?」


「まあ見てて」


 私は天使の翼エンジェル・ウイングを展開して、方舟ノアズ・アークから下船した。


 今日はそんなに晴れていないから、威力は減るだろうけど、それでもレヴァベルを炙り出すには十分だ。


 私が天に手を掲げるとお日様が顔を少し覗かせた。自然のエネルギーが目一杯感じることができる。


 お日様の光は帝国軍の支部基地にのみに絞られ、天使の梯子が完成された。


 当然町の人は騒いでいる。そして私の存在に気付き、指を指して驚いている人もいた。


聖なる裁きホーリー・ジャッジメント


 刹那、一筋の極大の光が帝国軍支部基地を襲った。


 威力はベルゾーグさんに使った時と比べると渋いが、基地は全焼していた。ビカーという轟音がしていたので、基地内にいた人達がゾロゾロと出てくる。中には火だるまになっている帝国兵もいるので、相変わらずこのスキルは凄いなと感心させられる。


「凄いスキルですね」


「ミクのあれはどっちかというと状態異常になるのかな?」


「建物内にいてあれだから普通死ぬんじゃない? さあ、獲物は出てきたから行こう」


「そうだね」


「ついていきます」


 私に応えてくれた2人は方舟ノアズ・アークに乗ったままついて来てくれた。


 そして騎士団長っぽいのが見える。彼だけは他の帝国兵とは違うオーラを放っている。しかし私達3人の相手ではないのは明白だ。強さで言うとレンさんとノーディルスさんの間くらいだろうか。


 私達が降り立つなり、その騎士は剣を向けてきた。赤い髪と緑の目が特徴的な中年の男性だった。


「貴様等がやったんだろ? 一応、理由だけは聞いといてやるよ」


 そう睨んでくるレヴァベルは私達に冷たい眼光を放ちながら言ってきた。


「ん? その奇妙な仮面、お前達が悪魔の聖女達か?」


「そうよ」


 すると、レヴァベルは私達を視始めた。


「2人が阻害されているな。ということは究極の阻害者アルティメット・ジャマーか。ったく、そりゃボコボコにされるな。どこの馬鹿だ。こんなややこしいのに手を出したのは」


「それがヴァンという兵長を務めている者です」


「――知らん。事の発端はどうであれ、今の俺達の力ではこの勝てないだろうな」


 と、呟くレヴァベルは意外にも冷静だった。流石に相手の技量が分かれば無駄な戦いを起こさないのだろう。


「こっちには今80人の兵士がいるんですよ? 戦わず引き下がれというのですか!?」


 お? 今まで見てきたなかで一番いい帝国兵じゃないかな?


「馬鹿が。究極の阻害者アルティメット・ジャマーはそう簡単に入手できるスキルではない。人間がもし入手するならば、念波動の数値は4,000を越えていないとまず厳しい。元々ジャミングキメラってのは群れで行動するA級の魔物だ。第5騎士団長のラングドール1,500頭ほど倒した後、鍛錬を積み重ねた結果入手していたという。正直そんな芸当俺にはできん。つまり、この俺より強いのは明白だ」


「流石に騎士団長といったところですか。相手の技量をきっちり計ることができるのは大変素晴らしい能力ですよ」


「御託はよせ。何が望みなんだ」


「この帝国の平和ですよ」

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